# Mark Burgess 理論物理学の博士号を持ち、構成管理ツール Chef/Puppet などの前身である CFEngine の作者。コンピュータ免疫学やプロミス理論を提唱した。1999 年の著書 "Principles of Network and System Administration" で「システム管理はヒューマンコンピュータエンジニアリングの一形態」と主張したが、レビュアーから「まだエンジニアリングと呼べる段階ではない」と強く否定された。USENIX LISA 1998 では "Computer Immunology" を発表し、システム管理の学術的研究の先駆者となった。 [[@1998__LISA__Computer Immunology]](USENIX LISA '98、当時の所属表記は "Mark Burgess, Oslo College" / "Centre of Science and Technology, Oslo College, Norway")では、生物・社会システムの自己治癒プロセスとの類推から計算機システムに免疫系を組み込む構想を提示し、自身が開発した [[cfengine]] を「収束的意味論(converging semantics)を持つリアクタ」として計算機免疫系の中核部品(貪食細胞・修復ドローン)に位置づけた。自己/非自己モデルの限界を指摘し、Matzinger の危険モデル(danger model、細胞の異常な死のシグナルに反応する)を計算機のシグナル(SIGCHLD=apoptosis、SIGSEGV等=necrosis)に対応づけて提案している。(Source: [[@1998__LISA__Computer Immunology]]) [[@2000__LISA__Theoretical System Administration]](USENIX LISA 2000)では、当時の所属である Oslo University College の准教授(物理学・計算機科学)として、CFEngine の convergence(収束)概念を一般化し、統計力学とゲーム理論を用いてシステム管理ポリシーを評価する理論的枠組みを提案した。ディスク容量管理を題材に、quota 戦略・自動整理戦略・免疫モデル型戦略をペイオフ行列で定量比較し、quota 戦略の非効率性を示している。(Source: [[@2000__LISA__Theoretical System Administration]]) 同年 3 月には arXiv プレプリント [[@2000__arXiv__On the theory of system administration]](cs/0003075)を投稿しており、LISA 2000 版に先行して理想状態の公理的導出(Theorem 1: 十分に完全なポリシーは代表的な平均理想状態を含意する)と、理想状態からの偏差を n 次元格子上の経路数 H(d) = (Σd_j)!/Π(d_k!) で定量化する組合せ論的モデルを展開している。両論文はディスク整理ゲーム(quota vs 閾値自動整理 vs 免疫モデル)のペイオフ行列という同じ数理装置を共有しており、実質的に同一研究の異なる提示形態(プレプリント→査読版)と読める。(Source: [[@2000__arXiv__On the theory of system administration]]) 2005 年には [[Kyrre Begnum]] との共著 [[@2005__Machine Learning__Principle Components and Importance Ranking of Distributed Anomalies]](*Machine Learning* 誌、[[Oslo University College]] Faculty of Engineering 在籍時)で、CFEngine の分散異常検知(host normality)に主成分分析(PCA)と固有ベクトル中心性(Eigenvector Centrality)を適用し、集中型異常検知に対する分散型の統計的優位性を実証的に検証した(結果は否定的で、37 ホストの実クラスタからは集中分析の明確な優位性を支持する証拠は得られなかった)。(Source: [[@2005__Machine Learning__Principle Components and Importance Ranking of Distributed Anomalies]]) 2007 年に CFEngine 社を創業したが、Puppet・Chef との競争の中で会社が構成管理単体の事業へ引き戻され、自身の関心とは異なる方向へ進んだため会社を去った経緯を自身のブログで回顧している。知識管理は論理的分類法(タクソノミー・オントロジー・Topic Maps・RDF/OWL)では代替できない「関係性の構築」であると論じ([[@2023__Medium__The Failure of Knowledge Management]])、また別のブログ記事ではインフラ管理における「タイムスケールの分離」の重要性——観測・是正の速度を問題自身の時間スケールに一致させなければ系が不安定化するという原則(KT境界、"Dynamics always trump semantics")——を提示した([[@2014__markburgess.org__Infrastructure Management Timescales]])。 2002 年の [[@2002__TOCS__Measuring System Normality]](ACM Transactions on Computer Systems Vol. 20 No. 2、[[Harek Haugerud]]・[[Sigmund Straumsnes]]・[[Trond Reitan]]との共著、1999 年の 2 本の研究を短縮・更新したアーカイブ版)では、オスロ大学カレッジとカンザス州立大学のホストのトランザクション時系列(接続数・プロセス数等)を分析し、日次/週次周期を局所標準偏差でスケーリング除去すると揺らぎの分布が定常状態の最大エントロピー分布(Planck 分布)に収束することを実証した。地理的に離れた複数の WWW サーバー間でこの分布の「温度」パラメータが近い値を取ることから、周期と自己相関長の比に支配される不変量の可能性を論じる一方、統計的な状態判定には 1〜2 週間以上のデータを要するため 15 分規模の疑似攻撃は原理的に検知できないと定量的に示した。[[@1998__LISA__Computer Immunology]] の免疫学的アプローチと並ぶ、Burgess のホスト正常性(host normality)研究の統計力学的な柱にあたる。(Source: [[@2002__TOCS__Measuring System Normality]]) ## 出典 - [[@2024__SRE NEXT 2024__工学としてのSRE再訪]] - [[@2000__LISA__Theoretical System Administration]] - [[@2005__Machine Learning__Principle Components and Importance Ranking of Distributed Anomalies]] - [[@2000__arXiv__On the theory of system administration]] - [[@2023__Medium__The Failure of Knowledge Management]] - [[@2014__markburgess.org__Infrastructure Management Timescales]] - [[@1998__LISA__Computer Immunology]] - [[@2002__TOCS__Measuring System Normality]]