# Open Networking Foundation
Open Networking Foundation(ONF)は、SDN(ソフトウェア定義ネットワーク)が生まれて間もない時期に、その活性化のために Nick McKeown と Scott Shenker によって設立された非営利組織である。姉妹組織の ON.Lab とは役割が分かれており、ONF は OpenFlow などの標準策定を、ON.Lab は ONOS(Open Network Operating System)などのオープンソースプラットフォーム開発を担っていた。両者は 2017 年に ONF として統合された。(Source: [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 3 オープンソースソフトウェア]] §3.1)
ONF のミッションはネットワーク業界を垂直統合型から水平統合型の市場へ変容させることであり、SDN はその手段の一つに過ぎないと位置づけられる。ONF には独自のベンダー中立なエンジニアリングチームがあり、いかなる商用製品にも忠誠を誓っていなかった(類例としては Mozilla が挙げられる)。守るべき既存のビジネスモデルが存在しないことが、SDNの原則(オープンソースソフトウェア、ベンダーロックインからの解放、汎用ハードウェア、クラウド的な手法)を可能な限り推し進める自由を支えた。(Source: [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 3 オープンソースソフトウェア]] §3.2)
ONF の活動には、ネットワーク事業者(AT&T、Google、Comcast、Verizon、NTT、DT、SKT、China Unicom、Turk Telecom)とネットワークベンダー(Intel、NEC、Ciena、Radisys、Netsia、Cisco、Ericsson、Nokia、Huawei、Juniper、Edgecore、Adtran)が長年にわたり参画した。中でも Domain 2.0 を推進した AT&T と、クラウド技術を提唱した Google が議論の方向を主導し、Urs Hölzle(Google)と Andre Fuetsch(AT&T)が ONF 理事会の共同議長を務めた。終盤には DARPA による大きな投資もあり、これが ONF の技術の集大成とされる Aether の構築を後押しした。(Source: [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 3 オープンソースソフトウェア]] §3.1)
ONF の活動停止に伴い、その遺産は Linux Foundation の管理下に移る 3 プロジェクト([[P4]] プログラミング言語、LF Broadband、[[Aether]])に象徴される。著者 Larry Peterson は、ONF での経験から「オープンソースの武器化」(ベンダー主導のOSSプロジェクト立ち上げによる変更の小出し戦略への対抗)や、既存のビジネスモデルへの過度な配慮が未成熟な解決策に制約を課す「ベン図エンジニアリング」といった教訓を得た。(Source: [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 3 オープンソースソフトウェア]] §3.1, §3.2)
ONF は [[OpenFlow]] コミュニティの活動拠点として設立され、標準策定を担った。ONF 自身も、フラッグシッププロジェクトの Aether において OpenFlow から [[P4]] ベースの SDN へとフォーカスを移しつつある。この技術的な世代交代は、OpenFlow の仕様がバージョンを重ねるたびにベンダー最適化機能を取り込んで複雑化し、当初のハードウェア抽象化レイヤーという理想から外れていった問題に対する、P4/P4Runtime による部分的な回答という文脈で理解できる。(Source: [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 5 SDN:ソフトウェア定義ネットワーク]] ch.5 §5.2)
*Software-Defined Networks: A Systems Approach* の Preface は、ONF を「エンドツーエンドのソリューションに統合できるソフトウェアコンポーネント群を積極的に実装する」組織と位置づけ、コモディティハードウェア(ベアメタルスイッチなど)の仕様策定と認証を担う [[Open Compute Project]] (OCP) と対にして、本書がオープンソースを活用する上での 2 本柱として紹介する。ONF のソフトウェア面での役割は本書全体の編成軸(プロトコルスタックではなく SDN のソフトウェアスタックに沿った構成)とも対応する。(Source: [[@2021__SystemsApproach__Software-Defined Networks - A Systems Approach - Preface]])
## 設立の経緯と姉妹組織(SDN本 第2章)
*Software-Defined Networks: A Systems Approach* 第2章のコラム「Bringing SDN to Life」は、[[Nicira]] の 2007 年創業と並んで、SDN を理論から実践へ押し進めた出来事として ONF の設立を挙げる。ONF は McKeown と Shenker によって非営利組織として設立され、ネットワークの分解(disaggregation)を推進する役割を担い、その一環として OpenFlow 標準の開発を担当した。同時に姉妹組織として、オープンソースの SDN ソリューション・プラットフォームを開発する Open Networking Laboratory(ON.Lab)と、SDN に関心を持つ研究者・実務者を集めるカンファレンスプラットフォーム Open Networking Summit(ONS)が創設された。両者はその後合併し、統合後の組織が本書全体で取り上げるオープンソースソフトウェアの開発に注力してきたとされる。(Source: [[@2021__SystemsApproach__Software-Defined Networks - A Systems Approach - Chapter 2 Use Cases]] §2.1)
> [!contradiction] ONF と ON.Lab の合併年
> [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 3 オープンソースソフトウェア]] は「両者は 2017 年に ONF として統合された」と記す一方、[[@2021__SystemsApproach__Software-Defined Networks - A Systems Approach - Chapter 2 Use Cases]] のコラム「Bringing SDN to Life」は "In 2018, ONF and ON.Lab merged" と記す。合併の事実そのもの(ONF と ON.Lab が統合され、統合後の組織が OSS 開発に注力するようになったこと)は両ソースで一致するが、統合年が 2017 年か 2018 年かで食い違っている。本 wiki ではどちらが正確かを判定する追加情報を持たない。
