# What Is Originality in the Humanities and the Social Sciences?
> [!abstract] 概要
> 5 つの学際的フェローシップ競争のピアレビューパネリストへのインタビューに基づき、本論文は人文学・社会科学における学術評価の主要基準の一つである独創性を分析する。科学社会学の文献は自然科学に焦点を当て、独創性を新しい発見と新しい理論の産出として定義している。これに対し、フェローシップ競争の文脈では、社会科学・人文学のピアレビュアーは独創性をはるかに広く、新しいアプローチ・理論・手法・データの使用、新しいトピックの研究、研究が手薄な領域での研究、あるいは新しい発見の産出として定義することを示す。文献は独創性の定義における学問分野間の差異を検討してこなかったが、本論文は有意な差異を見いだした。人文学者と歴史学者は明確にアプローチの独創性を重視し、人文学者は用いるデータの独創性も強調する。社会科学者は手法の独創性を最も多く挙げるが、より多様な種類の独創性も評価する。文献は独創性を実質的な革新と同一視し、研究者の個人的属性を評価過程には無関係とみなす傾向があるが、パネリストはしばしば提案の独創性を研究者の道徳的性格、とりわけ真正性と誠実さの指標とみなすことを示す。これらの貢献は、評価基準の意味と、その学問分野群にわたる分布に焦点を当てる、ピアレビューと独創性の研究への新しいアプローチを構成する。
## 論文情報
- 著者: Joshua Guetzkow(Princeton University)、Michèle Lamont(Harvard University)、Grégoire Mallard(Princeton University / École Normale Supérieure de Cachan)
- 掲載: American Sociological Review, Vol. 69, No. 2 (2004 年 4 月), pp. 190-212(米国社会学会)
- 種別: 質的インタビュー調査(内容分析)。24 ページ。図はなく、表 4 点(表 1-4)と付録 A(具体的な独創性の類型の記述)からなる
- 出典の媒体は PDF の JSTOR 表紙と本文ヘッダから確認した。DOI は PDF に記載がないため空にしている
## 概要
人文学・歴史学・社会科学の審査パネリスト 49 名(と議長 3 名)へのインタビュー 71 件から、独創性に言及した 240 件を符号化して分析した。独創性は 7 つの総称的類型と、その下の具体的類型に分類できる。最頻は自然科学の文献に無い「新しいアプローチ」であり、「新しい理論」「新しい結果」はむしろ少ない。分野群で重視する類型が異なり、独創性は道徳的な徳(勇気・独立・真正性)と結び付けて語られる。
## 問題設定
- 従来のピアレビュー研究は、査読の不一致率や手続きなど「どれだけ意見が割れるか」を扱い、「何について意見が割れるか」(評価基準の意味)を扱ってこなかった。
- 正統的な科学社会学(Merton、Storer、Kuhn)は、独創性を科学知識を増やす新発見・新理論と定義し、優先権論争に焦点を当ててきた。この定義は自然科学由来であるにもかかわらず、社会科学にも適用されてきた。
- 評価者の個人的属性は評価に無関係(Merton の普遍主義規範)とされ、研究は人物への判断を「不当な偏り」として扱ってきた。
- 完成した研究の評価が中心で、研究提案の評価は手薄である。
## 提案手法
- データ: 5 つのフェローシップ競争(米国学術団体評議会 ACLS、社会科学研究評議会 SSRC、Woodrow Wilson 財団、大学の若手研究員協会 Society of Fellows、匿名の社会科学財団)の 12 のパネル。2 年間で 81 件のインタビュー(パネリスト 49 名への 66 件、プログラム担当者・議長への 15 件)を実施し、うち 71 件を分析した。各回は約 90 分、ほぼ電話で、パネル審議の数日から数週間後に行った。3 件では審議を直接観察した。
- 分析: 2 名の符号化者が Atlas.ti で内容分析した。符号は帰納的に導き、標準化したうえで相互検証した。独創性を明示的に問う質問への回答だけでなく、「なぜこの提案を高く評価したか」といった質問への暗黙の言及も対象にした。
- 分野群: 人文学(美術史・古典・英文学・文芸批評・音楽学・哲学)、歴史学、社会科学(人類学・経済学・地理学・政治学・社会学)の 3 群に集約して比較した。歴史学は両群にまたがるため独立させた。
- 類型論: 半帰納的に構築した。「どの側面が独創的か」で 7 つの相互排他的な総称的類型に分け、各類型の内側を具体的類型に細分した。
