# Willard Gibbs
**Willard Gibbs** は、20世紀初頭のニューヘイヴン(米国)で統計力学に新しい視点をもたらした物理学者・数学者。数学者でありながら、数学を常に物理学に従属するものとみなしていた。(Source: [[@1961__MITPress__Cybernetics - Chapter 2 Groups and Statistical Mechanics]] ch.2 p.45)
## 主要業績
- **統計力学における視点の転換**: ニュートン力学を、初期条件が既知の単一の系ではなく、初期条件の分布——系のアンサンブル——として扱う視点をもたらした。(Source: 同上 ch.2 p.45)
- **エルゴード仮説**: 位相空間からエネルギー・運動量・全角運動量などの不変量を取り除いた系では、ほとんど全ての点の軌道が空間内のあらゆる点を通過すると考えた(ギリシャ語 ἔργον「仕事」と ὁδός「道」に由来)。この仮説は Plancherel らにより誤りと示され、followers によって「軌道がすべての点にいくらでも近づく」という準エルゴード仮説に置き換えられた。(Source: 同上 ch.2 p.49)
- **時間平均と位相平均の一致という着想**: この着想自体は正しかったが、Gibbs 自身の証明の方法は誤っており、正しい基礎づけは彼の死後、Koopman・von Neumann・Birkhoff によるエルゴード定理(1930年前後)まで待たれた。(Source: 同上 ch.2 p.49)
## ウィーナーによる評価
ウィーナーは、Gibbs が集合の分解や確率1/確率0の和という手続きを暗黙に用いながら、集合の性質についての考察(sets of instances の微妙な区別)を持たない、あまり繊細でない数学者だったと評する。また、変換・変換群・不変量の概念は Gibbs のベクトル解析の研究から見て彼にとって馴染み深いものだったが、その哲学的な意義を十分に汲み尽くしてはいなかったとも評している。ウィーナーは Gibbs を同時代人 Heaviside になぞらえ、「物理数学的な勘が論理を追い越しており、正しいことは多いがなぜ・どのように正しいかを説明できない科学者」の一人と位置づける。(Source: 同上 ch.2 pp.49-50)
## 関連
- 概念: [[エルゴード理論]]
- 実体: [[Henri Lebesgue]](ウィーナーによれば Gibbs の問いへの答えを与えた人物) / [[ノーバート・ウィーナー]]
- ソース: [[@1961__MITPress__Cybernetics - Chapter 2 Groups and Statistical Mechanics]]
## 出典
- Norbert Wiener, *Cybernetics: or Control and Communication in the Animal and the Machine*, 2nd ed., The MIT Press, 1961, Chapter 2(印字 pp.45–50)。