# Introducing System One Models & Jev **TypeSafe Blog, 2026-09-15** | [[TypeSafe AI]] 創業者 [[Diogo Almeida]] による、新モデルクラス「System One Models」と第一弾モデル **Jev** の発表記事。 ## 要旨 Almeida は OpenAI で ChatGPT の instruction-following 手法の研究に携わった経験から、「チャットに特化した LLM は長年超人的な性能を持つのに、なぜ自動化があまり進んでいないのか」という問いを出発点に挙げる。TypeSafe AI は 2 年のステルス期間を経て、ソフトウェアが直接利用できる**高速・構造化された意思決定**に特化した新モデルクラス「System One Models」を発表した。第一弾モデル Jev は早期アクセスで公開されている。 ## 既存 LLM との対比 | | 既存 LLM | System One + Jev | |---|---|---| | 訓練手法 | RLHF / RLVR | RLCD(Reinforcement Learning for Calibrated Decisions) | | 最適化対象 | 人間選好・検証可能な報酬 | System One タスクにおける較正された確信度つきの意思決定 | | 出力 | 文字列(柔軟だがパース・検証が必要、暴走リスクあり) | 事前定義スキーマに沿った型安全な構造化値、較正された確信度付き | | サンプリング | 逐次(1トークンずつ) | 並列(1クエリで全出力を生成) | | コスト | 入力$0.20-10/MTok、出力は入力の約5倍 | 入力$0.042/MTok、出力無料 | | 速度 | 3-329秒(フロンティアモデル) | 70-500ms、比較可能なタスクで40x-200x高速 | | 確信度 | 過信・非一貫的になりがち | 常に較正された確信度と不確実性を提示 | Jev は「型エラーが起きない」ことをスキーマ制約による数学的保証と位置づけ、経験的な反証可能性ではなく構造的な不可能性として説明する。想定用途は AI 駆動ワークフロー(あいまいな if 分岐の代替)、ペタバイト規模データのマップリデュース、100ms 級レイテンシが必要なリアルタイム応用、他の LLM 出力の検証・ガードレール。 ## 評価: ワークフロー eval 固定の正解分類を用いず、正しい計算グラフ(ワークフロー、コードとして表現)を仮定し、最大・最強の外部モデル(GPT-6 Astra と Fable 5.1)の平均予測を参照確率とする評価方式を新たに導入した。この方式で Jev は「ほぼ2桁にわたって Pareto frontier を占有する」と主張し、ホームページの「193.6倍高速・444.6倍安価」という数値はこの評価に基づく(実世界での改善幅としては高めの部類と説明)。比較対象の LLM 側は TypeSafe 自身が公開する "System One LLM" ラッパー(OSS: `typesafe-ai/system-one-adapter-python`)を介して構造化決定を出力させており、これが LLM から確率付き決定を得る最も正確な方法としつつも Jev より遅く高価だとしている。 ## デモ - **Doom**: 構造化テキストのゲーム状態表現に基づき Jev がリアルタイムで Doom をプレイ(画像入力はまだ非対応)。約10クエリ/秒、時間あたり約$7。 - **Wikiracing**: 起点から目的のWikipediaページへリンクのみを辿って到達するゲーム。1ステップで数百〜数千のリンクから選択する必要があり、ハルシネーションを起こさない高カーディナリティ選択のデモとして使われる。Jev はカーディナリティ255までの選択をサポートし、それを超える場合は各選択肢を独立採点してから明示的に選ぶ2段階方式を取る。 ## 命名の由来 「System One Models」は Daniel Kahneman の『ファスト&スロー』の System 1(速く直感的)/System 2(遅く熟慮的)の区別に由来する。「Jev」は William Stanley Jevons(ジェヴォンズのパラドックス)にちなみ、知能のコストが1桁下がるたびに桁違いの新規用途が生まれると期待する立場を示す。 ## 留意点 発表記事自体が一次ソースであり、第三者による独立検証は本記事執筆時点で確認できていない。速度・コストの主張は自社ベンチマーク環境(西海岸のノートPC)によるもので、ハルシネーション比較の LLM 側数値は OpenRouter 経由でルーティングバイアスが入りうる点を TypeSafe 自身が認めている。[[LLMのハルシネーション]] で扱う既存 LLM の統計的な緩和策(プロンプト工夫・自己検証・RAG等)とは異なり、Jev はスキーマ制約による構造的排除を主張しており、両者は同じ問題への異なるアプローチとして対比できる。 ## 関連 - エンティティ: [[TypeSafe AI]] / [[Diogo Almeida]] - コンセプト: [[LLM推論]] / [[LLMのハルシネーション]]