# 仕事ではじめる機械学習 ## 概要 『仕事ではじめる機械学習』は、機械学習の入門教材を終えたソフトウェアエンジニアが、機械学習やデータ分析の道具をビジネスに活かすための実践的なカタログである。アルゴリズムの理論的解説は他書に譲り、不確実性が高い機械学習プロジェクトをどのように進めるか、既存システムとどう連携するか、データをどう集めるか、仮説をどう立てて検証するかに焦点を当てる。(Source: [[仕事ではじめる機械学習]] まえがき) 第 2 版では、実務で機械学習を運用し続けるための知識として、継続的トレーニングのための機械学習基盤、施策の効果検証(統計的検定・因果効果推論・A/B テスト)、モデルの解釈という 3 つの主題が加わっている。 ## 書誌情報 - 書名: 仕事ではじめる機械学習 第2版 - 著者: [[有賀康顕]](1〜6 章)、[[中山心太]](8〜11 章)、[[西林孝]](7・12 章) - 出版社: 株式会社オライリー・ジャパン(発売元: 株式会社オーム社) - 初版第 1 刷: 2018 年 1 月 15 日 / 第 2 版第 1 刷: 2021 年 4 月 21 日 - ISBN: 978-4-87311-947-2 - 全 352 ページ、全 12 章。第 I 部(1〜8 章: 機械学習プロジェクトに必要な知識)と第 II 部(9〜12 章: ケーススタディ)の 2 部構成 - サポートリポジトリ(Jupyter Notebook): https://github.com/oreilly-japan/ml-at-work - 表紙の動物はオオアルマジロ(Giant armadillo) ## 構成と主要テーマ ### 第 I 部: 機械学習プロジェクトに必要な知識(1〜8 章) 実務で機械学習を使ううえでの基本的な知識を、プロジェクトの立ち上げから運用・効果検証・説明までの順に並べる。 → [[@2021__OReillyJapan__仕事ではじめる機械学習 - Chapter 1 機械学習プロジェクトのはじめ方]] — 機械学習プロジェクトは課題設定・道具選び・モデル作成・サービス組み込みの 4 段階 10 ステップで進み、MVP による仮説検証と「機械学習を使わない選択肢」の検討を最優先し、機械学習特有の技術的負債には 5 つの対処法で臨む → [[@2021__OReillyJapan__仕事ではじめる機械学習 - Chapter 2 機械学習で何ができる?]] — 分類・回帰・クラスタリング・次元削減というタスク分類のもと、scikit-learn のフローチャートによる選択軸と、同一データへの決定境界可視化による横並び比較でアルゴリズムを整理する → [[@2021__OReillyJapan__仕事ではじめる機械学習 - Chapter 3 学習結果を評価するには]] — 分類(適合率・再現率・F 値・ROC/AUC)と回帰(RMSE・決定係数)のオフライン評価指標を解説したうえで、それだけでは不十分でビジネス指標を確認する A/B テストが別途要ると述べる → [[@2021__OReillyJapan__仕事ではじめる機械学習 - Chapter 4 システムに機械学習を組み込む]] — 学習・予測のタイミングと予測結果のサービング方式の組み合わせを開発自由度対レイテンシのトレードオフで選び、教師データの制約を見越したログ設計をあらかじめ行う → [[@2021__OReillyJapan__仕事ではじめる機械学習 - Chapter 5 学習のためのリソースを収集する]] — 教師データの取得手段を公開データセット・自作・同僚への依頼・クラウドソーシング・サービスへの組み込みの 5 通りに整理し、着手コスト・品質担保・スケールのトレードオフで選ばせる → [[@2021__OReillyJapan__仕事ではじめる機械学習 - Chapter 6 継続的トレーニングをするための機械学習基盤]] — 長期運用のための継続的トレーニングと ML Ops を扱い、機械学習基盤を共通実験環境・予測サービング・パイプライン化・継続的トレーニングの 4 