# 相対的重み付け
## 定義
相対的重み付け(relative weighting)とは、カール・ウィーガーが提案したフィーチャの優先順位づけ手法である。狩野モデルと似た構造を持ち、フィーチャがあった場合の利点と、なかった場合の悪影響の両方を検討する。狩野モデルとの違いは、ユーザーからアンケートを取るのではなく専門家の判断によって評価する点であり、チーム全員が協力しながら、あくまでもプロダクトオーナーが主導するかたちで、次のリリースに含めるべきフィーチャをひとつひとつ検討していく。(Source: [[@2009__Mynavi__アジャイルな見積りと計画づくり - Chapter 11 「望ましさ」による優先順位づけ]] §2)
算出手順は以下のとおりである。(Source: [[@2009__Mynavi__アジャイルな見積りと計画づくり - Chapter 11 「望ましさ」による優先順位づけ]] §2)
1. フィーチャごとに、実装することで得られる「相対的な利点」と、実装しないことで被る「相対的な悪影響」を、ストーリーポイントや理想時間の見積りと同じ要領で相対値(1〜9)で評価する。
2. 利点と悪影響を足し合わせて「価値の合計」を求める。利点と悪影響には重み付けをしてもよい(例: 利点を悪影響の2倍の価値とみなし、利点の数字を2倍してから悪影響の値と合算する)。
3. 全フィーチャの「価値の合計」の和に対する、個々のフィーチャの「価値の合計」の割合を「価値%」として算出する。
4. ストーリーポイントまたは理想日による見積りを合計し、個々のフィーチャの見積りをその合計で割った値を「コスト%」として算出する。
5. 「優先度」を「価値%」÷「コスト%」として算出する。数字が大きいほど優先度が高く、投入コストに対してより大きな価値を生むことを意味する。
![[wiki/sources/_attachments/agile-estimating-and-planning-ja/ch11-tbl11.2-relative-weighting.png]]
(表11.2 優先順位づけのための相対的重み付け手法。SwimStatsの3フィーチャの例: 競技記録のグラフ表示は利点8・悪影響6・価値の合計14・価値42%・コスト32(見積り)・コスト53%・優先度0.79。写真のアップロードは利点9・悪影響2・価値の合計11・価値33%・コスト21・コスト34%・優先度0.97。プロフィールの登録は利点3・悪影響5・価値の合計8・価値25%・コスト8・コスト13%・優先度1.92。3フィーチャの合計は利点20・悪影響13・価値の合計33・コスト61。プロフィールの登録は価値の合計が最も低いがコストも最も低いため、優先度は3フィーチャ中もっとも高い。Source: [[@2009__Mynavi__アジャイルな見積りと計画づくり - Chapter 11 「望ましさ」による優先順位づけ]] §2)
相対的悪影響を検討することの重要性は、原本のコラムで強調されている。ある証券業界サービス企業の例では、新しい法律を遵守すること以外には何の価値も生まないフィーチャがあり、プロダクトオーナーは「このフィーチャを実装しなかったときの悪影響はCEOが逮捕されるかもしれないことだけだ」と表現した。このフィーチャは相対的利点を1、相対的悪影響を9として評価するのがふさわしいとされる。フィーチャがあるときの影響だけでなく、ないときの影響を検討することが同じくらい重要である。(Source: [[@2009__Mynavi__アジャイルな見積りと計画づくり - Chapter 11 「望ましさ」による優先順位づけ]] §2)
## 横断的知見
- 現時点では11章のみを取り込み済みであり、複数ソースの突き合わせによる横断的な観察はまだ蓄積されていない。相対的重み付け(または類似のスコアリング手法)が他の書籍・論文で扱われる際に、本ページの算出手順との異同を横断的に整理する。
## 未解決の問い
- 利点・悪影響への重み付け(例: 利点を悪影響の2倍とみなす)をいつ、どのような基準で適用すべきかは原本に明記されていない。
- 相対的重み付けの評価者であるプロダクトオーナー主導のチームが、1〜9の評価値についてどう合意形成するのか(たとえばプランニングポーカーのような手法を使うのか)は原本に記載がない。
- 相対的重み付けによる優先度スコアと、9章が示す4要素(金銭価値・コスト・新しい知識・リスク)や10章の金銭価値算出手法(NPV・IRR・回収期間)を、同一のフィーチャ群に対して統合する具体的な手順は何か。
- 相対的重み付けの結果と狩野モデルの結果が同一フィーチャ群に対して矛盾する場合、どちらの手法を優先すべきかの判断基準は原本に示されていない。
## 関連
- 章: [[@2009__Mynavi__アジャイルな見積りと計画づくり - Chapter 11 「望ましさ」による優先順位づけ]]
- 書籍: [[wiki/entities/アジャイルな見積りと計画づくり|アジャイルな見積りと計画づくり]]
- 実体: [[Karl Wiegers]](提案者)
- 概念: [[狩野モデル]](同じ「望ましさ」の軸で優先順位づけを行うが、ユーザーアンケートに基づく手法) / [[フィーチャの優先順位づけ]]
## 出典
- Mike Cohn 著, 安井力・角谷信太郎 監訳, 『アジャイルな見積りと計画づくり』, マイナビ, 2009, 11章。
- (原本内の引用) Karl Wiegers, "First Things First: Prioritizing Requirements," Software Development, September 1999。