# 確率空間 Navigation: [[index]] | [[overview]] ## 定義 確率空間(probability space)は、標本空間(sample space) S と確率関数(probability function) Pr の組として定義される。可算な標本空間 S は空でない可算集合であり、その要素 ω ∈ S を結果(outcome)と呼ぶ。S の部分集合を事象(event)と呼ぶ。確率関数は Pr: S → R であって、全ての ω ∈ S について Pr[ω] ≥ 0 かつ Σ_{ω∈S} Pr[ω] = 1 を満たす総関数である。任意の事象 E ⊆ S に対し、その確率は含まれる結果の確率の総和 Pr[E] := Σ_{ω∈E} Pr[ω] として定義される。標本空間は有限でも可算無限でもよく、実数全体のような非可算集合上の一般確率論(積分を要する)とは異なり、可算集合に限ることで確率を和で扱える。 事象がすべて等確率(Pr[ω] が S 上で一定)の有限確率空間は一様確率空間(uniform probability space)と呼ばれ、任意の事象 E について Pr[E] = |E|/|S| という数え上げに帰着できる。標本空間が無限の場合(例えば、コインを表が出るまで投げ続ける実験)は、確率関数の非負性と総和1の条件を幾何級数などの無限和で確かめる必要がある。 集合論の規則の多くが確率にそのまま拡張される。互いに素な事象の可算和については和集合則 Pr[⋃ₙ Eₙ] = Σₙ Pr[Eₙ] が成り立ち、ここから補集合則 Pr[Ā] = 1 − Pr[A]、差集合則 Pr[B−A] = Pr[B] − Pr[A∩B]、包除原理 Pr[A∪B] = Pr[A] + Pr[B] − Pr[A∩B]、Boole の不等式(Union Bound)Pr[⋃ₙ Eₙ] ≤ Σₙ Pr[Eₙ]、単調性規則(A⊆B なら Pr[A]≤Pr[B])が導かれる。(Source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 16 Events and Probability Spaces]] §16.5) ## 横断的知見 - 第18章は確率空間の上に確率変数(random variable)を「標本空間を定義域とする全域関数」として定義し、事象を確率変数への言明([R=x] など)を通じて副次的に得られる対象として位置づけ直す。第16-17章では事象の確率を直接問うていたが、第18章以降は確率変数がどの値を取るかを問う形に議論の単位が一段抽象化される。確率空間そのものの定式化(標本空間・確率関数の条件)は変わらないが、その上に何を構築するかという視点が加わる。(Source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 16 Events and Probability Spaces]] §16.5, [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 18 Random Variables]] §18.1) ## 未解決の問い - 偏差・集中不等式(第19章)、ランダムウォーク(第20章)へどう積み上げられていくか。後続章の ingest で本節に追記する。 - 非可算な標本空間(連続確率分布)を扱う一般確率論との関係は、本書の範囲(離散数学の教科書)では意図的に扱われていない。連続確率を扱う別ソースが入ってきたときに、本ページと [[集中不等式]] のどちらに定義を置くべきか整理が必要。 ## 関連 - source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 16 Events and Probability Spaces]] / [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 18 Random Variables]] - 概念: [[四段階法]](確率空間上で事象の確率を求める手続き)、[[誕生日原理]](一様確率空間・無限確率空間の応用例)、[[確率変数]](確率空間の上に構築される関数)、[[集中不等式]](確率変数の偏差を扱う際に確率空間の定式化を前提とする) ## 出典 - Eric Lehman, F. Thomson Leighton, Albert R. Meyer, *Mathematics for Computer Science*, revised 2015-05-18, Chapter 16 §16.5; Chapter 18 §18.1.