# Retrieval-as-Reasoning
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## 定義
Retrieval-as-Reasoning とは、[[Haoliang Ming]] ら(WeChat/Tencent、2026)が提唱するエージェントネイティブ検索のパラダイムである。従来 RAG(検索拡張生成)における「検索=ルックアップ」(Retrieval-as-Lookup)——クエリを埋め込みで符号化し上位 k チャンクを固定文脈として渡す一回限りの操作——を刷新し、検索そのものをエージェントが制御する段階的推論活動として再定義する。(Source: [[@2026__arXiv__Retrieval as Reasoning]])
具体的には:
- エージェントが探索すべき知識単位を計画し
- 証拠を読み取り、コンパイル済みリンクを追跡し
- 中間観察に基づいて検索計画を改訂し
- 収集した証拠が十分かを判断して初めて回答する
この実現に必要な 3 原則:
1. **Compilability(コンパイル可能性)**: 生文書を構造化・相互結合された永続的知識単位にコンパイルする
2. **Composability(合成可能性)**: 検索を Search・Read・リンク追跡・充足性チェックなどのアトミック操作に分解し、エージェントが推論ループで合成する
3. **Evolvability(進化可能性)**: 知識構造が時間とともに静かに劣化するのではなく自己修正する
LLM-Wiki はこの 3 原則を Wiki 構造化知識・構成的検索・Error Book という 3 機構で実現した最初のシステムである。(Source: [[@2026__arXiv__Retrieval as Reasoning]])
## Retrieval-as-Lookup との対比
| 側面 | Retrieval-as-Lookup(従来 RAG) | Retrieval-as-Reasoning(LLM-Wiki) |
|---|---|---|
| 知識組織 | フラットチャンク・埋め込みインデックス | 構造化 Wiki ページ・双方向リンク |
| 検索のタイミング | 推論前の一回限り | 推論と連動した反復 |
| エージェントの制御 | なし(固定 top-k 文脈) | あり(次に探索するノードを計画) |
| 中間エンティティ | セマンティックに遠い場合欠落 | リンク追跡で到達可能 |
| 知識の自己修正 | なし | Error Book による継続的修正 |
| コスト配分 | クエリ時(ランタイムマッチング) | インデックス時(コンパイル一回払い)+ クエリ時は軽量 |
## Error Book パターン
LLM-Wiki が導入した自己修正機構。LLM でコンパイルされた知識ベースに蓄積する構造的・意味的エラー(ダングリングリンク・根拠なし事実・ページ矛盾等)を永続的に検出・修正する。
5 段階ライフサイクル: Discover → Attribute → Constrain → Inject → Verify & Close。
2 層修復: コード自動修正(構造エラー)+ LLM 定期修正(意味エラー)。
この Error Book は Reflexion や Self-RAG がクエリ時の単一エピソード内で自己修正するのと対照的に、**インデックス構築バッチをまたいで永続する**点が新規性の核心。
## 横断的知見
- **推論深度が増すほど Retrieval-as-Reasoning の優位性が拡大する**: LLM-Wiki は 2WikiMultiHopQA で 2-hop の LightRAG 比 +5.7 F1 が 4-hop では +8.3 F1 に拡大し、4-hop で 0.983 F1 を達成した。Retrieval-as-Lookup はセマンティック的に遠い中間エンティティを欠落させるため、ホップ数増加に比例して不利になる。(Source: [[@2026__arXiv__Retrieval as Reasoning]])
- **クエリ時レイテンシは Retrieval-as-Reasoning が有利**: コンパイルコストを初期一回に前払いすることで、クエリ時の組み合わせマッチングを排除し、LightRAG・HippoRAG 2・RAPTOR より大幅に低レイテンシを達成した。知識組織化の設計決定がランタイム性能にも直接影響する。(Source: [[@2026__arXiv__Retrieval as Reasoning]])
- **改善の源泉は「より強い類似度関数」ではなく「エージェントと知識ベースの間の契約変更」**: GPT-4o に切り替えても Dense RAG 比 +5.1〜+16.9 F1 ポイントの優位性が維持され、利得が特定のアンサーモデルでなく知識組織化から来ることが示された。これは [[LLM向け情報検索]] の「検索アルゴリズムより知識組織化が律速」という仮説を実験的に裏付ける。(Source: [[@2026__arXiv__Retrieval as Reasoning]])
## 未解決の問い
- 大規模・頻繁更新コーパス(Web 規模・動的知識)への拡張はどのように設計するか。数万ページ超でディレクトリインデックスが肥大化した場合の階層化・シャーディング戦略は?
- Error Book の収束性は保証できるか。制約が蓄積するほどコンパイルプロンプトが肥大化するが、制約の「忘却」や「優先順位付け」の機構が必要ではないか?
- Retrieval-as-Reasoning はドキュメント以外のデータ型(コード・表・マルチモーダル)にどこまで汎化するか?
- クラウド運用・AIOps のようなリアルタイムデータ(ログ・トレース・メトリクス)を Wiki にどう組み込むか。静的文書とリアルタイムデータの混合コーパスでの Retrieval-as-Reasoning の設計は?
## 関連
- 実装: [[@2026__arXiv__Retrieval as Reasoning]](LLM-Wiki)
- 抽象パターン: [[LLM Wikiパターン]](Karpathy 2026 の設計思想を操作化した位置づけ)
- 比較概念: [[LLM向け情報検索]] / [[RAGベースクラウド運用支援]] / [[RAGノイズ除去]]
- 著者: [[Haoliang Ming]](WeChat/Tencent)
## 出典
- [[@2026__arXiv__Retrieval as Reasoning]]