# Generalizations of the KPSS-test for Stationarity
> [!abstract] 概要
> 我々は、一変量時系列の定常性という帰無仮説に対する KPSS 検定の、自動的な一般化を提案する。これらの検定は、トレンド定常性、水準定常性、零平均定常性の帰無仮説に使える。我々は漸近的な帰無分布を導入し、関連する非定常な対立仮説に対する一致性を決定する。提案する検定の性質を、定常性について提案された他の検定の性質と比較する。モンテカルロ・シミュレーションは、帰無仮説の下で大きな正の自己相関をもつ自己回帰過程が起こりそうな場合に、これらの検定が有効であることを裏づける。
## 論文情報
- タイトル: Generalizations of the KPSS-test for stationarity
- 著者・所属: [[Bart Hobijn]](Federal Reserve Bank of New York)、[[Philip Hans Franses]](Erasmus University Rotterdam、Econometric Institute)、[[Marius Ooms]]([[Vrije Universiteit Amsterdam]]、Tinbergen Institute)
- 媒体: Statistica Neerlandica 58(4), pp. 483-502(2004)。VVS 発行
- 出自: 1998 年の Econometric Institute Report 9802/A(同題)が 6 年間よく引用されたため、書き直して主要結果を載せた改訂版
- 一次資料: 本文 PDF(20 ページ。arXiv 版なし)。原本は `.raw/papers/` に置いた
- 再現材料: モンテカルロの Gauss プログラムを著者の Web ページで公開している(本文記載)
## 概要
定常性を帰無仮説とする KPSS 検定([[@1992__Journal of Econometrics__Testing the null hypothesis of stationarity against the alternative of a unit root]])は、自己相関の強い定常過程で過大棄却(サイズ歪み)を起こす。原因は長期分散の HAC 推定量に有限標本で正のバイアスが残ることである。本論文は KPSS の検定統計量をそのまま使い、長期分散の推定に Newey-West(1994)の自動バンド幅選択を組み込むことで、ランダムウォーク対立仮説への一致性を保ったままサイズ歪みを減らせることを示す。あわせて、帰無仮説を水準定常性・零平均定常性へ広げ、漸近分布と臨界値を与える。Choi(1994)の検定と Leybourne-McCabe(1994)の検定との比較も行い、前者は自動選択と両立せず、後者は純粋なランダムウォークに対して一致性をもたないことを示す。
## 問題設定
- 単位根(Dickey-Fuller 系)検定だけを使うと、定常性は単位根を棄却できたときにしか選ばれない。多くの単位根検定は、自己相関が強い定常な対立仮説に対する検出力が低い。標準的な手順では定常性がなかなか見つからない
- 定常性を帰無仮説とする検定の難点は、定常で自己相関の強い過程のとき、サイズを制御しにくいことである。最もよく知られた KPSS 検定はこの場合に過大棄却する
- KPSS の HAC 推定量ではバンド幅の選び方に二律背反がある。大きすぎると長期分散が過大に推定されて統計量が小さくなり、有限標本では検出力がほとんどなくなる。小さすぎると、自己相関の強い過程で長期分散が過小に推定されて統計量が大きくなり、過大棄却になる
- 長期分散のより便利な推定量を導入しても、KPSS 型の検定が自動的に直るわけではない。帰無仮説の下でうまく働く推定量の中には、ランダムウォーク対立仮説の下で検定を不一致にするもの、つまりサンプルサイズを増やしても検出力が 1 に近づかなくなるものがある
- 目標は、ランダムウォーク対立仮説に対する一致性を失わずにこのサイズ歪みを減らす、単純で自動的な検定である
## 提案手法
### モデルと 3 つの帰無仮説
系列を次のように表す(式 1)。$u_i$ と $\varepsilon_t$ は平均 0 の共分散定常な短期記憶過程、$d\in\{0,1\}$ である。
$y_t=\alpha+\beta t+d\sum_{i=1}^t u_i+\varepsilon_t,\quad t=1,\dots,T$
$d=1$ が対立仮説であり、確率的部分はランダムウォーク成分とノイズ成分からなる。KPSS がトレンド定常性だけを扱うのに対し、本論文は次の 3 つの帰無仮説を扱う。