## 新規性
- 独創性が広い多次元概念であることの実証。既存文献に無かった「新しいアプローチ」と「研究が手薄な領域」を類型に加えた。
- 独創性の重視される側面が学問分野群で系統的に異なることの実証。
- 独創性の評価に、研究者の道徳的性格(真正性・誠実さ)への判断が実質的判断と不可分に含まれることの提示。従来の実質対非実質の峻別に対する反例になる。
## 実験設定
表 1 と表 2 が類型の頻度、表 3 が分野群別の分布、表 4 が道徳的性質との結び付きを示す。頻度の単位は個々の言及であり、同一の回答者による複数言及を含む。このため言及は互いに独立でない。分野群別の検定は総称的類型のみで行い、小さいセルの制約から具体的類型は比較できない。
## 実験結果
総称的な類型の分布は次のとおりである(表 1、Table 1)。独創性の言及 217 件(独創的でない研究の記述を除く)の内訳である。
| 類型 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 独創的なアプローチ | 67 | 31% |
| 独創的なトピック | 32 | 15% |
| 独創的な理論 | 40 | 19% |
| 独創的なデータ | 29 | 13% |
| 独創的な手法 | 27 | 12% |
| 未研究の領域 | 13 | 6% |
| 独創的な結果 | 9 | 4% |
| 合計 | 217 | 100% |
(Table 1. Generic Types of Originality)
具体的類型のうち頻度が高いものは、新しい問い(アプローチ内で 21 件)、非正典的・未研究のトピック(トピック内で 20 件・63%)、新しいデータ(データ内で 15 件・52%)である(表 2、Table 2。下に全件転記)。理論では「アイデアの接続・対応付け」と「文献の統合」が各 30% を占め、「新理論」は約 10% にとどまる(表 2 では 5 件・13%)。手法では手法の統合(37%)と既存データの新しい使い方(26%)が多い。結果では「新しい解釈・洞察」(56%)が「新しい発見」(44%)を上回る。新しい組合せ方(接続・統合)は文献が見落としてきた独創性の形である。
| 総称的類型 | 具体的類型 | N | % |
|---|---|---|---|
| 独創的なアプローチ | 新しいアプローチ | 5 | 7% |
| | 新しい問い | 21 | 31% |
| | 新しい視点 | 11 | 16% |
| | 使い古された・流行のトピックへの新しいアプローチ | 10 | 15% |
| | 新しい接続 | 8 | 12% |
| | 新しい議論 | 6 | 9% |
| | その分野にとって革新的 | 6 | 9% |
| | 合計 | 67 | 100% |
| 未研究の領域 | 未研究の地域 | 7 | 54% |
| | 未研究の時代 | 6 | 46% |
| | 合計 | 13 | 100% |
| 独創的なトピック | 新しいトピック | 9 | 28% |
| | 非正典的トピック | 20 | 63% |
| | 非慣習的なトピック選択 | 3 | 9% |
| | 合計 | 32 | 100% |
| 独創的な理論 | 新しい理論 | 5 | 13% |
| | アイデアの接続・対応付け | 12 | 30% |
| | 文献の統合 | 12 | 30% |
| | 既存理論の新しい応用 | 5 | 13% |
| | 再概念化 | 4 | 10% |
| | 理論の非慣習的な使用 | 2 | 5% |
| | 合計 | 40 | 100% |
| 独創的な手法 | 革新的な手法・研究設計 | 5 | 19% |
| | 手法の統合 | 10 | 37% |
| | 既存データの新しい使い方 | 7 | 26% |
| | 古い問い・論争の解決 | 3 | 11% |
| | その分野にとって革新的 | 2 | 7% |
| | 合計 | 27 | 100% |
| 独創的なデータ | 新しいデータ | 15 | 52% |
| | 複数の情報源 | 10 | 34% |
| | 非正典的データ | 4 | 14% |
| | 合計 | 29 | 100% |
| 独創的な結果 | 新しい洞察 | 5 | 56% |
| | 新しい発見 | 4 | 44% |
| | 合計 | 9 | 100% |
(Table 2. Specific Types of Originality。原表の注: Some rows may not sum to 100% due to rounding. 原表は具体的類型を横並びの列で示し、列数は総称的類型ごとに異なる。ここでは縦に展開した。)
分野群別の総称的類型の分布は次のとおりである(表 3、Table 3、カイ二乗検定 χ²=34.23、自由度 12、p<.001)。
