# AIネイティブ開発 ## 定義 AI エージェントや AI コーディングアシスタントが前提として存在する環境で、従来の SDLC セレモニーを経験せずに形成されたソフトウェア開発のスタイルおよびそのエンジニア文化。 [[Boris Tane]] の観察によれば、[[Cursor]] 以降にキャリアを始めたエンジニアはスプリント計画・ストーリーポイント・PR レビューを「必要だが面倒なもの」ではなく「そもそも経験したことがないもの」として扱う。これは欠陥ではなく、制約が消えた環境への適応である。([[@2026__Boris Tane Blog__The Software Development Lifecycle Is Dead]]) ## 特徴 - **インテントから直接反復へ**: 要件定義・設計フェーズを経ずに、意図とエージェントの対話から直接実装・観察へ移行する - **セレモニーの不在**: スプリント計画・スタンドアップ・PR レビューなどのプロセスセレモニーを経験していない - **同時テスト**: コード生成とテストが同一のエージェントループ内で完結する - **自動デプロイ**: フィーチャーフラグと段階的ロールアウトが標準的前提になる - **オブザーバビリティ中心**: 本番観察が最重要フィードバック源 ## 従来開発との断絶 AIネイティブ開発は、従来のソフトウェア開発の「改善版」ではなく、根本的に異なるパラダイムである。Tane の分析では、SDLC の各フェーズが崩壊するのは段階的にではなく、AI エージェントが前提になった時点で構造的に起きる。 この文化的断絶は組織設計にも影響する。AIネイティブエンジニアに SDLC プロセスを教えることは「適応を欠陥として修正する」試みになりうる。 ## 関連概念との接続 - **[[バイブコーディング]]** との関係: バイブコーディング(稲見昌彦が言う「意図と感覚から直接コードへ」の没入感)はAIネイティブ開発の極端な形態として位置づけられる。 - **[[コンテキストエンジニアリング]]**: AIネイティブ開発における中心的スキル。コードを書く技術から、エージェントへ適切なコンテキストを供給する技術への転換。 - **[[agentic SRE]]**: AIネイティブ開発がオペレーション領域に入ると、障害診断・緩和もエージェントが担うagentic SREへ接続する。 ## 横断的知見 - **[[Cursor]]** が「カーソル以前/以後」の文化的転換点として機能している点は、特定ツールが産業規模で思考様式を非連続的に変える現象として注目に値する。同様の転換点としては、Stack Overflow の普及(「検索して解決する」文化)、GitHub の普及(「フォークして試す」文化)が挙げられるが、AI エージェントによる転換はコード生成そのものを委任するため、質的に異なる。 ## 未解決の問い - AIネイティブエンジニアにとって「コードレビューの代替」として必要なスキルセットは何か? - チーム間の設計整合性(アーキテクチャの一貫性)はAIネイティブ開発でどう担保するか? - AIネイティブ開発が広がると、「コンテキストの品質」という暗黙知はどう組織内で伝承されるか?