# CAPTCHA ## 定義 CAPTCHA(Completely Automated Public Turing Test to Tell Computers and Humans Apart)は、人間とプログラムを区別するための小さな視覚的・認知的パズルである。Alan Turing のテスト(人間と機械を対話だけで見分けられるか)を逆転させ、機械の側が人間かプログラムかを見分けるために使う。Luis von Ahn らが2003年に発明し、スパマーが無料メールサービスに大量アカウントを開設する行為や、既存アカウントへの単純なパスワード総当たりを防ぐ目的で普及した。人間には解きやすく機械には解きにくい「AIにとって難しい問題」(初期は歪んだ文字の認識)を利用する点が設計の核であり、防御機構が人間の認知的強みを利用する数少ない例である。(Source: [[@2020__Wiley__Security Engineering 3e - Chapter 3 Psychology and Usability]] §3.5) 2014年以降は von Ahn による reCAPTCHA へ移行し、ユーザーの解答を Google 書籍の OCR 誤読の訂正や画像認識AIの学習データ収集という有用労働に転用するようになった。複数の利用者の回答を突き合わせて正誤を判定し、選択式のパズルを複数回・数十秒かけさせることで、安価な人手ソルバー市場(1000件あたり約50セント)への対抗を図っている。(Source: [[@2020__Wiley__Security Engineering 3e - Chapter 3 Psychology and Usability]] §3.5) ## 横断的知見 - (現時点では [[@2020__Wiley__Security Engineering 3e - Chapter 3 Psychology and Usability]] 単独からの立ち上げであり、複数ソースの突き合わせによる知見はまだない。他ソースがこの概念に触れた際にここへ積み増す。) ## 未解決の問い - CAPTCHA は「人間の強みを利用する」設計として本章冒頭で肯定的に紹介される一方、実装の甘さ・視覚障害者へのアクセシビリティ問題・言語依存(ポルトガルの道路料金サイトの例)という欠陥が並記される。この種の「原理は健全だが実装が繰り返し失敗する」パターンは、本書の他の防御機構(パスワード、CAPTCHA以外の生体認証など)にも共通するか。 - reCAPTCHA が軍事AI研究(ヘリコプター画像の分類)に転用された事例に対する Google 社員自身の抗議があったと本章は記す。ユーザーの無償労働を防御機構に埋め込む設計は、労働の目的が変わったときにどのような倫理的境界を越えるか、本章では問題提起にとどまる。 ## 関連 - 章: [[@2020__Wiley__Security Engineering 3e - Chapter 3 Psychology and Usability]] - 概念: [[パスワードのユーザビリティ]] ## 出典 - Ross Anderson, *Security Engineering: A Guide to Building Dependable Distributed Systems*, 3rd Edition, John Wiley & Sons, 2020, Chapter 3, §3.5.