# 実験計画法 ## 定義 実験計画法(design of experiments、DOE)は、測定可能な出力や製品特性に対する複数変数の同時効果を、実験によって評価する統計的手法である。分散分析(analysis of variance、ANOVA、R. A. Fisherが開発)を中核とし、要因ごとの分散成分と残差分散(実験誤差)を比較するF検定によって、効果が統計的に有意かどうかを判定する。変数を1つずつ変える伝統的な実験手法と比べ、複数変数が同時に効果を及ぼす状況でより経済的であり、かつ変数間の交互作用(interaction)を検出できる点で優れる(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 11 Design of Experiments and Analysis of Variance]] §11.1, §11.2)。 ## 主要な技法 - **単一変数の分散分析**: データ全体の平方和を、群間(between sample, BS)平方和と群内(within sample, WS)平方和に分解し、F = BS分散推定値 / WS分散推定値を計算して、有意水準に対応する臨界値と比較する(Source: ch.11 §11.2.1)。 - **要因実験(factorial experiment)**: 複数要因のすべての組み合わせを試験し、主効果に加えて要因間の交互作用を分析する。要因数・水準数・反復数が増えると必要な試験数が急増する(Source: ch.11 §11.2.2)。 - **2水準要因実験**: 各要因を高・低の2水準(+/−)のみに単純化し、応答値の符号付き平均差から主効果・交互作用効果を簡便に計算する。無反復の場合は残差分散が得られないため統計的検定はできない(Source: ch.11 §11.2.4)。 - **一部実施要因実験(fractional factorial experiment)**: 工学的に意味を持たないと想定される高次交互作用を犠牲にして試験の組み合わせを間引き、試験数を削減する。間引きの結果、ある効果と別の効果が結果の上で区別できなくなる状態を交絡(aliasing / confounding)と呼ぶ。要因数が4つ以上になると経済的価値が大きい(Source: ch.11 §11.2.5)。 - **無作為化(randomization)**: 供試体の選定と試験順序を無作為化し、評価対象にしていない外的要因(試験順序、供試体の由来、人間のバイアス)の影響を排除する。複数工程を経る場合は工程ごとに個別に無作為化する。事前の試運転(dummy run)で計画の欠陥を洗い出すことが推奨される(Source: ch.11 §11.3)。 - **統計的結果と工学的解釈のバランス**: 統計的に有意な結果でも、対象の物理的・化学的な実態と矛盾する「偶然の結果」でないか常に検証する。統計的結果と工学的知見が衝突し、意思決定への影響が大きい場合は、着目する効果を強調するよう計画を変えて実験を再実行するのが賢明である。逆に統計的に高度に有意な結果は、偶然である可能性が低い(Source: ch.11 §11.4)。 ## 横断的知見 - (2026-08-16時点で単一ソース([[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 11 Design of Experiments and Analysis of Variance]])のみからの取り込みであるため、複数ソースの突き合わせによる横断的知見はまだ無い。本concept は同書第2章の[[工学的ばらつき]]([[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 2 Reliability Mathematics]])が扱う「ばらつきの3分類(決定論的・機能的・偶然)」と対をなす — 実験計画法はそのばらつきの要因を実験的に特定・分離する手法にあたる。ただし本章はこの対応を明示的には述べていないため、両concept間の関係は接続候補として記録するにとどめる。) ## 未解決の問い - 本章はF検定による有意性判定の手続きを示すが、有意水準(5%・1%)の選び方自体の妥当性や、多重比較(複数の要因・交互作用を同時に検定すること)による第一種の過誤の増大については触れていない。[[多重検定]] concept との接続は今後の課題。 - §11.2.3で触れられる「非正規分布データへの対処」(ノンパラメトリック手法、変数変換)は参考文献(Deshpande, 1995)への言及に留まり、具体的な手法は本章の範囲外。 - 「統計的結果が工学的知見と矛盾する場合は工学的判断で退けてよい」という§11.4の立場は、判断者の工学的知見の質に強く依存する。誤った工学的直感によって真の交互作用を見落とすリスクをどう抑えるかは本章では論じられない。 ## 関連 - ソース: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 11 Design of Experiments and Analysis of Variance]] - 実体: [[Patrick D. T. O'Connor]] / [[Andre Kleyner]] - 関連概念: [[タグチメソッド]](実験計画法を工学設計に適応させた枠組み) / [[工学的ばらつき]](実験計画法が特定・分離しようとするばらつきの分類) ## 出典 - P. D. T. O'Connor and A. Kleyner, *Practical Reliability Engineering*, 5th ed., Wiley, 2012, Chapter 11, §11.1–§11.4.