# QM9
## 概要
QM9は、小型有機分子の構造と量子化学特性を収録した公開データセットである。水素、炭素、窒素、酸素、フッ素からなり、最大9個の重原子を持つ約13.4万分子を含む。各分子について、DFTで求めた低エネルギー構造と複数の分子特性が提供される。[[メッセージパッシングニューラルネットワーク]]をはじめとする分子グラフモデルの代表的な回帰ベンチマークである。(Source: [[@2026__30papers__Neural Message Passing for Quantum Chemistry]])
## 収録特性
Gilmer et al. (2017) は13特性を次の4群に分けた。
- **結合の強さ**: 0 Kと室温での原子化エネルギー、室温の原子化エンタルピー、自由エネルギー
- **分子振動**: 最高基本振動周波数、ゼロ点振動エネルギー
- **電子状態**: HOMO、LUMO、電子エネルギーギャップ
- **電子分布**: 電子空間広がり、双極子モーメント、静的分極率
- **熱容量**: 室温の熱容量
(Source: [[@2026__30papers__Neural Message Passing for Quantum Chemistry]])
## MPNN論文での使用
論文は前処理後の130,462分子を用い、10,000分子を検証、10,000分子をテスト、残りを訓練へ無作為に割り当てた。各特性を平均0・分散1へ正規化し、平均二乗誤差で訓練、平均絶対誤差で評価した。評価値は平均絶対誤差を特性ごとの化学精度閾値で割った誤差比で、1未満を化学精度への到達とした。(Source: [[@2026__30papers__Neural Message Passing for Quantum Chemistry]])
最良のMPNN単一モデルは13特性すべてで当時の比較対象を上回り、11特性で誤差比1未満となった。距離と水素原子の明示化が性能へ大きく寄与し、空間距離なしでは平均誤差比2.57、距離ありで0.98、さらに水素を明示すると0.68だった。(Source: [[@2026__30papers__Neural Message Passing for Quantum Chemistry]])
## 解釈上の注意
教師ラベルは自然の真値ではなくDFTによる近似値である。したがって「化学精度へ到達した」とは、化学分野の精度閾値よりDFTラベルとの差が小さいことを意味し、実験で測定した自然の真値に対する同精度を保証しない。(Source: [[@2026__30papers__Neural Message Passing for Quantum Chemistry]])
収録分子は最大9重原子に限られるため、QM9内の無作為分割で高精度でも、大きな分子や異なる原子組成への外挿性能は直接分からない。また一つの低エネルギー立体配座の空間情報を使うモデルは、立体配座が未知または複数ある課題へそのまま適用できるとは限らない。(Source: [[@2026__30papers__Neural Message Passing for Quantum Chemistry]])
## 関連
- 原典利用例: [[@2026__30papers__Neural Message Passing for Quantum Chemistry]]
- モデル枠組み: [[メッセージパッシングニューラルネットワーク]]
- 上位概念: [[グラフニューラルネットワーク]]