# 四段階法
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## 定義
四段階法(Four Step Method)は、「〜の確率はいくつか」という形の問題を体系的に解くための4段階の手続きである。
1. **標本空間を求める**: 実験のすべての結果(outcome)からなる集合(標本空間、[[確率空間]]を参照)を特定する。
2. **着目する事象を定める**: 問いが求めている事象(結果の集合)を明確にする。
3. **結果の確率を定める**: 各結果に確率を割り当てる。木図(tree diagram)を使う場合は、まず各辺に辺確率(モデルの前提から決まる条件付きの分岐確率)を割り当て、次に根から葉への経路上の辺確率の積として各結果の確率を計算する。
4. **事象の確率を計算する**: 事象の確率を、その事象に含まれる結果の確率の総和として計算する。
木図法(tree diagram)は、実験を根から葉への経路とみなし、各段階のランダムな分岐を階層として描く図的道具である。標本空間の把握(ステップ1)と結果の確率の計算(ステップ3)の両方を視覚的に支援する。実験が有限段階の離散選択からなる場合に特に有効で、モンティ・ホール問題(3層の木、12個の結果)や非推移的サイコロの比較(9〜81個の結果)のような、直感では誤りやすい問題を機械的な計算に還元できる。標本空間が無限の場合(コインを表が出るまで投げ続ける等)も、木図の無限に続く経路として表現し、事象の確率を無限和(幾何級数など)として計算できる。(Source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 16 Events and Probability Spaces]] §16.2, §16.3, §16.5.4)
### 条件付き確率の四段階法
四段階法は、条件付き確率を問う問題にもそのまま適用できる。手続き自体は変わらず、ステップ4(事象の確率を計算する)で通常の確率の代わりに[[条件付き確率]]の定義 Pr[A|B] := Pr[A∩B]/Pr[B] を使う点だけが異なる。3戦2勝先取のホッケートーナメントで「初戦に勝ったという条件のもとでトーナメントに勝つ確率」を求める例では、ステップ1〜3(標本空間・事象・結果の確率)は通常の四段階法と全く同じ木図で進め、ステップ4だけが Pr[A|B] = Pr[A∩B]/Pr[B] という条件付きの計算に置き換わる。(Source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 17 Conditional Probability]] §17.3)
## 横断的知見
- 第16章では、木図の各辺に確率を割り当て、根から葉への経路上の辺確率の積として結果の確率を計算するという手続きが、証明抜きの前提として導入されていた。第17章はこれに数学的な正当化を与える。すなわち木図の辺確率は「親頂点に到達したという条件のもとで、その辺の経路に進む」条件付き確率であり、経路上の辺確率の積は条件付き確率の積の規則(Pr[E1∩E2] = Pr[E1]·Pr[E2|E1] など)そのものである。木図法は条件付き確率の特別な視覚的表現だったことが後から明らかになる。(Source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 16 Events and Probability Spaces]], [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 17 Conditional Probability]] §17.4)
- 第18章(確率変数)でも四段階法の手続きは変更なくそのまま使われる。「数当てゲーム」(2つの封筒から大きい数を当てる乱択戦略の勝率を求める問題)では、四段階法のステップ1〜4(標本空間・事象・結果の確率・事象の確率)がそのまま木図に適用され、ステップ4で得られた事象の確率がそのまま確率変数(勝敗)の pdf の値になる。四段階法は「事象の確率を求める手続き」のまま変わらず、確率変数はその出力を後から関数として解釈し直す層として積み重なる、という関係になる。(Source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 18 Random Variables]] §18.3.3)
## 未解決の問い
- 木図が実用的に描けないほど標本空間が大きい場合(例えば第16章末の問題16.5にある4ドア版モンティ・ホール問題)に、四段階法のどのステップが省略・代替されるかは本章の範囲では扱われていない。
- 期待値(第18章 §18.4-§18.5)の計算では、木図から求めた結果の確率をそのまま Σ 値×確率 の形で合計する場面(賭博ゲームの期待利得など)が繰り返し現れるが、これが四段階法の「ステップ5」的な拡張として明示的に定式化されているわけではない。四段階法と期待値計算の関係を後続章の ingest で整理する必要がある。
## 関連
- source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 16 Events and Probability Spaces]] / [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 17 Conditional Probability]] / [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 18 Random Variables]]
- 概念: [[確率空間]](四段階法が計算対象とする数学的構造)、[[誕生日原理]](四段階法とは異なるアプローチ(組合せ論的な数え上げ)で確率を求める例として対比できる)、[[条件付き確率]](四段階法のステップ4が条件付き確率の定義に置き換わる場合。木図の辺確率が条件付き確率であることの正当化)、[[確率変数]](四段階法で求めた結果の確率が確率変数の pdf の値として再解釈される)
## 出典
- Eric Lehman, F. Thomson Leighton, Albert R. Meyer, *Mathematics for Computer Science*, revised 2015-05-18, Chapter 16 §16.2, §16.3; Chapter 17 §17.3–§17.4; Chapter 18 §18.3.3.