| 類型 | 人文学 | 歴史学 | 社会科学 | 全体 |
|---|---|---|---|---|
| アプローチ | 29 (33%) | 26 (43%) | 12 (18%) | 67 (31%) |
| データ | 19 (21%) | 6 (10%) | 4 (6%) | 29 (13%) |
| 理論 | 16 (18%) | 11 (18%) | 13 (19%) | 40 (18%) |
| トピック | 13 (15%) | 6 (10%) | 13 (19%) | 32 (15%) |
| 手法 | 4 (4%) | 5 (8%) | 18 (27%) | 27 (12%) |
| 結果 | 3 (3%) | 4 (7%) | 2 (3%) | 9 (4%) |
| 未研究の領域 | 5 (6%) | 3 (5%) | 5 (7%) | 13 (6%) |
| 総数 | 89 | 61 | 67 | 217 |
(Table 3. Generic Definitions of Originality by Disciplinary Cluster)
- 人文学者と歴史学者はアプローチを、人文学者はデータも重視する。社会科学者は手法を最も多く挙げ、アプローチ・トピック・理論をほぼ同程度に評価する(より多様な理解)。
- 同じ語でも意味が分野群で異なる。データは、人文学では文章・絵画・音楽などのテキスト、歴史学では文書館史料(証拠)、社会科学では定量データセットを指す。新しいアプローチは、人文学では定説の著者に新しい枠組みを初めて適用することを指すことが多い。社会科学者は既知の主題への新しい問いとして語り、手法を詳しく述べる。人文学・歴史学の手法への言及は詳細が乏しい。
独創性と道徳的性質の結び付きは次のとおりである(表 4、Table 4)。独創性の言及 240 件のうち 99 件(41%)で道徳的性質が言及され、分野群間に統計的に有意な差はない。個人単位では回答者の 81% が少なくとも 1 回、50% が複数回、道徳に言及した。
| 指標 | 人文学 | 歴史学 | 社会科学 | 全体 |
|---|---|---|---|---|
| 独創性の言及の総数 | 103 | 68 | 69 | 240 |
| 道徳的性質との結び付き | 41 | 32 | 26 | 99 |
| 割合 | 40% | 47% | 37% | 41% |
(Table 4. Associating Originality with Moral Qualities by Disciplinary Cluster)
## 考察
- 独創的な提案の応募者は、大胆・野心的・勇敢・好奇心・独立・知的に誠実・リスクを取る、と語られる。独創性を欠く応募者は、順応的・自己満足・二番煎じ・怠惰・視野が狭い・流行に乗る、と語られる。ここから、独創性は研究者が自分の真正な関心を追う指標(知的な真正性)とみなされていると解釈できる。
- 真正性は、現状の再生産(怠惰)と最新の流行の追従(不誠実)の間を進むことで得られる。パネリストはリスクを取る研究者に報いる意図を明言する。流行と独創の境界は薄く、専門用語の多用は流行の目印とされる。
- 著者らはこれを「学者の徳(scholastic virtue)」の一部と位置付け、審査の道徳的次元が実質的判断に内在すると論じる。したがって Merton 的な実質対非実質の峻別は、少なくともフェローシップ審査では成り立たない。
- 分野群差は、レトリックや認識文化の違いと関連付けられる(テキスト駆動の一般化とコンセプト駆動の一般化)。人文学者にはテキストに対する新しいデータやアプローチが解釈の余地を開き、社会科学者には手法が概念的問いに答える経路になる。
- 独創性は評価基準の一つにすぎず、重要性・健全性・明晰さ・学際性などと競合し、しばしば独創的でも重要でない、または方法に欠陥があるとして退けられる。過剰な独創性は「混沌」とみなされうる。
- 政策的含意として、自然科学モデルに倣い「新理論・新発見」を掲げる資金提供が、新しいアプローチという形の独創性を取りこぼす可能性を指摘する。
## 強み / 弱点・課題
- 強み: 審査の現場にいる当事者の語彙から帰納した類型論であり、自然科学モデルの押し付けを避けている。2 名の符号化者による相互検証、回帰分析による補強を行っている。
- 弱点・課題: 標本は権威あるフェローシップのパネリストで、無作為抽出ではない。提案の審査に限られ、投稿論文や完成研究への一般化は未確認(ASR の査読コメントの先行研究との比較のみ)。小さなセルの制約により、分野群差は示唆的であり決定的でない。個々の分野ではなく分野群に集約している。この結果が自然科学に当てはまるかは扱っていない。