# 一般に受け入れられた知識
## 定義
ある専門分野の知識体系(Body of Knowledge)全体のうち、実務でほぼ一律に適用可能であり、その価値・有用性について広範な合意が存在する部分集合を指す。SWEBOK Straw Man 版において、Guide to the Software Engineering Body of Knowledge が識別・記述の対象とするのはソフトウェア工学の知識の総和ではなく、この「一般に受け入れられた」部分——コア知識体系——であると位置づけられる。この線引きを説明するため、Figure 5 は知識を4区分に分類する草案スキーマを提示する。
- **Generally Accepted(一般に受け入れられた)**: 多くの組織で使われている確立した伝統的実践。
- **Advanced(先進的)**: 一部の組織のみで試験・使用されている革新的実践。
- **Specialized(専門特化)**: 特定の種類のソフトウェアにのみ使われる実践。
- **Research(研究段階)**: 研究組織でまだ開発・検証中の概念。
付録 I はこのスキーマを形式手法(formal methods)の知識分類に適用した例を提示する。(Source: [[@1998__IEEECS__SWEBOK Straw Man - Chapter 4 Development Methodology for Identifying Knowledge Areas and Related Disciplines]], p.17-18)
この4区分の導入目的は、Guide が扱う範囲を明確に線引きすることにある。すなわち、Advanced・Specialized・Research に位置づけられる知識は、それがどれほど有用・先進的であっても、当面 Guide の記述対象からは除外される。
Project Management Institute は、Guide to the Project Management Body of Knowledge(当時 IEEE 標準として採用済み)において、プロジェクトマネジメント分野の「一般に受け入れられた」知識を次のように定義している。「一般に受け入れられているとは、記述された知識・実践がほとんどのプロジェクトのほとんどの時点で適用可能であり、その価値・有用性について広範な合意があることを意味する。一般に受け入れられているということは、記述された知識・実践がすべてのプロジェクトに一律に適用される、または適用されるべきであることを意味しない。特定のプロジェクトにおいて何が適切かを判断する責任は、常にプロジェクトマネジメントチームにある」。SWEBOK Straw Man 版はこの PMI の定義を引用し、自らの「一般に受け入れられた」概念の参照点としている。(Source: [[@1998__IEEECS__SWEBOK Straw Man - Chapter 4 Development Methodology for Identifying Knowledge Areas and Related Disciplines]], p.18)
SWEBOK Straw Man 版では、知識領域(Knowledge Area)が「一般に受け入れられた」とみなされる操作的な基準として、一定数以上の一般的なソフトウェア工学教科書で論じられていることが採用された。ただし、この閾値の具体的な数値は本文では明示されていない。(Source: [[@1998__IEEECS__SWEBOK Straw Man - Chapter 4 Development Methodology for Identifying Knowledge Areas and Related Disciplines]], p.19)
## 横断的知見
(現時点では本概念に触れたソースが [[@1998__IEEECS__SWEBOK Straw Man - Chapter 4 Development Methodology for Identifying Knowledge Areas and Related Disciplines]] のみであり、複数ソースの突き合わせによる横断的知見はまだない。他の知識体系論・専門職論のソースが ingest され次第、この節を育てる。)
## 未解決の問い
- 「一定数以上の教科書」という選定基準の具体的な閾値は、本章では数値化されていない。第5章の提案知識領域リストと教科書冊数の対応表(Appendix C)を突き合わせれば、事実上の閾値を逆算できるか。
- PMI の PMBOK Guide における「一般に受け入れられた」の定義は、SWEBOK Straw Man 版の4区分スキーマ(Generally Accepted/Advanced/Specialized/Research)と比べて粒度が粗い(2値的)ように見える。PMBOK Guide 自体がこのような多段階の区分を持つか、あるいは SWEBOK 側の独自拡張か、PMBOK Guide 本体に当たって確認する必要がある。
- Advanced・Specialized・Research に分類された知識は、後の Stone Man 版・Iron Man 版でどう扱われたか(将来的に Generally Accepted へ格上げされる経路が存在するか)。
- Figure 5 の4区分スキーマは形式手法(formal methods)の分類例(Appendix I)以外にも適用された事例があるか。
## 関連
- [[@1998__IEEECS__SWEBOK Straw Man - Chapter 4 Development Methodology for Identifying Knowledge Areas and Related Disciplines]]
- [[ソフトウェアライフサイクル]](ISO/IEC 12207 を介した関連)
## 出典
- Bourque, P. et al., *Guide to the Software Engineering Body of Knowledge – A Straw Man Version*, IEEE Computer Society, 1998, Chapter 4.