# 光トランシーバー電力方式
## 定義
光トランシーバーにおけるDSP(Digital Signal Processing)の搭載範囲を段階的に減らしていくことで消費電力を低減する4つの方式である。JANOG58の発表では以下の順で電力効率が改善するとされる(出典: Juniper文書)。(Source: [[@2026__JANOG58__AIインフラ時代のデータセンター内光配線の実践知]], p.38)
- **FRO(従来型)**: 送信側・受信側の両方にDSPを搭載する従来型光トランシーバー。信号品質補正の自由度が高い一方、消費電力が最も大きい。
- **LRO(Linear Receive Optics)**: 送信側のみDSPを搭載し、受信側はリニアなアナログ処理に簡略化する。
- **LPO(Linear Pluggable Optics)**: トランシーバー内のDSPを完全に排除し、ホスト側のSerDesで信号処理を担う。
- **CPO(Co-Packaged Optics)**: 光エンジンをスイッチASICと同一パッケージに統合し、電気配線長を最小化してスイッチに固定する構成。
## 電力効率の定量比較(pJ/bit・1.6Tあたり電力)
「AIのための Ethernet技術動向 (SerDes)」(TEF 2025, Gilad Shainer(NVIDIA)発表の引用)は、DSP搭載範囲を段階的に削る4方式を pJ/bit と 1.6T あたり電力で定量比較する: FRO(Full-Retimed Optics)14 pJ/b・25W → TRO(Tx-Retimed Optics)10 pJ/b・18W → LPO(Linear Pluggable Optics)6.4 pJ/b・11W → CPO(Co-Packaged Optics)4 pJ/b・7W。この並びは JANOG58 が示す FRO→LRO→LPO→CPO の電力効率順(DSP搭載範囲を減らすほど省電力)と整合するが、TEF 2025 資料は LRO の代わりに TRO(送信側のみリタイム)を挟む4段階を採用しており、方式の粒度が異なる。到達距離とのトレードオフでは、CPO・LPO・LRO は DSP の電力を取り除くことで削減余地を生み、2000mクラスの到達距離で <10 W まで下げられるとされる。(Source: [[@2026__SpeakerDeck__AIのためのEthernet技術動向 (SerDes)]])
> [!contradiction] LRO の展開名の食い違い
> JANOG58 の資料は LRO を「Linear Receive Optics」(受信側のみリニアなアナログ処理に簡略化)と定義する。一方「AIのための Ethernet技術動向 (SerDes)」が引用する2026年時点の業界資料では、LRO OSFP を「Linear Receive Retimed Transmit」(受信はリニア、送信はリタイム)と説明しており、展開名・機能の対応関係が異なる。両ソースとも「送信側と受信側でDSPの扱いを非対称にする中間方式」という点は共通するが、どちらの機能配置(受信リニア/送信DSP、あるいは逆)が正しいかは単一ソースでは確定できない。(Source: [[@2026__JANOG58__AIインフラ時代のデータセンター内光配線の実践知]], p.38 / [[@2026__SpeakerDeck__AIのためのEthernet技術動向 (SerDes)]])
## NVIDIAのCPO主張
NVIDIAは自社データセンターでのCPO採用実績を根拠に、電力効率3.5倍・レジリエンシ10倍・アップタイム5倍を主張する。ただしこれは一社の主張であり業界合意ではなく、「CPOとプラガブルの前面パネルフォームファクタの線引き」は2026年8月時点でも標準化団体間の未決論点として扱われている。Cisco はCPOとプラガブルの双方が必要との立場(CPOは電力効率・密度、プラガブルはインタフェースの柔軟性)を取り、単純な「CPOへの一本化」という見立てには異論がある。(Source: [[@2026__SpeakerDeck__AIのためのEthernet技術動向 (SerDes)]])
## 横断的知見
- JANOG58(データセンター内光配線の実践知)とTEF 2025引用資料(AIのための Ethernet技術動向)は、いずれもDSP搭載範囲の削減が電力効率改善の主軸であるという結論で一致するが、前者は運用視点(故障交換・部品供給)、後者は標準化団体間の合意形成状況(CPOとプラガブルの線引きが未決)という異なる角度から同じ4方式を論じている。(Source: [[@2026__JANOG58__AIインフラ時代のデータセンター内光配線の実践知]], [[@2026__SpeakerDeck__AIのためのEthernet技術動向 (SerDes)]])
## 未解決の問い
- LRO/LPOはDSPによる信号補正機能を失うことで、伝送距離やリンク品質のマージンがどの程度低下するか。
- CPOはスイッチに光エンジンを固定するため、トランシーバー故障時の交換運用がどう変わるか。JANOG57で議論された「トランシーバートラブルシューティング・部品供給」の課題とどう関係するか。
- SAKURAONE第2弾のComputeNetworkで「一部でLPOトランシーバーを採用」とあるが、採用範囲の判断基準(コスト、消費電力、信頼性のどれを優先したか)は何か。
- LRO の展開名・機能配置(受信/送信のどちらをリニアにしどちらをリタイムにするか)の食い違いは、単なる資料間の表記揺れか、それとも実際に複数のLRO実装バリエーションが存在するのか。
- CPOとプラガブルの前面パネルフォームファクタの最終的な線引きは、XPO MSA・Open CPX MSAのどちらに、あるいはどう分担して収斂するか。
## 関連
- 概念: [[データセンター内光配線設計]] / [[マルチプレーンClosトポロジ]] / [[Co-Packaged Copper (CPC)]] / [[400Gbpsレーン (SerDes)|400 Gb/s/レーン (SerDes)]]
- ソース: [[@2026__JANOG58__AIインフラ時代のデータセンター内光配線の実践知]] / [[@2026__SpeakerDeck__AIのためのEthernet技術動向 (SerDes)]]
## 出典
- [[@2026__JANOG58__AIインフラ時代のデータセンター内光配線の実践知]]
- [[@2026__SpeakerDeck__AIのためのEthernet技術動向 (SerDes)]]