# NSA ## 概要 NSA(National Security Agency)は米国の信号諜報(signals intelligence)機関で、Five Eyes(米・英・加・豪・NZ)の枠組みの中心を担う。Edward Snowden の内部告発(2013)により、Prism(Gmail 等のデータへの FISA 令状に基づくアクセス。ただし非米国人には裁判所の令状すら不要)、Xkeyscore(収集済みデータを横断検索する分散データベース)、Quantum(ブラウザを標的にした動的な通信傍受)、Bullrun(暗号弱体化プログラム。GCHQ 版は Edgehill)といった収集・攻撃手段が明るみに出た。NIST の Dual_EC_DRBG 標準へのバックドア混入は Bullrun の一環とされる。(Source: [[@2020__Wiley__Security Engineering 3e - Chapter 2 Who Is the Opponent?]] §2.2.1.1–§2.2.1.6) NSA 長官は米サイバー軍(US Cyber Command)も兼任し、2009年の同軍創設以降の攻勢的サイバー作戦の中心となってきた。代表例が、イランのナタンズ濃縮施設の遠心分離機を物理的に損傷させた Stuxnet(米・イスラエル共同開発とされる)である。2016〜17年には Shadow Brokers(ロシア軍参謀本部情報総局 GRU と目される)が NSA のマルウェアツール一式(Tailored Access Operations チームが使用)を流出させ、これが後に NotPetya(ロシア)・Wannacry(北朝鮮)の技術基盤(EternalBlue 脆弱性)として転用された。(Source: [[@2020__Wiley__Security Engineering 3e - Chapter 2 Who Is the Opponent?]] §2.2.1.9, §2.2.1.11) 第26章では、NSAが攻撃(信号諜報・脆弱性の利用)と防御(脆弱性のベンダーへの報告)の両方を担う組織であることに起因する「等価性問題(equities issue)」が扱われる。オバマ政権のNSAレビューグループは発見した脆弱性を原則としてベンダーに報告するよう勧告したが、NSAはBullrun(暗号弱体化プログラム、年間予算1億ドル)のもとで脆弱性の備蓄を継続し、SSLのHeartbleedバグを独立発見・修正される2年前から悪用していたことが2014年に報じられた。DES(1970年代)の56ビット鍵長は、NSAが鍵探索能力を実際には持たないにもかかわらず「持っている」との印象を与えて他国政府の採用を妨げる意図的な弱体化だったことも本章で明かされる。CDR(通話データ記録)の一括収集を巡っては、2006年にNew York Timesが2002年のブッシュ政権による令状なし国内盗聴の秘密命令を、USA Todayが3大電話会社からの通話記録一括取得をそれぞれ報じ、2013年のSnowden暴露(Boundless Informantの可視化ツール、30日間で30億件の記録)でその全貌が明らかになった。米国国家諜報長官室(DNI)は2015年のFreedom Act以降、年次透明性報告書を公表しており、2017年には5億件超のCDRがコンタクトチェイニングにより自動解析されたと報告している。(Source: [[@2020__Wiley__Security Engineering 3e - Chapter 26 Surveillance or Privacy?]] §26.2.1-§26.2.2, §26.2.6, §26.2.7.2) ## 関連 - 章: [[@2020__Wiley__Security Engineering 3e - Chapter 2 Who Is the Opponent?]] / [[@2020__Wiley__Security Engineering 3e - Chapter 26 Surveillance or Privacy?]] - 実体: [[Edward Snowden]] / [[GCHQ]] - 概念: [[敵対者の類型論]] / [[権力集中リスク]] / [[国家監視の歴史と法制度]] / [[暗号戦争]] ## 出典 - Ross Anderson, *Security Engineering: A Guide to Building Dependable Distributed Systems*, 3rd Edition, John Wiley & Sons, 2020, Chapter 2, §2.2.1–§2.2.1.12. - Ross Anderson, *Security Engineering: A Guide to Building Dependable Distributed Systems*, 3rd Edition, John Wiley & Sons, 2020, Chapter 26, §26.2.1-§26.2.2, §26.2.6, §26.2.7.2.