# 組織学習 Navigation: [[../index|index]] ## 定義 組織学習(organizational learning)とは、単なる経験の蓄積とは別物で、組織が(1)人材に新しいスキル・取り組み方を植え付けるか、(2)組織自体を再設計して異なる働き方に変えるかのいずれかを行って初めて成立する能力を指す。経験を積んでも誤った教訓しか導けない例(フランス軍とマジノ線)が示すように、経験と学習は同義ではない (Source: [[@2013__AddisonWesley__Peopleware 3E - Chapter 35 Organizational Learning]])。 ## 学習の中心は中間管理職の余白に宿る - **組織学習の中心(learning center)は組織図の「頂上」でも「底辺」でもなく、中間管理職の層、特に中間管理職どうしの間にある公式の組織図には現れない「余白(white space)」にある。** - 根拠: そこにコミュニケーションと共通目的があれば学習は実を結び、なければ学習は止まる (Source: [[@2013__AddisonWesley__Peopleware 3E - Chapter 35 Organizational Learning]]) - 根拠: ダウンサイジングは決まって中間管理職を標的にするため、結果として組織の学習中心を破壊しがちである (Source: [[@2013__AddisonWesley__Peopleware 3E - Chapter 35 Organizational Learning]]) - **学習は組織の人材保持能力によって制約される。離職率の高い組織では学習が定着しない、あるいは学習の試み自体が離職をさらに加速させかねない。** - 根拠: 人材が数年で入れ替わる組織は短期思考に陥りやすいことは離職研究とも整合する (Source: [[@2013__AddisonWesley__Peopleware 3E - Chapter 35 Organizational Learning]]) - **決定論的な自動化・過度な手順の標準化(Methodology)は、想定外の事態への即興対応(自己修復)を組織から奪う点で、組織学習が前提とする柔軟性と緊張関係にある。** - 根拠: 十分な即興性(ad hoc-racy)がある業務を自動化・決定論化すると絶え間ない保守を招く (Source: [[@2013__AddisonWesley__Peopleware 3E - Chapter 29 The Self-Healing System]]) - **職場コミュニティの形成に成功した組織は人材を定着させ、人的資本への投資が回収されてさらなる投資を呼ぶ好循環を生み、これが学習の持続可能性を支える基盤になる。** - 根拠: コミュニティが強い組織でも人はいずれ離職するが、コミュニティへの迷惑が最小になる時期(多くはプロジェクトの区切り)を選ぶ傾向がある (Source: [[@2013__AddisonWesley__Peopleware 3E - Chapter 36 The Making of Community]]) ## 未解決の問い - 「学習の中心は中間管理職の余白にある」という主張は、フラット化・マトリクス化が進んだ現代のSRE/プラットフォーム組織にそのまま当てはまるか、それとも別の層(例: SRE アンバサダー・チャンピオン制度)に読み替える必要があるか。 - ポストモーテム・ブレームレス文化のような明示的な学習の仕組みは、本章が論じる「余白(white space)」の学習と競合するのか補完するのか。 ## 未編纂の観察 ## 関連 - [[組織の信頼性マインドセット]] - [[SRE文化]] - [[コミュニティマネジメント]] - [[Satir変化モデル]] ## 出典 - [[@2013__AddisonWesley__Peopleware 3E - Chapter 35 Organizational Learning]] - [[@2013__AddisonWesley__Peopleware 3E - Chapter 29 The Self-Healing System]] - [[@2013__AddisonWesley__Peopleware 3E - Chapter 36 The Making of Community]]