# VMware VMware は、2012年後半に [[Nicira]] を買収したサーバ仮想化企業である。この買収は、Google や Microsoft が SDN ベースのインフラを公然と語り始めたことと並んで、商業的な SDN の採用が変革を加速させる要因になった。買収後の製品である VMware NSX は、物理的なネットワーク機器のコントロールプレーン/データプレーン間インターフェースに触れることなく、プログラムによる設定を通じてネットワーク仮想化を実現している。VMware の公称では、NSX(Nicira の流れを汲む)は原書執筆時点でフォーチュン100企業のうち91社のデータセンターで採用されている。(Source: [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 5 SDN:ソフトウェア定義ネットワーク]] ch.5 §5.2, §5.4) *Software-Defined Networks: A Systems Approach* 第8章は、VMware NSX を Nicira の Network Virtualization Platform と並べて、[[Open vSwitch (OVS)|OVS]] を仮想スイッチとして使うプロプライエタリなネットワーク仮想化システムの例として挙げる。(Source: [[@2021__SystemsApproach__Software-Defined Networks - A Systems Approach - Chapter 8 Network Virtualization]] ch.8 §8.3.2) ## NVP 論文(一次資料)における位置づけ [[@2014__NSDI__Network Virtualization in Multi-tenant Datacenters]](Koponen et al., NSDI 2014)は、著者24名のうち Scott Shenker(ICSI/UC Berkeley)を除く全員が VMware, Inc. 所属として記載されている。この論文は「VMware, Inc.」名義で発表されているが、記述されるプラットフォーム NVP 自体は買収前の [[Nicira]] 時代から開発・展開されてきたものであり、論文発表時点(2014年)にはすでに VMware への統合が完了していたことを示す。数百の本番環境・数万の仮想ネットワークという実績は、Nicira 単独ではなく VMware 傘下での展開を含む数字と考えられる。(Source: [[@2014__NSDI__Network Virtualization in Multi-tenant Datacenters]]) 翌年発表された [[@2015__NSDI__The Design and Implementation of Open vSwitch]](Pfaff et al., NSDI '15、Best Paper 受賞)も同様に、著者11名中10名(筆頭著者 [[Ben Pfaff]] を含む)が VMware, Inc. 所属として記載されており(共著者 [[Keith Amidon]] のみ [[Awake Networks]] 所属)、NVP が転送要素として使う [[Open vSwitch (OVS)|OVS]] の基盤研究も VMware 社内で継続的に行われていたことを裏付ける。(Source: [[@2015__NSDI__The Design and Implementation of Open vSwitch]]) ## ネットワーク自動化の主役交代(第11章) VMware による Nicira 買収が完了し、顧客に NVP の提案を始めたころ、著者らが顧客とのミーティングで最初に投げかける質問は「御社の自動化戦略はどうなっていますか?」であった。ほとんどの顧客にはそんな戦略など存在せず、ポカンとした顔をされるだけだった。Nicira の当初の顧客が並外れて洗練された企業ばかりであり、一般的な企業では考えられない水準ですでに VM のプロビジョニングを自動化していたために、ネットワーク構築における手作業の辛さが際立って見えていたにすぎなかった——NVP の真価が理解されるには、まず前提としてコンピューティングの自動化が完了している必要があった。当時の自動化のためのプラットフォームは驚くほど未熟であり、選択肢は OpenStack か VMware の VRA(vRealize Automation)くらいしかなく、どちらも生半可な覚悟で使えるものではなかった。(Source: [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 11 ネットワーク管理は今やクールな仕事だ]] ch.11 §11.6) VMware とネットワーク仮想化チームにとって幸運だったのは、2013年の分散ファイアウォールの登場によってマイクロセグメンテーションというまったく新しいユースケースへの道が拓かれたことである(第8章「セキュリティ:負の目標」参照)。これは大成功を収めることになったが、その結果、本来の目的だったはずのネットワーク自動化は主役の座を奪われて舞台の袖に追いやられてしまった。(Source: ch.11 §11.6) ## VXLAN 標準化における役割 [[T. Sridhar]](VMware)は、[[wiki/entities/VXLAN|VXLAN]] を定義する RFC 7348(2014年8月)の共著者 8 名の一人であり、後継カプセル化 [[GENEVE]](RFC 8926)の共編者としても言及される。VMware(Nicira 買収後)は Cisco・Arista・Broadcom・Intel・Red Hat・Cumulus Networks とともに VXLAN のマルチベンダー標準化に加わっていた。(Source: [[@2014__RFC__Virtual eXtensible Local Area Network (VXLAN) - A Framework for Overlaying Virtualized Layer 2 Networks over Layer 3 Networks]]) ## 関連 - [[Nicira]] — 2012年に買収した企業。NSXの源流 - [[Martin Casado]] — Nicira の共同創業者・CTO - [[ソフトウェア定義ネットワーク]] / [[ネットワーク仮想化]] / [[ネットワーク自動化]] - [[Open vSwitch (OVS)]] — NSXが仮想スイッチとして使うOVS - [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 5 SDN:ソフトウェア定義ネットワーク]] - [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 11 ネットワーク管理は今やクールな仕事だ]] - [[@2021__SystemsApproach__Software-Defined Networks - A Systems Approach - Chapter 8 Network Virtualization]] - [[@2014__NSDI__Network Virtualization in Multi-tenant Datacenters]] - [[@2015__NSDI__The Design and Implementation of Open vSwitch]] ## 出典 - [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 5 SDN:ソフトウェア定義ネットワーク]](ch.5 §5.2, §5.4、Nicira買収とNSXの展開) - [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 11 ネットワーク管理は今やクールな仕事だ]](ch.11 §11.6、ネットワーク自動化からマイクロセグメンテーションへの主役交代) - Peterson, Cascone, O'Connor, Vachuska, and Davie, *Software-Defined Networks: A Systems Approach*, 2021, Chapter 8: Network Virtualization, §8.3.2. https://sdn.systemsapproach.org/netvirt.html - [[@2014__NSDI__Network Virtualization in Multi-tenant Datacenters]](著者所属としてのVMware, Inc.) - [[@2015__NSDI__The Design and Implementation of Open vSwitch]](著者11名中10名の所属としてのVMware, Inc.)