| 記号 | 帰無仮説 | 制約 | 残差の作り方 |
|---|---|---|---|
| $H_s$ | トレンド定常性 | $d=0$ | 切片とトレンドへの回帰残差 |
| $H_l$ | 水準定常性 | $d=\beta=0$ | 切片だけへの回帰残差 |
| $H_0$ | 零平均定常性 | $d=\beta=\alpha=0$ | $e_t=y_t$ |
これらは、平均の決定論的部分を未指定のままにする純粋な I(0) 性の周辺仮説と異なり、平均と記憶特性についての同時仮説である。著者らの別論文は、この 2 つの同時仮説を 1 人当たり所得水準の無条件収束・条件付き収束に対応づけている。
### 検定統計量
残差 $e_t$ の部分和を $S_t=\sum_{i=1}^t e_i$ とし、統計量を
$w=T^{-2}\sum_{t=1}^T S_t^2/\hat\sigma^2$
とする(式 5。帰無仮説ごとに $w_s$・$w_l$・$w_0$)。分母 $\hat\sigma^2$ は $e_t$ の長期分散 $\sigma_e^2=\lim T^{-1}E[(\sum e_t)^2]$ の一致推定量である。$S_t$ は帰無仮説の下で I(1)、対立仮説($d=1$)の下で I(2) になる。片側検定であり、$w$ が大きいと I(0) 仮説を棄却する。分数和分の対立仮説に対する両側検定は扱わない。
### 長期分散の推定
分母は HAC 型のノンパラメトリック推定量
$\hat\sigma^2=\hat c_0+2\sum_{j=1}^{T-1}k_m(j)\hat c_j$
で推定する。$\hat c_j$ は $j$ 次の自己共分散推定値、$k_m(\cdot)$ はバンド幅 $m$ をもつカーネルである。カーネルは 2 つを比べる。
| カーネル | 重み $k_m(j)$ | 採用理由 |
|---|---|---|
| Bartlett | $1-j/(m+1)$($j\le m$)、それ以外は 0 | KPSS が使用 |
| 二次スペクトル(QS) | $\frac{25}{12\pi^2(j/m)^2}\left[\frac{\sin(6\pi(j/m)/5)}{6\pi(j/m)/5}-\cos(6\pi(j/m)/5)\right]$ | Andrews(1991)が漸近平均二乗誤差で最適と示した。すべての自己相関に非零の重みを与える |
バンド幅 $m$ の選び方は 2 通りを比べる。
1. 1 段階法(KPSS): $m_T$ を標本サイズ $T$ の決定的関数とする。KPSS は $m_T(x)=\text{integer}[x(T/100)^{1/4}]$ を使う。自己相関が強い過程では $\hat\sigma^2$ が $x$ の選び方に強く依存する。$x$ が大きいと $w$ が小さくなって検出力が乏しく、小さいと $\hat\sigma^2$ が過小推定されて過大棄却になる
2. 2 段階法(Newey-West 自動選択): 先に決定的なハイパーパラメータ $n_T$($n\to\infty$)を選び、標本自己共分散から $\hat s(0)$・$\hat s(j)$ を作って最適バンド幅 $\hat m_T$ を確率変数として推定する。Bartlett 窓では $\hat\gamma=1.1447[(\hat s^{(1)}/\hat s(0))^2]^{1/3}$、$\hat m_T=\min(T,\text{integer}[\hat\gamma T^{1/3}])$($\hat s(j)=2\sum_{i=1}^n i^j\hat c_i$、$\hat s^{(1)}$・$\hat s^{(2)}$ はそれぞれ $j=1,2$ の値)、$n=o(T^{2/9})$ である。QS 窓では $\hat\gamma=1.3221[(\hat s^{(2)}/\hat s(0))^2]^{1/5}$、$\hat m_T=\min(T,\hat\gamma T^{1/5})$、$n=o(T^{2/25})$ である。最終バンド幅は $n_T$ に間接的にしか依存しないので、検定結果は事前の選択に左右されにくくなる
データ依存のバンド幅を求める別法は 2 つとも一致性を壊すので採らない。
- Andrews(1991)の最小二乗 AR 推定でバンド幅を修正する方法は、$d=1$ の下で $\hat m_T=O_p(T)$ と速く増えすぎ、分母が大きくなって不一致になる。決定的な上限で切り詰められるが、恣意的な選択が 1 つ増えるので避けたい
- Andrews-Monahan(1992)の AR 予備フィルタは、対立仮説の下で系列を階差化してしまい、統計量の発散を妨げる。これも不一致になる
