# Michael Polanyi
ハンガリー出身の科学者であり哲学者。「我々は語れる以上のことを知っている(We can know more than we can tell)」と表現し、人が持つ暗黙知(明示的に言語化できない知識)の存在を指摘した。この指摘は『暗黙知の次元 - 言語から非言語へ』(紀伊國屋書店、1980)にまとめられている。(Source: [[@2022__Gihyo__ディープラーニングを支える技術 - Chapter 1 ディープラーニングと人工知能]])
## wikiでの位置づけ
『ディープラーニングを支える技術』第1章は、Polanyiのこの言葉を「ポランニー(ポラニー)のパラドックス」と呼び、人工知能の実現が難しい根本理由の一つとして位置づける。人は日常生活の膨大かつ高度な情報処理を無意識下でこなしており、その実現方法を自分自身でも意識できないため、コンピュータ上でどう再現すればよいかがわからない、という論理展開の起点になっている。(Source: [[@2022__Gihyo__ディープラーニングを支える技術 - Chapter 1 ディープラーニングと人工知能]])
『What Engineers Know and How They Know It』第7章は、Polanyi の別の概念である**動作原理(operational principle)**を、工学設計知識の基本設計概念カテゴリの中核に据える。動作原理とは「デバイスの特徴的な部分が、目的を達成する総体的な操作へどう組み合わさって各自の機能を果たすか」、つまりそのデバイスがどう働くかについての知識であり、あらゆるデバイスが持つ。Vincenti はこれを Polanyi の著作から6回にわたって引用し、動作原理が工学と科学を分かつ重要な論点だと位置づける──物理法則は動作原理が考案された後にそれを分析するのに使えるが、動作原理そのものを含意したり与えたりはしない、という Polanyi の主張(「機械を対象として完全に(科学的に)知ることは、それが機械としてどう働くかについては何も教えてくれない」)がその根拠である。この用法は暗黙知(tacit knowledge)とは異なる Polanyi の概念だが、いずれも「言語化・形式化しきれない知の次元」を扱う点で通底する。Polanyi はさらに、科学的原理に基づきながらも工学に固有の目的で純粋科学同様に洗練されうる知識を「体系的技術(systematic technology)」と呼び、これは第7章の理論的道具カテゴリの一部を占める。(Source: [[@1990__JohnsHopkins__What Engineers Know and How They Know It - Chapter 7 The Anatomy of Engineering Design Knowledge]], p.208-209, 214)
> [!note] 本ページは当初(2026-08-15)、深層学習文脈での「ポランニーのパラドックス」(暗黙知)を起点に立ち上げられた。2026-08-16 の第7章 ingest で、同一人物の動作原理(operational principle)という別の概念が工学認識論の文脈で加わった。暗黙知の詳細は [[暗黙知]]、動作原理の詳細は [[動作原理]] を参照。
Paul Nightingale「What is Technology? Six Definitions and Two Pathologies」(2014)は、Vincenti を介さず Polanyi の原著(1958年『Personal Knowledge』、1966年『The Tacit Dimension』等)に直接遡り、暗黙知を focal awareness / subsidiary awareness の区別や indwelling という認識論的メカニズムとして紹介するとともに、動作原理を「phenomena x can be generated using y」という定式で科学と技術の違いを説明する理論的基礎に据える。Vincenti の実務的な引用と合わせ、Polanyi の思想が本 vault に独立した2つの経路(工学設計論・技術の哲学)から流れ込んでいる。(Source: [[@2014__SPRU__What is Technology Six Definitions and Two Pathologies]])
## 関連
- 概念: [[ポランニーのパラドックス]] / [[動作原理]] / [[暗黙知]] / [[技術の定義]]
- 書籍: [[What Engineers Know and How They Know It]]
- 章: [[@2022__Gihyo__ディープラーニングを支える技術 - Chapter 1 ディープラーニングと人工知能]] / [[@1990__JohnsHopkins__What Engineers Know and How They Know It - Chapter 7 The Anatomy of Engineering Design Knowledge]]
- ソース: [[@2014__SPRU__What is Technology Six Definitions and Two Pathologies]]
## 出典
- 岡野原大輔, 『ディープラーニングを支える技術』, 技術評論社, 2022, 第1章 §1.1.
- Michael Polanyi, 『暗黙知の次元 - 言語から非言語へ』, 紀伊國屋書店, 1980.
- Walter G. Vincenti, *What Engineers Know and How They Know It*, The Johns Hopkins University Press, 1990, Chapter 7, pp. 208-209, 214.
- Paul Nightingale, "What is Technology? Six Definitions and Two Pathologies", SPRU Working Paper Series, SWPS 2014-19, October 2014, §7-8.