## 定義 形式的べき級数(formal power series)とは、母関数 G(x) = g0 + g1 x + g2 x^2 + ... を「x にある値を代入したときに収束する関数」としてではなく、係数の無限列 (g0, g1, g2, ...) そのものとして扱う立場である。数列の加法(sequence sum、⊕)を座標ごとの和で、数列の積(sequence multiplication、⊗)を畳み込み(convolution)で定義すると、これらの演算は可換であり、零列 Z=(0,0,0,...) が加法の単位元、単位列 I=(1,0,0,...) が乗法の単位元となる。これらの演算は可換環の公理をすべて満たし、数列全体の集合はこの2演算のもとで「形式的べき級数の環(ring of formal power series)」をなす。環の公理から乗法逆元(reciprocal)は存在すれば一意であり、記法 1/G で曖昧さなく表せる。数列 G が逆元を持つのは初項 g0 が非零であるとき、かつそのときに限る。変数 x 自体も数列 X=(0,1,0,0,...) として同一視され、1/(1-x) = 1+x+x^2+... のような等式は「収束する値の主張」ではなく「環における乗法逆元の主張」として正当化される。この立場を取ると、収束半径が0の(どこでも発散する)母関数であっても、係数列としての代数操作は完全に正当であり、有効な恒等式を導出できる。(Source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 15 Generating Functions]] §15.5) ## 横断的知見 (現時点で本 concept に紐づくソースは第15章のみ。複数ソースの突き合わせが可能になり次第、ここに追記する。) ## 未解決の問い - 形式的べき級数の環が可換環の公理をすべて満たすという主張は第8章§8.7.1の可換環の定義を参照しているが、本 concept は第8章の内容を未確認である。第8章(Number Theory)がingestされ、可換環の公理一覧が明示されたら、どの公理がどの操作(⊕・⊗・Z・I)にどう対応するかを横断的知見として整理したい。 - 形式的べき級数の環は無限次元のベクトル空間や多項式環とどう関係するか(たとえば多項式環の完備化としての位置づけ)は本章では触れられていない。抽象代数・環論を扱う他ソースが ingest されたら、この関係を横断的知見として追記したい。 - 形式的べき級数における微分演算(第15章の演習問題15.17で言及される F'(x) := f1 + 2f2 x + 3f3 x^2 + ...)が環構造とどう整合するか(微分がライプニッツ則を満たす環準同型的な操作であること等)は、本文(演習除く)の範囲では明示的に扱われていない。解析学的な取り扱いを扱う他ソースが ingest されたら、この点を補強したい。 ## 関連 - source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 15 Generating Functions]] - 概念: [[母関数]](形式的べき級数は母関数を厳密に基礎付ける枠組み) ## 出典 - Eric Lehman, F. Thomson Leighton, Albert R. Meyer, *Mathematics for Computer Science*, revised 2015-05-18, Chapter 15, §15.5.