### 漸近帰無分布と一致性
KPSS の結果より、3 つの帰無仮説の下で
$w_s\to\int_0^1 V_2^2(r)\,dr,\quad w_l\to\int_0^1 V^2(r)\,dr,\quad w_0\to\int_0^1 \bar W^2(r)\,dr$
である(記号は本文表 4。$V$ は第 1 水準のブラウン橋、$V_2$ は第 2 水準のブラウン橋、$\bar W$ は標準ウィーナー過程。$w_0$ の極限は原本のテキスト抽出で $W$ の上線が落ちており、表 4 の「平均を除いたウィーナー過程」に対応させて記した)。上側臨界値はサンプルサイズ 5000・50000 回の反復のモンテカルロで得た。
| 帰無仮説 | 10% | 5% | 2.5% | 1% |
|---|---|---|---|---|
| $H_s$ | 0.119 | 0.148 | 0.178 | 0.219 |
| $H_l$ | 0.348 | 0.460 | 0.580 | 0.754 |
| $H_0$ | 1.195 | 1.656 | 2.114 | 2.759 |
一致性は次のとおりで、Bartlett 窓・QS 窓、固定・自動バンド幅のいずれでも成り立つ(証明の概略は 1998 年のワーキングペーパー)。
1. $d=1$ なら $w_s\to\infty$
2. $d=1$ または $\beta\neq 0$ なら $w_l\to\infty$
3. $d=1$、$\beta\neq 0$、$\alpha\neq 0$ のいずれかなら $w_0\to\infty$
したがって水準定常性・零平均定常性の検定は、それぞれ決定論的トレンドや非零の切片に対しても棄却する。Choi(1994)はこれを欠陥と見なすが、本論文は平均と記憶特性についての同時仮説を検定する観点から有用な性質と位置づける。
### 比較対象の検定
- Choi(1994)の検定は、切片なしの回帰から作った残差 $\hat S_t$ を使い($y_0=0$ を仮定)、$\hat S_{t-1}\Delta\hat S_t$ の和に基づく統計量 $\chi_2$ を作る。極限分布は $\int_0^1 W^*(s)dW^*(s)$ である。Newey-West の自動選択と併用すると $\hat\sigma^2$ の増加率が分母と同程度以上になり、統計量が発散しないので不一致になる。したがって固定のバンド幅を選ぶ必要がある
- Leybourne-McCabe(1994、LBM)の検定は、$y_t$ の ARIMA($p$,1,1) モデル $\Delta y_t=\beta+\sum\phi_i\Delta y_{t-i}+\varepsilon_t-\theta\varepsilon_{t-1}$ を仮定し、定常なら $\theta=1$ の非可逆な MA になることを利用する。Pötscher(1991)により、非可逆でも AR 係数の推定値は一致性をもつので、AR 部分をフィルタで除いた $y_t^*$ から $w$ を作る。ところが純粋なランダムウォーク(ARIMA(0,1,0))の下では $\phi$ と $\theta$ が識別されず、最尤推定値が単位に無限小に近づく確率が正で残る。すると (8) のフィルタが $y_t^*=\Delta y_t$ に近づいて単位根を消し、対立仮説の下の分布が帰無仮説の下と同じになる確率が残り、不一致になる
- 同じ問題が、共和分の帰無仮説を検定する McCabe-Leybourne-Shin(1997)の一般化にも起こる。KPSS 型では一致性が対立仮説の下の $\sigma_e^2/\sigma_u^2>0$ に依存しないので、この問題は起こらない
- Nyblom-Harvey(2001)の状態空間モデルに基づく検定はランダムウォークに一致性をもつが、AR 係数が 1 に近づくと帰無分布が変わり検出力がサイズに近づくので、積分ランダムウォーク(I(0) 対 I(2))を対立仮説にした境界検定を使う必要があるとされる
## 新規性
- KPSS 検定の分母に Newey-West の自動バンド幅選択を使っても、Bartlett 窓・QS 窓の両方で一致性が保たれることを、バンド幅の発散率の比較で示した。KPSS 検定に適用して有限標本のサイズ歪みを減らせることを実証した点が中心的貢献である
- 水準定常性・零平均定常性の 2 つの帰無仮説へ KPSS 統計量を広げ、漸近分布・臨界値・決定論的成分に対する一致性を与えた。2 つの同時仮説は無条件収束・条件付き収束のような経済的な問いに対応する
- Stock(1994)の議論に欠けていた Choi 検定・LBM 検定の一致性の欠陥を、それぞれ自動バンド幅選択との非両立と識別の失敗として特定した