ステップに整理する → [[@2021__OReillyJapan__仕事ではじめる機械学習 - Chapter 7 効果検証:機械学習にもとづいた施策の成果を判断する]] — ルービンの因果モデル・RCT・仮説検定という A/B テストの理論的基盤から、標本サイズ設計や母集団ハックのような落とし穴、A/B テストができない場合の差の差法までを一貫して解説する → [[@2021__OReillyJapan__仕事ではじめる機械学習 - Chapter 8 機械学習のモデルを解釈する]] — 線形回帰の係数から p 値・決定木の可視化・Feature Importance・SHAP へと解釈手法を段階的に強めながら、各手法が何を答えられ何を答えられないかを離職予測データで示す ### 第 II 部: ケーススタディ(9〜12 章) 実際に手を動かす応用編。分析レポートから始まり、介入の最適化、探索と活用、実運用へと進む。 → [[@2021__OReillyJapan__仕事ではじめる機械学習 - Chapter 9 Kickstarterの分析、機械学習を使わないという選択肢]] — Kickstarter の資金調達データを題材に、達成率という正規化指標を導入した探索的データ分析だけで、機械学習を使わずに意思決定に足るレポートを作る過程を示す → [[@2021__OReillyJapan__仕事ではじめる機械学習 - Chapter 10 Uplift Modelingによるマーケティング資源の効率化]] — A/B テストのデータを個体の特徴量で分解し、無関心・説得可能・天邪鬼・鉄板の 4 セグメントに分類して、介入に反応する対象だけへ資源を絞り込む → [[@2021__OReillyJapan__仕事ではじめる機械学習 - Chapter 11 バンディットアルゴリズムによる強化学習入門]] — 事後分布の不確実性を評価値に組み込む Bayesian-UCB・UCB1・Softmax 法・Thompson Sampling で探索と活用のトレードオフを解き、A/B テスト・Uplift Modeling との関係性まで示す → [[@2021__OReillyJapan__仕事ではじめる機械学習 - Chapter 12 オンライン広告における機械学習]] — リアルタイム入札を題材に、ビジネス設定を制約付き最適化問題として定式化する回路と、CTR 予測モデルを広告配信ログ特有の困難のもとで運用し続ける回路の両方を示す ## 影響と位置づけ 本書は機械学習の理論書でも実装チュートリアルでもなく、その両方を終えた読者が「実際どうするのか」で詰まる箇所を埋める位置にある。アルゴリズムの解説(2 章)は他書に譲れる分量に抑えられ、代わりに問題設計・システム設計・ログ設計・効果検証・運用という、コードの外側にある判断が全体の大半を占める。 第 2 版で加わった継続的トレーニングと機械学習基盤(6 章)、効果検証(7 章)、モデルの解釈(8 章)の 3 章は、初版刊行(2018 年)以降に実務側の関心が「モデルを作る」から「モデルを運用し、効果を証明し、説明する」へ移ったことに対応する。 「機械学習を使わないという選択肢」を 1 章の流れに組み込み、第 II 部の冒頭(9 章)にその実例を置く構成は、本書がツールの導入ではなく問題解決を主題としていることを示す。 ## 関連 - 著者: [[有賀康顕]] / [[中山心太]] / [[西林孝]] - 概念: [[機械学習プロジェクトの進め方]] / [[機械学習システムの設計パターン]] / [[継続的トレーニング]] / [[機械学習基盤]] / [[因果効果の推定]] / [[A-Bテスト|A/Bテスト]] / [[Uplift Modeling]] / [[多腕バンディット]] / [[探索と活用のトレードオフ]] / [[予測モデルの解釈手法]] / [[教師データのためのログ設計]] / [[リアルタイム入札]] / [[CTR予測]] ## 出典 - 有賀康顕・中山心太・西林孝, 『仕事ではじめる機械学習 第2版』, オライリー・ジャパン, 2021.