# 認知意味論
## 定義
認知意味論(cognitive semantics)は、言葉の意味を人間の認識・感じ方と結びつけて理解する言語学のアプローチである。ゲシュタルト心理学・認知心理学を理論的背景に持ち、「テキストそのものに一意な意味が内在するのではなく、受け手の認知によって意味が定義される」という立場をとる。(Source: [[joisino-LLMと言葉の感じ方-2026]])
代表的な下位理論として[[プロトタイプ意味論]]がある。他にもフレーム意味論・メンタルスペース理論・概念メタファー理論が認知意味論を構成する。
## 典型現象
- **だまし絵(ルビンの壺)**: 全く同じ画像が「壺」にも「向かい合った人」にも見える。意味は受け手の認知に依存し、同一刺激でも一瞬一瞬で転換しうる。
- **オチのある物語**: 落語『動物園』改変テキストのように、オチを読んだ後で前段の「意味」が逆転する。「口を開ける」という動作の意味がオチ前後で全く変わる。
- **最短小説「売ります。赤ん坊の靴。未使用」**: 読む前後で認識が変わるテキストの極端例。「意味が分かると怖い話」も同構造。
## LLM 研究への接続
認知意味論は LLM と認知の橋渡しとなる枠組みとして注目される。
- LLM は「言語」モデルとしてテキストしか扱えないため、テキストの外側にある「感じ方」を表象・訓練しにくいとされてきた。
- しかし認知意味論の観点から LLM の内部埋め込みを分析すると、カテゴリー分類では人間と整合するが、**典型度の感覚**では大きく乖離することが明らかになった(LeCun+ ICLR 2026)。
- 認知意味論フレームワークを活用して LLM に「人間らしい感じ方」を教える研究は始まったばかりである。
## 横断的知見
- 現時点では[[joisino-LLMと言葉の感じ方-2026]]の単一ソースのみのため横断的知見は限定的。追加ソースで更新予定。
## 未解決の問い
- 認知意味論の他の下位理論(フレーム意味論・概念メタファー理論)を LLM に適用したとき、どのような乖離が観測されるか。
- ファインチューニングや RLHF で認知意味論的な「典型度の感覚」を LLM に付与できるか。
- 多言語 LLM において、言語・文化によって異なる典型度の感覚(例: 日本語と英語でのプロトタイプ鳥の違い)がどのように表象されるか。
## 関連
- [[プロトタイプ意味論]] — 認知意味論の代表的下位理論
- [[LLM意味表象]] — 認知意味論から LLM 埋め込みを分析する研究領域
- [[機構的解釈性]] — LLM 内部表現を解析する関連分野
- [[joisino-LLMと言葉の感じ方-2026]] — 本概念を LLM に適用した解説記事
## 出典
- [[joisino-LLMと言葉の感じ方-2026]](佐藤竜馬、2026-03-16)