# 信頼性試験
## 定義
信頼性試験(reliability testing)は、製品が期待される運用環境・寿命にわたって故障せずに機能することを確認・改善するための試験活動である。信頼性試験は単独で実施されるのではなく、機能試験(基本性能要求の確認)・環境試験(想定環境範囲での動作確認)・統計試験(設計・生産プロセスの最適化)・安全試験と合わせた**統合試験計画(integrated test programme)**の一部として計画されるべきだとされる。設計仕様は試験対象となるすべての判定基準(機能・環境・信頼性・安全)を網羅すべきであり、単一の責任者のもとで模型配分・試験設備要求・共通の試験/故障報告システム・試験計画とスケジュールを一元管理する(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]] §12.1)。
## カテゴリー1試験とカテゴリー2試験
統合試験計画に内在する対立として、信頼性に関する情報をコスト効率よく得るには故障を発生させる必要がある一方、故障は機能試験・環境試験の進行を妨げるという点が挙げられる。本書はこの対立を、故障が望ましくない「カテゴリー1試験(test to success)」と、意図的に故障を発生させる「カテゴリー2試験(test to failure)」に分けて扱うことで解消する。統計試験・機能試験・システムレベル試験・環境試験の大半はカテゴリー1に属し、信頼性試験(および一部の安全試験)はカテゴリー2に属すが、目的次第で信頼性試験は両方のカテゴリーに属しうる。カテゴリー2試験は Design for Reliability(DfR)プロセスの VERIFY 段階(できればそれ以前)までに開始すべきであり、故障の影響は開発が進むほどスケジュール・コストへの影響が大きくなるとされる(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]] §12.1)。
## 試験計画の立案
試験計画は、設計段階で行われた解析(CAE、信頼性予測、FMECA、応力解析、パラメータばらつき解析、sneak circuit 解析、FTA)や既存の試験結果を踏まえて立案すべきである。FMECA が特定の故障モードを高クリティカルと判定していれば、試験計画はその故障が使用環境・寿命内で発生しないことを確認する内容になるべきである(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]] §12.2.1)。
試験対象の数は、鍵となる変数の制御可能性・故障の致命度・試験ハードウェアと試験自体のコストによって決まる。単純なシステムは大量に、中程度の複雑さのシステム(自動車、TV、工作機械)は5〜20台程度、複雑なシステム(航空機エンジン等)でも最低4台の試験が推奨される。4台未満で許容されるのは、宇宙機・船舶・発電所のように高額・少量生産で試験対象自体が実運用に供される場合に限られる(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]] §12.2.2)。
耐久性(durability)の観点では、故障モードのハザード率が増加型であれば、試験は期待寿命全体にわたる信頼性を保証できるだけの十分な期間を要するか、あるいは加速された試験([[加速試験]])でなければならない(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]] §12.2.3)。
## 試験環境
信頼性試験がカバーすべき主な環境要因は、温度・振動・機械的衝撃・湿度・電源入出力・電圧・粉塵・汚染物質・人間であり、電子機器では EMI・ESD、特殊なケースでは放射線・潤滑剤劣化・高高度・真空・工業汚染・EMP・塩水噴霧・カビ・高強度騒音・有毒ガスも対象になりうる。MIL-STD-810、UK Defence Standard 07-55、ISO/IEC60068 は多くの環境条件に試験方法を提供するが、これらは信頼性そのものを直接扱わない。目的は製品が試験条件下で故障・損傷しないことの確認にとどまり、多くの試験は動作状態を要求せず単一環境ごとに実施される(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]] §12.3)。
環境試験を詳細に評価する際は、(1) 条件の変化率(最大・最小値だけでなく)、(2) 動作時と休止時それぞれの外部環境との関係、(3) 複合環境の効果、(4) 振動・衝撃の方向とモード、(5) 保管・輸送・保守など製品固有の環境条件、を考慮する必要がある。複数の環境を組み合わせて印加する試験は combined environmental reliability testing(CERT)と呼ばれる(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]] §12.3)。
振動試験では、複数軸(できれば同時)に、想定される周波数・強度の全範囲を入力すべきであり、実運用により近く複数の共振を同時に励起できるランダム振動(単位: パワースペクトル密度 g²/Hz)が、スイープ周波数のサイン波振動より重視される。温度試験には定常温度試験・温度サイクル試験・熱衝撃試験があり、温度サイクルは低サイクル疲労を、振動は高サイクル疲労を引き起こす点で区別される。EMC 試験は電子システムにとって重要で、EMI や電源の電圧トランジェントによるデータ破損を確認する。消費者製品では、経験豊富な技術者だけでなく一般ユーザーに近い人物による「ベータ」試験が、経験豊富な要員による試験では現れない故障モードを明らかにするうえで有効とされる(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]] §12.3.1〜§12.3.5)。
## 試験計画の実務
試験は DfR プロセスの DESIGN 段階から開始しうるが、大半は VERIFICATION 段階と VALIDATION 段階で実施される。開発初期は特定の設計上の懸念や故障機構に対応する試験が中心で、故障までの試験と寿命データ解析の組み合わせが設計限界を探る最良の方法とされる。VALIDATION 段階ではシステムレベルで、量産可否を確認するための「成功のための試験」が中心となり、想定される全フィールド環境を模擬する一連の試験を組み合わせる。GMW 3172(General Motors の車載電気・電子部品の適合試験仕様)は包括的な試験計画文書の一例として挙げられる(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]] §12.5)。
理想的には全環境試験を同一の試験ユニットに同時に印加して複合環境効果を反映すべきだが、設備の制約から順次実施されることが多い。開発期間が短い場合は、故障機構と環境の相互作用を理解したうえで、独立に扱える故障機構は別レグに振り分けて並列に試験する(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]] §12.5)。
## 横断的知見
(このバッチでは本書第12章のみが情報源であり、2ソース以上の突き合わせによる知見はまだ蓄積されていない。後続章・他ソースの ingest により追記する。)
## 未解決の問い
- カテゴリー1試験とカテゴリー2試験の対立(成功実証 vs 故障誘発)は、本章では試験計画上の分類として提示されるにとどまる。同一の試験対象・同一の試験プログラムの中でこの2つの目的をどう両立させるかの具体的な運用手順は本章にない。
- 試験対象数の決定(4台未満/4〜20台/それ以上)は経験則として示されるが、統計的な根拠(検出力・信頼水準との関係)は本章に記述がない。第13章・第14章でどう扱われるかを追跡する必要がある。
- 並列試験レグ(Figure 12.9)の構成は GMW 3172 に基づく一例のみが示され、故障機構と環境の相互作用をどう判定してレグに振り分けるかの一般的な手順は本章にない。
## 関連
- ソース: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]]
- 概念: [[信頼性工学]] / [[加速試験]] / [[Design for Reliability]] / [[FRACAS]]
- 実体: [[Patrick D. T. O'Connor]] / [[Andre Kleyner]] / [[wiki/entities/Practical Reliability Engineering|Practical Reliability Engineering]]
## 出典
- [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]](§12.1〜§12.3, §12.5)