# 修復負債 Navigation: [[index]] | [[インシデントメトリクス]] | [[技術的負債]] ## 定義 修復負債(repair debt)とは、インシデント後のレビューを通じて特定されたバグや改善の機会を「修復(repair)」としてログに記録し、標準のプロダクトバックログと区別して追跡することで可視化される負債である。修復アイテムは技術またはプロセスの修正で、サービス障害の再発を防止するか持続期間を短縮するものであり、短期アイテム(1週間以内にロールアウトする、プロセス・スクリプト・ホットフィックスなど)と長期アイテム(コードのより徹底した修正、幅広いプロセス変更、ツール群の構築など)に分解される。修復アイテムを追跡し始めた当初は、それまで知られていなかったか注目されていなかった修復アクションが可視化されるため負債のスパイクが見られ、チームがプラクティスを調整して修復負債を通常業務のリズムに組み込むにつれて減少していく。この取り組みはエラーバジェットと組み合わせることで、機能に関する作業に対してサービス信頼性に関する作業の優先順位づけをチームに示すシグナルとなる。(Source: [[@2021__OReillyJapan__SREの探求 - Chapter 4 インシデントのメトリクスを用いたSREの大規模な改善]] §4.4) ### 仮想修復負債(virtual repair debt) 修復負債の追跡が定着しても信頼性が改善しないサービスが観察された。原因を調査した結果、一部のサービスでは徹底したRCA(根本原因分析)が行われておらずRCA完了率が低いか、RCAが十分な修復につながらないため、修復アイテムがバックログに全く入らないまま改善の機会を失っていることが判明した。この「欠落している修復アイテム」を可視化するため、検出・エンゲージ・軽減の時間目標(TTD/TTE/TTM)が欠落しているインシデントに対応する修復アイテムが設定されているかをプログラムで抽出できるよう、分類法を修復プロセスに組み込んだ指標が仮想修復負債である。修復負債を表す折線グラフだけを見るとチームが負債を安定して管理しているように見えるが、欠落している修復を表す点線を追加すると、ログに全く記録されなかったために将来サービス障害を引き起こしうる修復アイテムの集積が明らかになる。仮想負債がある限り、特定のTTDやTTMの欠落はログに記録されて修正されるまで繰り返し発生する。(Source: [[@2021__OReillyJapan__SREの探求 - Chapter 4 インシデントのメトリクスを用いたSREの大規模な改善]] §4.5) ## 横断的知見 - (単一ソースからの導入段階。他ソースとの突き合わせが行われ次第、ここに追記する。) ## 未解決の問い - 修復負債は [[技術的負債]] とどう関係づけられるか。技術的負債が主にコード・アーキテクチャの構造的な返済不能コストを扱うのに対し、修復負債はインシデント後レビューから生まれる運用上の改善アイテムを対象とする。両者の指標を統合して優先順位づけする方法は本章では扱われていない。 - 仮想修復負債(RCAが不十分で修復アイテムが作成されない状態)は、RCA完了率の低さという症状を捉えるが、なぜRCAが不徹底になるのか(組織的インセンティブ・オンコール負荷・スキル不足等)という根本原因には踏み込んでいない。 - 修復負債・仮想修復負債はいずれもMicrosoft Azureの社内運用データに基づく事例であり、定量的な閾値(スパイクの大きさ・収束までの期間など)は本章には示されていない。他組織での再現性はどうか。 - エラーバジェットとの「組み合わせ」が信頼性作業の優先順位づけのシグナルになるとされるが、具体的にどう組み合わせるか(エラーバジェット消費と修復負債残高を単一のスコアに合成するのか、別々のシグナルとして並置するのか)は本章では詳述されていない。 ## 関連 - 隣接概念: [[インシデントメトリクス]](TTD/TTE/TTF/TTMという時間指標との接続) / [[TTXメトリクス]](同種の時間分解指標) / [[技術的負債]](負債という比喩の隣接概念) / [[根本原因分析]](仮想修復負債はRCA完了率と直結) / [[エラーバジェット]](信頼性作業の優先順位づけとの組み合わせ) / [[ポストモーテム]](修復アイテムの発見源) - ソース: [[@2021__OReillyJapan__SREの探求 - Chapter 4 インシデントのメトリクスを用いたSREの大規模な改善]] - 著者: [[Martin Check]] / 組織: [[Microsoft Azure]] ## 出典 - [[@2021__OReillyJapan__SREの探求 - Chapter 4 インシデントのメトリクスを用いたSREの大規模な改善]] — 修復負債・仮想修復負債の定義と実践例(§4.4, §4.5)