# 博士論文を書くということ [[北村匡平]](映画研究者・東京理科大学教授)による 2026年7月1日付けの note.com 記事。博士論文のあり方の変化について、著者自身の院生時代(2010年代初頭)と現在の指導教員としての経験から論じる。 ## 歴史的背景 日本の人文学では長らく「論文博士」(課程修了後に長年の研究成果をまとめて取得する博士号)が主流だった。博士号はキャリアの集大成として位置づけられ、非常勤講師を経て取得するパターンが一般的だった。 ## 現在の変化 2025年の政策変更(大学に標準修了率の公表を義務付ける方針)により早期修了への圧力が強まっている。「3年博士」への期待も生まれているが、人文学の研究は本質的に時間を要するため、著者はこれを非現実的と見る。 国際比較による所要年数の目安: | 国 | 所要年数 | |---|---| | 英国 | 3〜4年 | | 米国 | 約7年(人文学) | | 日本 | 5〜6年が妥当 | ## 実践的提言 著者が推奨するアプローチ: 1. **修士からの継続性** — 修士で着手したテーマを博士で深化させ、新規テーマへのリセットを避ける 2. **早期投稿** — 修士課程中に査読付き論文を投稿することで博士研究の基盤を固める 3. **マイルストーン思考** — 博士論文を「最初の大きなマイルストーン」と捉え、最終成果として完成を遠ざけない 4. **締め切りの明確化** — 無期限の先送りを防ぐため、具体的な期限を設定する ## 核心的主張 > 博士論文は研究の最終形態ではなく、「特定の時点での研究のまとめ」に過ぎない この転換が「啓示を待つ」姿勢から「決断して論文化する」姿勢への変化を促し、現実的な完成へつながると著者は主張する。著者の研究室では 4〜5 年での修了を目標に体系的な計画を立てている。 ## 関連ページ - [[北村匡平]] — 著者 - [[日本の博士教育]] — 本記事が前提とする制度的文脈 - [[@2025__SRE NEXT 2025__とあるSREの博士「過程」]] — 工学系博士課程を SRE の観点から論じた関連ソース