# 時系列分解
## 定義
時系列分解(time-series decomposition)は、時系列データをトレンド(平均の系統的変化)・季節サイクル(週次・月次・四半期などの周期パターン)・その他の循環変動・ランダムノイズといった複数の成分に分離する統計的手法である。成分は加法的または乗法的に組み合わさるとされる。([[@2026__arXiv__Cloud Performance Decomposition for Long-Term Performance Engineering - A Case Study]])
クラウド性能エンジニアリングの文脈では、リソース競合やワークロード変化に起因する性能変動が単一のトレースに絡み合って現れるため、時系列分解によって個々の変動要因を分離することが根本原因分析やリソース管理の前提となる。代表的な手法として、STL(Seasonal-Trend Decomposition using LOESS)のような LOESS 平滑化に基づく古典的手法と、Empirical Mode Decomposition(EMD)/Ensemble EMD(EEMD)のようなヒルベルト・ファン変換に基づくデータ駆動型手法がある。([[@2026__arXiv__Cloud Performance Decomposition for Long-Term Performance Engineering - A Case Study]])
## 横断的知見
- **STL は単一の季節成分しか報告できず、パブリッククラウドの複数周期を取り違える**: [[@2026__arXiv__Cloud Performance Decomposition for Long-Term Performance Engineering - A Case Study]] は、STL が固定周期の LOESS 回帰に依存するため、週次・月次・四半期といった複数の周期性を単一の季節成分にまとめて報告してしまい、パブリッククラウドに特有の非定常性・断続性(signal intermittency)によるモードミキシングに弱いことを実証した(Fig. 2 で STL が週次サイクルのみ抽出し月次・四半期を見逃す例を提示)。Twitter・Meta が性能回帰検知の前処理として STL を用いてきた([[異常検知]] の産業事例)のに対し、本研究はより制御された社内データセンターと異なり、パブリッククラウドは競合とランダム性が高く、正確な分解がより困難であると位置づける。(Source: [[@2026__arXiv__Cloud Performance Decomposition for Long-Term Performance Engineering - A Case Study]])
- **分解手法の選択は「予測精度重視 vs. 断続性の保持重視」というトレードオフを伴う**: ハイブリッド/手動分解(周期モデルを個別に選択・パラメータ調整)は正則性を仮定するため予測精度で優れる(MAPE 1.8% vs. EEMD の 2.1%)一方、EEMD はデータ駆動で非定常な断続性(例: 休暇期に週次サイクルが一時的に消える現象)をそのまま IMF に反映できる。異常検知のような「不規則性の検出」が目的なら EEMD の非定常性検出力が有利、性能予測のような「規則性を活かした外挿」が目的ならハイブリッド分解が有利という使い分けが示唆される。(Source: [[@2026__arXiv__Cloud Performance Decomposition for Long-Term Performance Engineering - A Case Study]])
- **分解の正しさを、予測精度という間接指標で検証する設計パターン**: 分解結果そのものの正解が存在しない(教師データがない)問題に対し、本研究は「分解成分を用いた性能予測の精度(MAPE)」を分解の妥当性の代理指標として使う。ハイブリッド・自動分解がともに STL・LSTM を上回る予測精度を示したことが、分解が実際にトレンド・季節性を正しく捉えている証拠として扱われている。これは教師なしの分解手法を評価する際の一般的な戦略として、他の時系列分解タスクにも応用できる可能性がある。(Source: [[@2026__arXiv__Cloud Performance Decomposition for Long-Term Performance Engineering - A Case Study]])
## 未解決の問い
- EEMD 以外のデータ駆動分解手法(Variational Mode Decomposition、synchrosqueezed transform 等)は、クラウド性能トレースの分解でどの程度 EEMD に対して優位/劣位か。
- 複数年にわたる性能トレースでは、EEMD の「端効果(end effect)」による年境界での分解精度低下はどの程度緩和されるか。
- Web サービス系ワークロード(SAB)以外の科学計算・機械学習ワークロードでも、同様の週次・月次・四半期サイクルが観測されるか。ワークロード特性によって分解可能な周期構造はどう変わるか。
- 予測精度を保ちながら断続性(intermittency)も保持できる、ハイブリッドと自動分解のいいとこ取りをする分解手法は設計可能か。
## 関連
- ソース: [[@2026__arXiv__Cloud Performance Decomposition for Long-Term Performance Engineering - A Case Study]]
- 概念: [[異常検知]]