- Bartlett 窓と QS 窓の一致性の速度の違いという、理論文献で見落とされがちな差が小標本の検出力にも現れることを示した
## 実験設定
- 手法: モンテカルロ・シミュレーション。サンプルサイズ 30・100・500、各 1000 反復、名目有意水準 5% の棄却確率を報告する(表 5 の臨界値だけは 5000 点・50000 反復)
- バンド幅(表 6): Bartlett の固定 $m_b(x)=\text{integer}[x(T/100)^{1/4}]$、Bartlett の自動選択の初期値 $n_b(x)$(同形)、QS の固定 $m_{qs}(x)=\text{integer}[\frac23 x(T/100)^{2/9}]$($\hat\sigma^2$ の漸近分散が Bartlett と揃うよう選ぶ)、QS の自動選択の初期値 $n_{qs}(x)=\text{integer}[x(T/100)^{2/25}]$。本文表では主に $x=4$ を使う
- 比較対象: Choi の検定(QS 窓、$m_{qs}(4)$)、LBM の検定($y_t$ が AR(1) なら $p=1$、MA(1) なら $p=3$)
- データ生成過程: サイズは AR(1) $y_t=\phi y_{t-1}+\varepsilon_t$($\phi\in\{0.9,0.5,0,-0.5,-0.9\}$、表 7)と MA(1) $y_t=\varepsilon_t+\theta\varepsilon_{t-1}$(表 8)、検出力はランダムウォーク+ノイズ($\sigma_u^2\in\{0.01,\dots,100\}$、表 9)、決定論的成分は $y_t=\alpha+\beta t+\varepsilon_t$(表 10)、バンド幅感度は AR(1)(表 11)、純粋ランダムウォーク(表 12)
## 実験結果
### 自己相関が強い AR(1) のサイズ(表 7、$H_s$、$\phi=0.9$)
| $T$ | KPSS $m_b(4)$ | KPSS $n_b(4)$ | KPSS $m_{qs}(4)$ | KPSS $n_{qs}(4)$ | Choi | LBM |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 30 | 0.44 | 0.28 | 0.80 | 0.18 | 0.17 | 0.19 |
| 100 | 0.58 | 0.32 | 0.85 | 0.30 | 0.08 | 0.14 |
| 500 | 0.68 | 0.23 | 0.87 | 0.32 | 0.07 | 0.05 |
- 名目 5% に対し、固定バンド幅では 0.44〜0.87 と大きく過大棄却するが、自動選択では $T=100$・500 で大きく改善する。サイズ改善は Bartlett と QS でほぼ同程度である
- Choi 検定は $\phi>0$ での過大棄却が KPSS より小さい。LBM 検定は AR フィルタにより小標本のサイズ性能が最良である。Stock(1994)が得た $\phi=0.9$・$T=100$ の 0.10 は、Choi 検定と LBM 検定の中間にあたる
- 決定論的成分の除去の程度は、サイズにあまり影響しない
### MA(1) のサイズ(表 8)
MA 係数 $\theta$ が $-1$ に近いとき、自動選択が $m=0$ を選んで長期分散を過小推定し、$n_b$・$n_{qs}$ の列が過大棄却になる($H_s$・$\theta=-0.9$ で $T=30$ は $n_b(4)$ が 0.68、$n_{qs}(4)$ が 0.89、$T=100$ の $n_{qs}(4)$ は 0.85)。固定バンド幅は、負の 1 次自己共分散の過大評価のため過少棄却になる。それ以外の $\theta$ ではバンド幅選択にほぼ依存しない。
### 検出力(表 9)
- $H_s$・$T=500$・$\sigma_u^2=1$ の棄却確率は、KPSS $m_b(4)$ が 1.00、$n_b(4)$ が 0.91、$m_{qs}(4)$・$n_{qs}(4)$ が 1.00、Choi が 0.57、LBM が 0.59 である。$T=100$・$\sigma_u^2=1$ では $n_b(4)$ が 0.57、$n_{qs}(4)$ が 0.79 で、自動選択では QS 窓の検出力が Bartlett 窓より明らかに高い。これは QS 窓の一致性の速度が高いという理論と整合する
- Choi 検定の検出力は非常に低く、$T=500$・$H_s$ の $\sigma_u^2=0.01$ で 0.40 である。KPSS はほぼ 1 である
