# Resilience Engineering: Concepts and Precepts
## 概要
レジリエンスエンジニアリング(resilience engineering)という研究分野の出発点となった論集。Erik Hollnagel・David D. Woods・Nancy G. Leveson の 3 名が編者を務め、2004年10月にスウェーデンの Söderköping で開かれた国際シンポジウムの議論と、参加者がその後に執筆した寄稿からなる。(Source: 本書 Preface)
本書の核となる主張は、安全を「望ましくない事象が起きていない状態」として事後的・受動的に測るのをやめ、「変化と圧力のもとで組織が自らの活動を調整し続ける本質的な能力」として捉え直すことにある。失敗と成功は別々の機序から生じるのではなく、いずれも個人とシステムのレベルにおける遂行のばらつき(performance variability)に由来し、両者を分けるのはシステムがどれだけよく制御されていたかだけである、という見方を全体の前提に置く。
## 書誌情報
- 編者: Erik Hollnagel(Linköping University, Sweden)、David D. Woods(Ohio State University, USA)、Nancy G. Leveson(Massachusetts Institute of Technology, USA)
- 出版社: Ashgate Publishing(2006年)。現在は CRC Press(Taylor & Francis Group)がインプリントを引き継いでいる
- ISBN: 978-0-7546-4641-9(Hardback)/ 978-0-7546-4904-5(Paperback)
- 構成: Preface / Prologue: Resilience Engineering Concepts / Part I: Emergence(第1〜7章)/ Part II: Cases and Processes(第8〜16章)/ Part III: Challenges for a Practice of Resilience Engineering(第17〜21章)/ Epilogue: Resilience Engineering Precepts / Appendix / Bibliography / 索引。全21章
- 成立: 2004年10月にスウェーデン Söderköping で開催されたシンポジウム。短い発表を挟みながら長時間の議論を重ねる緩やかな構成で運営され、参加者が事後に書き起こした寄稿が各章になった。序文の署名は Linköping, July 2005(Source: 本書 Preface)
- 同時期の周辺動向: 序文は、Santa Fe Institute の頑健性(robustness)研究、高信頼性組織(HRO)研究におけるレジリエンス概念の登場(Sutcliffe & Vogus, 2003)、Highly Optimised Tolerance(HOT)の提案(Carlson & Doyle, 2000, 2002)、欧州の Resilience Alliance、ISCRAM コミュニティを、同種の問題関心が国際的に同時多発した文脈として挙げる(Source: 本書 Preface)
- 章のあいだには、別の執筆者による短い挿話(interlude)が差し挟まれる構成をとる(例: 第1章のあとの Yushi Fujita「Systems are Ever-Changing」)
## 取り込み状況
本 wiki が保持する原本は書籍全体ではなく先頭 41 ページの抜粋であり、Preface・Prologue・第1章(+ Fujita の挿話)・第2章前半(印字 p.28 で文中切断)だけを含む。したがって wiki 化したのは **Prologue と第1章の 2 枚のみ**である。第2章以降は原本が揃った時点で同じ slug に増分追加する。
## 構成と主要テーマ
### Prologue
編者のうち Woods と Hollnagel の 2 名が、分野全体の問題設定を提示する導入。
→ [[@2006__Ashgate__Resilience Engineering - Prologue Resilience Engineering Concepts]] — 安全研究・実務が後知恵に支配されてきたことを論じ、人間を信頼できないコンポーネントとみなす事後対応型の「エラー計数」パラダイムから、人間の適応能力を安全の源泉とみなす先回り型のレジリエンスエンジニアリングへの転換を提示する。
### Part I: Emergence(第1〜7章)
レジリエンスという概念がなぜ必要になったのかを、既存の安全観の限界から説き起こす部。
→ [[@2006__Ashgate__Resilience Engineering - Chapter 1 Resilience – the Challenge of the Unstable]] — 事故モデルを単純線形(ドミノ)・複雑線形(スイスチーズ)・非線形システミックの 3 世代に整理し、それぞれに対応するリスク評価手法(イベントツリー / フォールトツリー / 機能共鳴)を突き合わせたうえで、レジリエンスを動的安定性の維持・回復能力として再定義する。章末には Yushi Fujita の挿話「Systems are Ever-Changing」を併載する。
## 影響と位置づけ
Prologue と第 1 章は、それぞれ別の角度から同じ転換を要求している。Prologue は「誰が安全を作っているのか」を問い直し、失敗の計数から適応能力の理解へと分析対象を移すよう求める。第 1 章は「何を事故とみなすか」を問い直し、コンポーネントの故障モードの追跡から機能の同時発生(concurrence)の記述へと手法を移すよう求める。両者を並べると、レジリエンスエンジニアリングが安全観の変更(価値としての安全)と方法論の変更(システミックな事故モデル)を同時に要求する枠組みであることが見て取れる。(Source: [[@2006__Ashgate__Resilience Engineering - Prologue Resilience Engineering Concepts]], [[@2006__Ashgate__Resilience Engineering - Chapter 1 Resilience – the Challenge of the Unstable]])
本書の各章のあいだに別の執筆者による短い挿話を挟む構成は、単一の定義に収斂させるのでなく、複数の視点を並置したまま分野を立ち上げようとする編集方針を反映している。第 1 章のあとの Fujita「Systems are Ever-Changing」がその最初の例で、システムが不可避に変化し続ける性質を Hollnagel の議論とは別の角度から補う。
## 関連
- 概念: [[レジリエンスエンジニアリング]] / [[事故モデル]] / [[ヒンドサイトバイアス]] / [[複雑システム障害論]] / [[人的要因]] / [[トレードオフ意思決定]]
- 実体: [[Erik Hollnagel]] / [[David D. Woods]] / [[Nancy G. Leveson]] / [[Yushi Fujita]]
## 出典
- Hollnagel, E., Woods, D. D., & Leveson, N. (Eds.), *Resilience Engineering: Concepts and Precepts*, Ashgate Publishing, 2006.
- 原本: `.raw/books/resilience-engineering-concepts-and-precepts/`(先頭41ページの抜粋)