# Martin Casado
Martin Casado は [[Nicira]] の共同創業者・CTO であり、ネットワーク仮想化という課題に SDN の原則を適用することに精力を傾けた。Bruce Davie は「職場でのひどい一日」をきっかけに友人の勧めで Casado とアポイントを取り、その数か月後には Nicira で働くことになった。Casado は、仮想化によって「物理法則」がどう変わるかをよく語っており、ネットワーク仮想化がマイクロセグメンテーションやゼロトラストネットワーキングのような、物理ネットワークには存在しなかった新機能を生み出す様を、映画『インセプション』(仮想ネットワークの中でさらに仮想ネットワークを動かす入れ子構造)になぞらえていた。(Source: [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 5 SDN:ソフトウェア定義ネットワーク]] ch.5 §5.1, §5.4)
Casado は Tom Corn(当時 VMware Security Business Unit の SVP)と共に、2014年ごろから「ゴルディロックスゾーン」という比喩を用いて、分散ファイアウォールなどのセキュリティ機能はゲスト OS 内部に入り込むことなく、しかし可能な限りアプリケーションに近い場所に配置すべきだと訴えていた。この比喩は後にサービスメッシュのサイドカー配置の説明にも転用されている(第5章 §5.7)。(Source: ch.5 §5.7)
## NVP 論文の共著者としての一次資料(2014年、NSDI)
Casado は [[@2014__NSDI__Network Virtualization in Multi-tenant Datacenters]](Teemu Koponen 筆頭、NSDI 2014)の共著者24名の一人であり、VMware(買収後の Nicira)所属として名を連ねる。この論文は、Nicira/VMware が数百の本番環境に展開してきた [[Network Virtualization Platform (NVP)|NVP]] の設計・実装・評価を報告する一次資料であり、これまで本 wiki が二次資料(『ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること』第5章・第11章、[[@2021__SystemsApproach__Software-Defined Networks - A Systems Approach - Chapter 2 Use Cases]] §2.1)を通じて要約してきた「コントロールプレーンの分離と集中化」というアイデアの技術的詳細(宣言的言語 nlog による増分計算、論理/物理二層のコントローラクラスタ)を初めて具体的に裏付ける。(Source: [[@2014__NSDI__Network Virtualization in Multi-tenant Datacenters]])
## Open vSwitch論文の共著者としての一次資料(2015年、NSDI Best Paper)
Casado は [[@2015__NSDI__The Design and Implementation of Open vSwitch]](Ben Pfaff 筆頭、NSDI '15、Best Paper 受賞)の共著者11名の一人でもあり、VMware, Inc. 所属として名を連ねる。この論文は NVP のデータプレーンが依拠する [[Open vSwitch (OVS)|OVS]] のタプル空間探索パケット分類器と2層フローキャッシュの詳細設計を報告しており、Casado が NVP 論文で報告した「論理的中央制御」の実装が、実際にはどのような転送要素の性能工学に支えられていたかを示す一次資料である。(Source: [[@2015__NSDI__The Design and Implementation of Open vSwitch]])
## Scott Shenkerの講演から数日後の出会い(第11章)
Bruce Davieが記す出会いの経緯によれば、2011年にスタンフォード大学で行われた [[Scott Shenker]] の講演 "The Future of Networking, and the Past of Protocols" のわずか数日後、Bruce は Martin Casado と面会する機会に恵まれた。Martin・Scott・[[Nick McKeown]] の三人が [[Nicira]] を創業していたのはその数年前のことだったが、当時の Bruce は同社について「OpenFlow の標準化や実装に熱心に取り組んでいる」という程度の認識しかなかった。それから数週間、Nicira について深く知るにつれ、当初の単なる好奇心は次第に「自分もそこで働いてみたい」という真剣な思いへと変わっていった。2012年1月、Bruce は実際に Nicira の一員となり、ちょうど同社がステルスモードを脱し NVP(Network Virtualization Platform)を世に発表するタイミングだった。(Source: [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 11 ネットワーク管理は今やクールな仕事だ]] ch.11 §11.6)
その後 [[Andreessen Horowitz]](a16z)に移り、[[@2025__OSR__Cloud Infrastructure Management in the Age of AI Agents]] の共著者として、[[University of Michigan]] / [[University of California, Berkeley]] の学術陣に VC 側から加わる唯一の産業共著者となった。同論文の参照 [27] に、自律 LLM アプリケーション向けランタイム **GoEx**(Patil ほか, 2024)の共著者として名を連ねる。GoEx は本論文が fault tolerance の rollback 機構を論じる文脈で引かれる(失敗した変更の巻き戻し)。
## 関連
- ソース: [[@2025__OSR__Cloud Infrastructure Management in the Age of AI Agents]] / [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 5 SDN:ソフトウェア定義ネットワーク]] / [[@2026__LambdaNote__ネットワークシステムについて語るときに我々の語ること - Chapter 11 ネットワーク管理は今やクールな仕事だ]] / [[@2014__NSDI__Network Virtualization in Multi-tenant Datacenters]] / [[@2015__NSDI__The Design and Implementation of Open vSwitch]]
- 所属: [[Andreessen Horowitz]] / [[Nicira]]
- 共著者: [[Ang Chen]] / [[Zhenning Yang]] / [[Yiming Qiu]] / [[Scott Shenker]] / [[Nick McKeown]] / [[Teemu Koponen]] / [[Ben Pfaff]]
- 概念: [[ソフトウェア定義ネットワーク]] / [[ネットワーク仮想化]] / [[サービスメッシュ]] / [[ネットワーク自動化]] / [[パケット分類]]
- システム: [[Network Virtualization Platform (NVP)]] / [[Open vSwitch (OVS)]]