- LBM 検定の検出力はランダムウォーク成分の分散が大きいほど下がる。$T=500$・$H_s$ で $\sigma_u^2=0.01$ の 0.97 から $\sigma_u^2=100$ の 0.34 まで低下する
- 検出力は、決定論的成分を除く次数を平均除去からトレンド除去へ上げると低下する(Stock(1994)の漸近局所検出力と整合)
### 決定論的成分に対する一致性(表 10)
$H_0$(零平均)は、切片 $\alpha\ge 1$ のほぼすべての設定で 100% 棄却される。$\alpha=0.1$ では $T=30$ で 0.10〜0.20 程度、$T=500$ で 0.53 である。$H_l$(水準定常)はトレンド係数 $\beta\ge 0.1$ の設定で、$T=30$ でも 0.95 を超える棄却確率になる。$H_s$ の名目サイズは保たれる。$T=30$ でも、決定論的成分を確実に検出して帰無仮説を棄却できる。
### バンド幅選択に対する感度(表 11、$H_s$)
$x\in\{2,4,8\}$ に対し、固定バンド幅は $\phi=0.9$・$T=500$ で Bartlett が 0.93(x=2)から 0.34(x=8)まで、QS が 1.00 から 0.45 まで動く。自動選択では Bartlett が 0.42 から 0.14、QS が 0.54 から 0.15 と、動く幅は小さくなる。ただし $x$ への依存は残る。$\phi=-0.9$ では、自動選択が小標本で過大棄却を起こす(0.88 や 0.90 など)。つまり提案手順は自己相関が交代する定常 AR には機能しない。強い季節変動は前もって除く必要がある。
### 純粋なランダムウォークに対する検出力(表 12、$H_s$)
| $T$ | KPSS $n_{qs}(4)$ | Choi $m_{qs}(4)$ | LBM($p=1$) |
|---|---|---|---|
| 30 | 0.23 | 0.15 | 0.28 |
| 100 | 0.56 | 0.18 | 0.30 |
| 500 | 0.96 | 0.58 | 0.31 |
| 1000 | 0.99 | 0.67 | 0.32 |
| 5000 | 1.00 | 0.80 | 0.33 |
KPSS の検出力は 1 に収束する(一致性)。LBM の検出力は増えず、$T=5000$ でも 0.33 で、不一致性が確かめられた。Choi は一致性をもつが、収束が遅い。
## 考察
- 実務者への推奨は、Choi 検定・LBM 検定よりも、自動バンド幅選択を伴う KPSS 検定である。前者より小標本の性質が良く、LBM と違いすべての関連する非定常モデルに対して一致性をもつ
- 窓の選択は、一致性の速度の差として効く。QS 窓は漸近的な一致性の速度が高く、小標本の検出力も高い。理論文献では依然 Bartlett 窓が標準で、この差は見落とされがちである
- 小標本の性質はなお改善の余地がある。時系列ごとにモデルを特定して LBM のようにパラメータ化する方向があるが、対立仮説の一群に対する一致性を失ってはならない。Nyblom-Harvey の議論は、AR 係数が 1 に近づく場合の定常性検定は完全なパラメトリック設定でも信頼できる結果を出しにくいと示唆する
- 1 に近い負の自己相関や交代する自己相関の過程では、自動選択が長期分散を過小推定して過大棄却を招く。系列の前処理(季節変動の除去)が要る
## 強み / 弱点・課題
- 強み
- 既存の KPSS 統計量を変えず、分母の推定方法の変更だけで自動化と一致性を両立させた。実装が容易で、事前のバンド幅選択への依存も減る
- 3 つの帰無仮説の漸近分布・臨界値・一致性を 1 つの枠組みで与えた
- 比較対象の Choi・LBM の欠陥を、理論(バンド幅の増加率、識別の失敗)とシミュレーションの両面から示した。再現用の Gauss プログラムを公開している
- 弱点・課題
- 有限標本の過大棄却は残る。$\phi=0.9$ でも $T=500$ で 0.23〜0.32 で、名目 5% に届かない。交代する自己相関($\phi=-0.9$)や MA の $\theta\approx -1$ では自動選択が悪化する
- 一致性の証明は本文になく、1998 年のワーキングペーパーに委ねられている。臨界値は 50000 反復・$T=5000$ の漸近近似である
- シミュレーションは正規誤差のみ、各設定 1000 反復で、標本サイズは最大 500 である。Choi・LBM の比較は $H_s$ に限られる(スペース節約のため)
- 両側検定と分数和分の対立仮説は扱わない