# Building standards for the next phase of AI [[OpenAI]] が 2026年9月21日に公開した Global Affairs 領域の政策提言記事。自動化されたAI研究による[[Recursive Self-Improvement|再帰的自己改善(RSI)]]の加速を見据え、その安全な運営には整合性(アラインメント)研究の進展と並んで、フロンティアAI開発に関する**国際的な技術標準**が不可欠だと論じている。 ## 背景: 3つの目標とRSIへの言及 OpenAI は自社のミッション(AGIが人類全体に利益をもたらすこと)に向けて、Sam Altman と Jakub Pachocki が示した3つの目標——(1) 自動化されたAI研究者の構築とアラインメント問題への反復的取り組み、(2) 科学的進歩・経済成長の実現、(3) 個人向けAGIによる万人のエンパワーメント——を掲げる。AI による研究加速はすでに数学(ナビエ–ストークス方程式のミレニアム問題)などで成果を上げつつあるとする。 AIシステムがより高い能力と自律性を持ち、AI研究・開発そのものを担うようになるほど、アラインメント研究がその能力の進展に追いつき続ける必要性が増す、と位置づけている。 ## RSI(再帰的自己改善)への立場 AIシステムが次世代AIの開発を人間の関与を保ちながら担うようになると、[[Recursive Self-Improvement|RSI]]のプロセスが徐々に自動化されうる。OpenAI は自動化されたAI研究者が同時に「自動化されたAI安全研究者」にもなりうるとし、重要インフラの防御や危険なAIエージェントへの対抗策の開発にも資すると期待を示す一方、次のように条件を明確にしている。 - 完全自律のRSIは現時点で行われておらず、安全に実施できると確認できない限り追求すべきではない。 - 進め方は人間の制御を保持できるかどうかと、便益・リスクに関する民主的な判断に依存する。 - 適切な注意なしにRSIが進めば、人間が研究プロセスを理解できないままAI開発への実質的な制御を失う恐れがある。 - 過去に開示した Hugging Face Incident は RSI 自体の直接の結果ではないが、堅牢な安全対策とアラインメントを欠いた場合に起こりうるリスクの前兆例として言及されている。 ## 国際標準の必要性 OpenAI は、フロンティアAI開発における安全・セキュリティ実践の国際標準が、アラインメント研究そのものと同じくらいフロンティアの進行速度を律する上で重要になりうると論じる。標準は「壊滅的なAIリスクの緩和において何が十分な状態か」という問いに対する共通の証拠基準・技術的安全対策の厳密性の合意水準を与える。 国際的な取り組みが必要な理由として、次の3つの課題を挙げる。 - **断片化**: 各国のバラバラな評価基準・報告要件・インシデント定義が、越境するリスクへの比較・理解・対応を難しくする。 - **集合行為問題**: 各国が個別最適で動くと、どの国も望まない結果に至りうる。RSIはAI研究自体を加速しうるため、集合的な理解・リスク評価・有意義な人間監督の能力を超える可能性がある。 - **能力の偏在**: フロンティア開発とその専門性は世界に均等に分布しておらず、上記2つの課題を増幅する。 これらの課題はオープンモデル・クローズドモデルの双方に当てはまるとしている。OpenAI は標準の狙いを「権力の集中回避」と「より良い実務上の帰結」に置き、特定のラボの慣行に依存しない可視化された原則をラボ外のステークホルダーにも提供する手段として位置づける。 ## 提案: 米国主導の国際技術標準、2本柱 OpenAI は米国が世界各国と協働してフロンティアAI(RSIを含む)の国際技術標準づくりを主導すべきだと提案し、次の2点を要点として挙げている。 ### (1) 国内・国際のフロンティア標準を補完するメカニズム オーストラリア・カナダ・ドイツ・フランス・ケニア・日本・韓国・シンガポール・インド・英国などにすでに設立されているAI安全機構のネットワークを活用し、Center for AI Standards and Innovation(CAISI)や各国の産業団体を通じて標準策定を進める案を示す。焦点は (1) 能力ベンチマークで測定されるフロンティアAIモデル・開発者、(2) 自動化されたAI研究(RSI含む)の便益・リスク管理の2点。CAISI が2024年に設立した International Network for Advanced AI Measurement, Evaluation, and Science を土台にするとしている。 ここで示す技術標準は、ライセンスや事前承認・強制的な事前審査を意味せず、各国政府が自国の法制度への組み込み方を判断するものと明記されている。またオープンモデル・クローズドモデルの開発者、独立した技術専門家、学術界と協議しつつ、特定企業・国・ビジネスモデルを有利にしない透明な策定プロセスを求めている。参照先として ISO、Frontier Model Forum、Agentic AI Foundation、Open Secure AI Alliance、および実装面の Appia Foundation を挙げ、航空・金融安定などの分野で確立された国際協調の前例からの学びを示唆している。 ### (2) 共通測定・インシデント報告プロトコル RSIを含む自動化されたAI研究の自律性増大を管理する上で特に重要な標準として、次を挙げる。 - RSI関連のAI進捗評価と、AI企業内で生じている自律的研究の割合の評価(OpenAI の research acceleration に関する報告書をその端緒と位置づけ)。 - 自動化されたAI研究に対する人間の監督、特にどのような自動化AI研究プロセスが即時の人間レビューを発動すべきかの基準。 - アラインメント・自動化AI研究に関するインシデントの分類・追跡・報告・対応(共通のインシデント重大度水準・報告閾値など。OpenAI の misalignment reporting framework をその端緒と位置づけ)。 加えて、重要インフラ事業者と各国政府が国家安全保障上の懸念・新たな脆弱性や脅威・ベストプラクティスを共有する安全な連絡チャネルの確立を求め、米中間の対話の必要性にも言及している。 ## 米国主導論 OpenAI は「AI開発のペース配分」を一定速度の維持ではなく、技術的にはアラインメント研究と展開がAI能力の進展に先行し続けること、社会的には標準・制度・協調によって産業ネットワークや市場の力を正の和(positive sum)の帰結に向けて増幅することだと定義する。米国は技術フロンティアにあり、金融・貿易・防衛・技術・情報システムの国際ネットワークで特権的な地位にあるため主導に適するとし、主導するかどうかが、米国とその同盟国が持つネットワークを強化するか弱めるかを左右すると論じている。地政学的競争は技術的優位だけでなく、AIの導入・普及をめぐる現実的な協調とルール形成の主導権争いにもなるとしている。 ## 出典 - 原文: `.raw/articles/building-standards-next-phase-ai-2026-09-22.md` - 外部 URL: https://openai.com/index/building-standards-next-phase-ai/