# Complexodynamics ## 定義 **Complexodynamics(複雑力学)**は、閉鎖系のエントロピーが単調増加する一方で、直観的な複雑性が単純な初期状態から中間状態で増え、ランダムな平衡状態で再び減るという時間発展を形式化しようとする問題設定である。[[Scott Aaronson]] は候補尺度を complextropy と呼び、単純な文字列と一様ランダムな文字列の双方で小さく、「単純でもランダムでもない」構造で大きくなる sophistication に計算資源制約を加える案を提示した。(Source: [[@2026__30papers__The First Law of Complexodynamics]]) 提案された complextropy では、対象 \(x\) を典型要素として含む集合または分布の効率的なサンプラーと、そのサンプルを用いる効率的な復元器の双方へ資源制約を課す。第一法則は、低エントロピーの初期状態、構造化された中間状態、高エントロピーの平衡状態に対して、値が小・大・小と変化するという未証明の予想である。(Source: [[@2026__30papers__The First Law of Complexodynamics]]) ## 横断的知見 - [[@2025__TJSAI__AIシステムの進化速度は指数関数を超えている]] は、ランダム系列の[[コルモゴロフ複雑性]]が最大になる性質を、プログラムの記述量を測る基礎として説明する。一方、[[@2026__30papers__The First Law of Complexodynamics]] は、同じ性質が「興味深い構造」の尺度としては欠点になることを示す。記述長は対象の圧縮不能性を測れるが、創発構造を測るには典型性と計算資源を分離して扱う必要がある。(Source: [[@2025__TJSAI__AIシステムの進化速度は指数関数を超えている]], [[@2026__30papers__The First Law of Complexodynamics]]) - [[@2026__30papers__The First Law of Complexodynamics]] が理論候補として資源制約付き sophistication を提示したのに対し、[[@2026__30papers__Quantifying the Rise and Fall of Complexity in Closed Systems The Coffee Automaton]] は計算可能性を優先して、局所粗粒化画像の圧縮サイズを使う見かけの複雑性へ移った。相互作用モデルでは山型が残り、非相互作用モデルでは補正後に消えたため、複雑性の増加にはランダムな混合だけでなく粒子間相互作用が必要であるという境界条件が得られた。(Source: [[@2026__30papers__The First Law of Complexodynamics]], [[@2026__30papers__Quantifying the Rise and Fall of Complexity in Closed Systems The Coffee Automaton]]) - 初期の3閾値粗粒化は負の対照である非相互作用モデルにも偽の山型を作った。7閾値と行多数決補正でその山型が消えたことは、複雑性の「増加・減少」を主張する前に、測定器自体が作る構造を負の対照で除外する必要があることを示す。(Source: [[@2026__30papers__Quantifying the Rise and Fall of Complexity in Closed Systems The Coffee Automaton]]) ## 未解決の問い - 相互作用するCoffee Automatonについて、圧縮による上界ではなく複雑性の下界をどのように証明できるか。 - coarse-graining を明示する物理学的定義と、効率的サンプリングで置き換える計算論的定義は、どの条件で同値または比較可能になるか。 - 単一の滑らかな極大ではなく、複雑性が増加・崩壊・再増加する系を「第一法則」はどう表現すべきか。 - gzip 等の圧縮率は、資源制約付き sophistication のどの性質を近似し、どの性質を取り逃がすか。 ## 関連 - [[コルモゴロフ複雑性]] — 記述長に基づく基礎尺度と、そのままでは時間発展を捉えないという限界 - [[Scott Aaronson]] — 資源制約付き complextropy の提案者 - [[Sean M. Carroll]]、[[Lauren Ouellette]] — Coffee Automatonによる定量化の共同研究者 ## 出典 - [[@2026__30papers__The First Law of Complexodynamics]] - [[@2026__30papers__Quantifying the Rise and Fall of Complexity in Closed Systems The Coffee Automaton]] - [[@2025__TJSAI__AIシステムの進化速度は指数関数を超えている]]