## Stratumの開発元として(第5章)
*Software-Defined Networks: A Systems Approach* 第5章は、[[Stratum]](Thin Switch OS)を「ONF のオープンソースプロジェクトであり、Google が提供した本番品質のコードを出発点とする」ものとして紹介する。ONF がハードウェア側の標準化団体である[[Open Compute Project]]と対をなしてソフトウェア面を担うという Preface の構図(上記)は、Stratum という具体的なソフトウェア成果物によって裏付けられる。(Source: [[@2021__SystemsApproach__Software-Defined Networks - A Systems Approach - Chapter 5 Switch OS]] ch.5 §5.1)
## アクセスネットワーク関連プロジェクト(第9章)
*Software-Defined Networks: A Systems Approach* 第9章のFurther Readingは、ONFが主導するアクセスネットワーク関連の3プロジェクトを挙げる。SD-RAN Project(2020年8月)はSD-RANの取り組みそのものを指し、SD-Core Project(2021年)は5G Mobile Coreのソフトウェア実装を指す。両者は[[Aether]]が組み合わせるSD-Fabric・SD-RAN・SD-Coreのうち後者2つに対応し、ONFがPON(SD-PON/SEBA)・RAN(SD-RAN)・Mobile Core(SD-Core)というアクセスネットワークの主要構成要素すべてにわたってオープンソースプロジェクトを展開していることを示す。(Source: [[@2021__SystemsApproach__Software-Defined Networks - A Systems Approach - Chapter 9 Access Networks]] ch.9 §9.3, §9.4 Further Reading)
## PINSの共同開発(『実践SONiC入門』第2章)
ONFは、[[SONiC]]をSDN環境で活用するための[[PINS (P4 Integrated Network Stack)|PINS]](P4 Integrated Network Stack)機能を[[Google]]・[[Microsoft]]・Intelと共同開発した。Googleが自社のSDNユースケース(分散型SDNコントローラー「Orion」によるJupyter/B4の制御)にSONiCを組み込むための拡張として位置づけられ、SDNコントローラーからの設定をP4Runtime経由でAPPL_DBに登録しP4OrchでASIC_DBへ変換するアーキテクチャを持つ。本ページが既に記録する「ONFはStratumを開発し、SONiCとの統合(PINS)をSAI章(第5章)で扱う」という*Software-Defined Networks: A Systems Approach*側の記述を、『実践SONiC入門』はSONiC側の視点(SDNコントローラーとの連携・具体的なデータフロー)から補強する一次資料である。(Source: [[@2025__Gihyo__実践SONiC入門 - Chapter 2 SONiCの機能とユースケース]] ch.2 §2.2.5)
## 関連
- [[PINS (P4 Integrated Network Stack)]] — ONF・Google・Microsoft・Intelが共同開発したSONiC-SDN統合機能
- [[Open Compute Project]] — コモディティハードウェアの仕様策定・認証を担う姉妹的存在(OCP と ONF がハードウェア/ソフトウェアで役割分担)
- [[Aether]] — ONF の技術の集大成として Linux Foundation の資金提供下で継続するプロジェクト
- [[Linux Foundation]] — ONF の遺産プロジェクトの管理移管先
- [[OpenFlow]] — ONF が標準策定を担った最初の SDN プロトコル
- [[P4]] — Aether がフォーカスを移しつつある後継技術
- [[Stratum]] — ONF が開発したThin Switch OS
- [[Nick McKeown]] / [[Scott Shenker]] — 共同設立者
- [[ソフトウェア定義アクセスネットワーク]] — SD-PON・SD-RAN・SD-Coreを含むアクセスネットワーク関連プロジェクト群
## 出典
- [[@2025__Gihyo__実践SONiC入門 - Chapter 2 SONiCの機能とユースケース]](§2.2.5、PINSの共同開発とSONiC-SDN統合)
- [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 3 オープンソースソフトウェア]](§3.1, §3.2)
- [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 5 SDN:ソフトウェア定義ネットワーク]](ch.5 §5.2、Aether の OpenFlow → P4 への移行)
- Peterson, Cascone, O'Connor, Vachuska, and Davie, *Software-Defined Networks: A Systems Approach*, 2021, Preface. https://sdn.systemsapproach.org/preface.html
- Peterson, Cascone, O'Connor, Vachuska, and Davie, *Software-Defined Networks: A Systems Approach*, 2021, Chapter 2: Use Cases, §2.1「Bringing SDN to Life」コラム. https://sdn.systemsapproach.org/uses.html
- Peterson, Cascone, O'Connor, Vachuska, and Davie, *Software-Defined Networks: A Systems Approach*, 2021, Chapter 5: Switch OS, §5.1. https://sdn.systemsapproach.org/stratum.html
- Peterson, Cascone, O'Connor, Vachuska, and Davie, *Software-Defined Networks: A Systems Approach*, 2021, Chapter 9: Access Networks, §9.3, §9.4. https://sdn.systemsapproach.org/access.html