多次元のデータや現象を低次元の表現に写像し、人間が理解・解釈できる単純な説明体系を生成する認知的・科学的操作。
[[岡ノ谷 一夫]](2021)の定義では、縮約は**個体発生的**であり学習過程の説明に適している。それを観察する自己の関与を前提とするため**メタ認知的**であり、Meillassoux の意味での「生命科学的」ではないとされる。
## 典型例
- 主成分分析(PCA)・自己組織化マップ(Kohonen ネット): 入力データを低次元空間に写像
- 神経回路網の中間層(Z 層): Elman ら(1996)の文章分節化モデルや Tani(1996)の空間分節化モデルでは、中間層が入力データの縮約になっており、品詞カテゴリや場所カテゴリが現出する
- 言語: 文章そのものが外界の縮約。「縮約の人間性」(Okanoya 2021)
## 問題点
- 現象について単純で優美な説明を生成できるが、現象のすべてを扱えるとは限らない
- 仮説に引きずられた観察バイアスが残る: 系外惑星探索における「恒星から距離のある長周期小型惑星」という前提が、実際に最初に見つかった「ホットジュピター」を見落とさせた
- Meillassoux の批判: 縮約は「反動的で愚劣な生成(génération réactionnaire)」。言語を介在とした人間的意味の付与であり、外界の物質的実在を直接捉えられない
## [[網羅]]・[[減算]]との関係
| | 縮約 | 網羅 | 減算 |
|---|---|---|---|
| 操作 | 高次元→低次元写像 | 仮説なし包括計測 | 外界からの選択的遮断 |
| 時間軸 | 個体発生的 | — | 系統発生的 |
| 認識論 | メタ認知的・人間的 | 仮説フリー | 生命的・環世界的 |
| 問題 | 観察バイアス・特異点見落とし | 人間が利用時に縮約が再発生 | 減算基準の設定問題 |
[[岡ノ谷 一夫]](2021)の結論: 認知科学は縮約と減算の並行処理にならざるを得ない。
## 横断的知見
- [[岡ノ谷 一夫]](2021): 「科学者の仕事は人間が理解できる説明体系を構築すること」であり、縮約はその本質的な操作。網羅時代においても縮約は科学者の役割として残存する
- 人工知能が[[網羅]]に基づき予測するとき、人間への提示段階で縮約が再登場する。この縮約が特異点(想定外事象)を見落とすリスクを生む
## 未解決の問い
- 縮約と[[減算]]の並行処理を具体的にどのようなシステムで実現するか
- 「良い縮約」と「愚劣な縮約」を区別する基準は何か
- 機械学習の圧縮表現(埋め込みベクトル、潜在空間)は縮約か網羅か、あるいは別のものか