# 科学の境界領域 ## 定義 既成の学問分野が専門化・細分化するにつれて手つかずのまま残される、分野と分野の狭間の未開拓領域(no-man's land / boundary regions of science)にこそ、科学の成長にとって最も実り多い機会があるという研究方法論上の確信。[[ノーバート・ウィーナー]] と [[アルトゥーロ・ローゼンブルース]] が長年共有していた確信であり、両者の共同研究、ひいては『サイバネティクス』という学問領域そのものの出発点になった。Wiener は、Leibniz の時代までは一人の知性が当時の知的活動全体を統御できたが、それ以降は科学が専門家の仕事になり分野が進行的に狭くなってきたと述べ、この狭間の領域は各分野からばらばらに探究されるため同じ知見が重複発見される一方、一方の分野で既に常識になっている結果が他方に伝わらない遅れが生じると指摘する。こうした狭間の探究は、大量動員や分業という科学の標準的な攻略法には最も馴染まず、自分の専門を持ちながら隣接分野にも通じ、互いの知的習慣を知り合ったチームによってのみ可能になるとされる。(Source: [[@1961__MITPress__Cybernetics - Introduction]] p.2-3) ## 横断的知見 (現時点では単一ソースからの導入段階。他ソースとの突き合わせは今後の ingest で蓄積する。) ## 未解決の問い - Wiener・Rosenblueth のいう「境界領域」の方法論的確信と、現代の学際研究・異分野融合研究(interdisciplinary research)の議論はどこまで直接連続しているか。 - この確信は『サイバネティクス』という学問そのものの成立過程を正当化する物語(post hoc の自己認識)なのか、それとも協働開始前から明確に意識されていた方法論だったのか。 - [[創発と還元主義]] が扱う「全体論と還元主義の対峙」と、この「境界領域」の考え方はどう関係するか(境界領域の探究は必然的に還元主義的な専門知の限界を突くものか)。 ## 関連 - [[サイバネティクス]] — この確信から生まれた学問領域 - [[ノーバート・ウィーナー]] / [[アルトゥーロ・ローゼンブルース]] — この確信を共有した二人の創始者 ## 出典 - [[@1961__MITPress__Cybernetics - Introduction]]