# DEFINITY
AT&T の Global Business Communications System(GBCS)部門が提供する PBX(構内交換機、private branch exchange)製品群。企業向けに建物内および公衆電話網への音声サービスを提供する。DEFINITY G3 ラインは80回線程度から数万回線までの規模に対応するモデルを揃える。中央プロセッサは約150万行のソースコードからなり、加えて数百台の分散プロセッサ(回線・トランクなどのインタフェース)が各2,000〜250,000行のプログラムを実行する(Source: [[@1996__McGrawHill__Handbook of Software Reliability Engineering - Chapter 5 The Operational Profile]] §5.7.1)。
## 開発プロセスと SRE
1989年、DEFINITY の開発プロセスは顧客満足の向上を目的に再設計され、「Customer Satisfaction Based Product Development」と呼ばれる手法が確立した。この手法はソフトウェア信頼性工学(SRE)の原則を土台とし、設計チーム・コードインスペクション・開発者テストといった厳格なソフトウェア開発技法、インクリメンタルな開発ライフサイクルモデル、品質要因評価(quality factor assessment)を構成要素とする。以降、この開発プロセスは DEFINITY の全リリースおよび PBX 以外の製品にも適用されている(ch.5 §5.7.2)。
## 運用プロファイルの構築
単一の全体プロファイルではなく、約12の主要業種(銀行・大学・工場など)ごとに顧客モデルを立て、顧客型ごとに独立した運用プロファイルを作成した。各ユーザーの通話利用を implicit プロファイルである call tree で表現し、環境プロファイル(configuration profile、PBX台数・プロセッサ種別・アナログ/デジタル局数などの構成記述)も別途定義した。可能な run type 数は 10^8 のオーダーに達し explicit な列挙は非現実的なため、顧客・構成の選択は使用確率と障害可能性の両方に基づき決定論的に行い、run type の選択のみを call tree の確率に従って乱択する二段階方式を採る(ch.5 §5.7.3〜§5.7.4、詳細は [[運用プロファイル]] を参照)。
## 成果
International Definity プロジェクトでは運用プロファイルの構築に2〜3人年を投資した。品質改善手法全体の統合により、顧客報告問題・保守コストが10分の1に、システムテスト期間が2分の1に、製品導入期間が30%短縮した。導入後最初の2年間、重大なサービス停止はなく、顧客満足度の顕著な改善と積極的な販売努力が相まって売上が10倍に伸びた(ch.5 §5.1)。
第6章「Best Current Practice of SRE」は同じ成果指標(顧客報告問題10分の1・保守コスト10分の1・システムテスト期間2分の1・製品導入期間30%短縮)をAT&T全体のBCP(best current practice)の「成功事例(SRE success story)」として再掲した上で、運用プロファイル駆動テストが有効だった理由を偏在性(パレート性)で説明する: 運用の20%が使用全体の95%を占め、フォールトの20%が故障全体の95%を引き起こしていたため、高使用頻度の20%を先にテストすることで信頼性向上を加速できた(Source: [[@1996__McGrawHill__Handbook of Software Reliability Engineering - Chapter 6 Best Current Practice of SRE]] §6.2.2)。
## 関連
- ソース: [[@1996__McGrawHill__Handbook of Software Reliability Engineering - Chapter 5 The Operational Profile]] / [[@1996__McGrawHill__Handbook of Software Reliability Engineering - Chapter 6 Best Current Practice of SRE]]
- 概念: [[運用プロファイル]]
- 組織: [[AT&T Bell Laboratories]]