# ExaScale Computing Study - Chapter 2: Defining an Exascale System > 前: [[@2008__DARPA__ExaScale Computing Study - Chapter 1 Executive Overview]] | 次: [[@2008__DARPA__ExaScale Computing Study - Chapter 3 Background]] | 全体: [[ExaScale Computing Study - Technology Challenges in Achieving Exascale Systems]] ## 要約 本章は、エクサスケールを「2010 年のペタスケール系の重要属性が 1,000 倍」と定義し、データセンター(容量型・能力型)・部門・組込みの 4 種類の系について、必要な属性の伸びを表で整理する。本研究の目的はエクサスケール系の設計ではなく、2010 年までに強調すべき課題を特定し、2015 年までの開発・配備を支える技術基盤を得ることである (p.5)。 ## 主要概念 - **定義**: エクサスケール系とは、1 つ以上の重要属性が 2010 年のペタスケール系の 1,000 倍になった系を指す。属性は機能性能・物理属性・応用性能の 3 次元で定める (p.5)。 - **機能指標(functional metrics)**: 計算速度・記憶容量・帯域の 3 種。帯域はバイセクション帯域・チェックポイント帯域・I/O 帯域に細分される (p.5-6)。 - **物理属性(physical attributes)**: 電力・大きさ・コストはピーク値でなく、機能指標を分子とする比の分母として見る。電力は W あたりに加え J あたりも見る (p.6)。 - **均衡設計(balanced design)**: 高コスト資源の利用効率が揃うことを指し、応用クラスに依存する。専用機の Grape は多体問題のような狭い用途でだけ均衡する例である (p.6-7)。 - **能力型(capability)と容量型(capacity)**: 前者は time to solution、後者は単位コストあたりの持続性能を評価尺度とする。定義の出典は NRC 報告 *Getting Up to Speed* である (p.7)。 - **3 区分と 4 種**: 章冒頭は exa-sized・peta-sized・tera-sized の 3 区分(データセンター・部門・組込み)を立てる。2.3 節の系は容量型・能力型の分割により 4 種で述べられる (p.8)。 ## 主要主張 ### データセンター系 2015 年のデータセンター系は、2010 年のペタ系の設置面積の約 2 倍まで許し、計算部で最大 500 ラック・20 MW を上限とする (p.8)。ギガスケール(10^9)は 1985 年の Cray 2、テラスケール(10^12)は 1997 年の Intel ASCI Red(Sandia National Laboratory)が達成した系譜に置かれる (p.9)。エクサスケール系を名乗る条件は [[HPL]] で 10^18 flops(1 exaflops)を超えることである (p.9)。 汎用機として成立させるには、主記憶は最低 10 PB(10^16 B)、広い問題群には 10^17 B、持続ストレージは 10^18 B、局所メモリ帯域は約 1 EB/s が要る (p.9)。Amdahl の経験則は演算あたり 1 バイトの主記憶だが、近年の系は 0.14〜0.3 である (p.9)。これらは本文が言葉で述べる見積りであり、グラフ由来ではない。 > [!note] 数値の扱い > 必要メモリ容量はエクサ級への問題スケーリングの規則が未解明のため決まらない (p.14)。弱スケーリング(weak scaling)の例として、4D シミュレーションのメモリは N^(3/4) 則に従い 1000^(3/4) = 178 倍と原文が述べる (p.13)。 ### 部門系・組込み系 部門系(ペタ級)は 1〜2 ラック・100〜200 kW で 2010 年のペタ系相当の能力を持つ。系の規模はおよそ 1/1,000 で、OS はマイクロカーネルでなく UNIX 系のフル機能 OS が要る。例として SGI Altix(Itanium 4 個で 1 TB の主記憶)を挙げる (p.9-10)。 > [!note] 部門系の電力の併記 > 本文は部門系の電力を 100〜200 kW とし、表 2.1 は「2010 年ペタ系の 1/1000」とする。両者の食い違いは本文で解消されない。 組込み系では、電力効率の追求がサーバ系と収束し、放射線耐性と故障許容が通常環境でも要る可能性がある。課題は SWaP(大きさ・重量・電力)の最小化である。Blue Gene ファミリ(IBM)は組込み技術と HPC の融合の例、[[Roadrunner]](Los Alamos National Labs)は STI Cell チップを使う HPC 系の例として挙がる (p.10-11)。DSB(Defense Science Board)報告に由来する永続監視(persistent surveillance)は、3 クラスすべてが必要になる複合応用である (p.11)。なお、"Not amount of system concurrency can overcome an algorithm that does not scale well." と原文は述べ、並列度だけでは補えないことを注記する (p.10)。 ### 属性表 表 2.1 は、計算速度・メモリ容量・帯域・体積・電力について、容量型・能力型・部門・組込みの各変種が 2010 年ペタ系の何倍かを示す (p.12)。 ![[_attachments/darpa-2008-exascale-computing-study/ch02-table2.1-attributes-exascale-class-systems.png]] (表2.1. エクサスケール級系の属性表。各変種が 2010 年のペタ系に対し何倍の属性を要するかを示す。) 表 2.2 は同じ属性を W あたり・体積あたりの比に直し、1,000 倍になる比の個数を行と列で数える。列合計は 7、5、7、7、5、7 である (p.15)。集計では、能力型・部門・組込みが最も課題が重なる。計算速度と帯域の「W あたり」「体積あたり」が全系で一様に重要であり、メモリ容量は伸びの規則が未解明のため数が少ない (p.14)。 ![[_attachments/darpa-2008-exascale-computing-study/ch02-table2.2-attributes-exascale-class-systems.png]] (表2.2. 表 2.1 の属性を比に直し、1,000 倍になる比の個数を数えた集計表。キャプションは表 2.1 と同文である。) ## 未解決の問い - エクサ級への問題スケーリングの規則が未解明で、必要なメモリ容量は決まらない。第 5 章と第 7 章のストローマンに委ねる (p.14) - 1,000 倍の比をどの技術で達成できるかは本章で扱わず、後続章の問いとする (p.14) ## 関連 - ハブ: [[ExaScale Computing Study - Technology Challenges in Achieving Exascale Systems]] - 前後: [[@2008__DARPA__ExaScale Computing Study - Chapter 1 Executive Overview]]、[[@2008__DARPA__ExaScale Computing Study - Chapter 3 Background]] - 関連ページ: [[HPL]]、[[Roadrunner]]、[[Peter Kogge]]、[[DARPA]]