# XiHe
Alibaba Cloud(論文中では "Provider A")が本番のグローバル物理ネットワークに12ヶ月間デプロイした、根本原因分析(root-causing)のためのマルチエージェントシステム。XiProxy(ディスパッチャ)、分散推論エージェント群 Xilet、[[Networked Agent Memory]](NAM)、[[Networked Causality Representation]](NCR)の4要素から構成される。
## 概要
- **目的**: 物理ネットワーク障害の根本原因特定において、未知の障害モードへの適応性(adaptability)・大規模インシデントへの拡張性(scalability)・検証可能な解釈可能性(interpretability)を同時に満たす。
- **構成要素**:
- **XiProxy**: 受信アラートを正規化し、Xilet 群のスコープ(デバイス束・アラート信号)を決定して割り当てる。
- **Xilet**: デバイス束またはアラート信号を担当する個々の推論エージェント。[[ReAct]] に基づき、運用知識ベース(OKB: アラート-アノマリー写像+多世代因果スキーマ)に制約されつつ MCP でトポロジ照会などのツールを呼ぶ。
- **NAM**: Xilet 間の部分観測性を解消する軽量通信プリミティブ(REQ/CONF/BCST)。
- **NCR**: Xilet の推論成果を検証可能な因果グラフへ統合し、OKB との整合性チェックとオペレータ提示を担う。
- **実運用規模**: 20+のオンコールオペレータが O(10^5) 台のデバイス、約100ゾーン・30リージョン超で3,000件超のインシデントに利用(12ヶ月間)。
- **主な成果**: 精度94.6%(最良ベースライン比ミス率54.9%削減)、根本原因特定時間25.8%削減、オペレータ満足度95.1%。625倍のアラート量増加でも精度低下は4.6ポイントに留まる。
## バックボーンモデルと運用制約
- バックボーン LLM は Qwen3-MAX-Instruct(思考モード無効)。90秒の運用目標に対しレイテンシで DeepSeek-R1 より優先された。
- 規制上、LLM によるネットワークへの能動的なプロービングや操作は禁止されており、XiHe は受動的なアラート取り込みと診断提示に限定される。実際のミティゲーション実行はオペレータが SoP に従い手動で行う。
- K=3個の独立した Xilet スワームを並列実行し、解釈可能性スコア(SC/TC/KC)に基づく合議で最終診断を選ぶスワームレベル投票を採用する。
## 比較対象・関連システム
- **[[BiAn]]**: 固定ワークフロー型のエージェント根本原因分析パイプライン。ベースラインとして比較され、XiHe が上回る。プロンプト長が長すぎると幻覚を誘発するという知見はBiAnとも符合する。
- **[[@2024__arXiv__Cloud Atlas - Efficient Fault Localization for Cloud Systems using Language Models and Causal Insight|Cloud Atlas]]**(適応版 Cloud Atlas+): マイクロサービス向け因果推論手法を物理ネットワーク向けに適応したベースライン。解釈可能性(SC/TC/KC)で XiHe に劣る。
- **HotDevice**: 本番稼働中のルールベース(ホットスポット検知)手法。深刻度と件数からホットなフォールトドメインを根本原因とみなす。
- **One-Time Agent (OTA)**: 全アラートを単一 LLM に投入するナイーブベースライン。大規模インシデントでプロンプトが128kコンテキスト上限を超える。
## 出典
- [[@2026__SIGCOMM__Networked Agent Memory and Causality Representation - Experiences towards Interpretable Cloud-Scale Root-Causing]]