# ループエンジニアリング
**ループエンジニアリング**(Loop Engineering)とは、AI エージェントを試行から検証済みアウトカムへと導く再現可能なフィードバックサイクルを設計する実践。常時人間が介入することなく、ループ自体が探索・計画・実行・検証・反復を担う。
[[Boris Cherny]](Claude Code ヘッド)と [[Peter Steinberger]](OpenClaw 作成者・OpenAI)が 2026 年に同時に提唱した概念。従来のプロンプトエンジニアリングと対置される。
## 核心的な区別
**プロンプトエンジニアリング(旧)**:人間がフィードバックループそのもの。出力を毎回手動レビュー・修正してから次のプロンプトを送る。
**ループエンジニアリング(新)**:システム自体がフィードバックループ。ゴールを設定したら、ループが検証済み結果を生成するまで自律的にサイクルを回す。
> 「プロンプトはエージェントに指示を与える。ループはエージェントに仕事を与える。」
## 5 段階の普遍的フレームワーク
あらゆるループ(シングルエージェントでもフリートでも)が同一の 5 段階を経る:
```
DISCOVER → PLAN → EXECUTE → VERIFY → ITERATE
↑_________________________________|
(検証失敗時)
```
- **DISCOVER**:必要なものを探索する。スキル・コードベース・過去の実行結果を読む
- **PLAN**:実行計画を立案する
- **EXECUTE**:実際に作業する
- **VERIFY**:ゴールに照らして品質を評価する(作成者とは別のエージェントが担当)
- **ITERATE**:検証失敗時は DISCOVER に戻る
検証通過 → シップ。検証失敗 → 再ループ。
## 2 つのスケール
### シングルエージェントループ
1 つのエージェントがサイクル全体を自己完結で実行。個人が自分のドラフトを再推敲するようなイメージ。集中したタスク・単純なゴール・限定スコープに適する。
### フリートループ
オーケストレータが複数のスペシャリストエージェントを管理し、スペシャリストがさらにサブエージェントに細分化する階層構造。ツリー全体が同じ 5 段階を回す。
```
オーケストレータ(ゴール保持)
├── スペシャリスト A(調査)→ サブエージェント(Web 検索)
├── スペシャリスト B(実装)→ サブエージェント(コーダー + デバッガ)
└── スペシャリスト C(QA) → サブエージェント(テスト + バグトラッカー)
```
## 2 つのループ種別
### オープンループ
探索的で行動空間が広い。エージェントにゴールを与えて自由に探索させる。強力だが高コスト(中規模タスクで 50K〜200K トークン、フリートで 500K〜2M トークン)。無制限 API 予算なしには現時点で非現実的。
### クローズドループ
人間がエンドツーエンドの経路を事前設計する。明確なゴール・定義済みステップ・各ステップの評価・停止条件を備える。各実行が次を改善するので信頼性が高く、設計された経路が狭いためコストも低い。
> 品質ゲートなし → AI がドリフトする。品質ゲートあり → AI が改善する。
**現時点での推奨**:クローズドループから始め、品質ゲートが確立してからオープンループへ移行する。
## 6 つの構成要素
| 要素 | ループ内の役割 | 実装例 |
|---|---|---|
| **オートメーション** | DISCOVER を起動するハートビート | /loop(ケイデンス実行)、/goal(条件充足まで継続) |
| **ワークツリー** | 並行 EXECUTE 間の衝突防止 | `git worktree`(各エージェントに独立ブランチ) |
| **スキル** | DISCOVER の高速化・文脈注入 | SKILL.md / VISION.md / ARCHITECTURE.md / RULES.md |
| **プラグイン/コネクタ** | EXECUTE を実環境に接地 | MCP ベース(イシュートラッカー・DB・Slack 等) |
| **サブエージェント** | VERIFY の誠実さ保証 | 作成者と検証者の分離。異なるモデルも可 |
| **メモリ** | ループの永続化 | 会話外に状態保存(markdown・Linear 等) |
## コスト問題と解決策
標準 API 価格ではループ運用は高コスト。解決策として [[DeepSeek-V4]]・[[Kimi K2]]・MiniMax など低価格フロンティアモデルが現実的な選択肢となっている。特に [[DeepSeek-V4]] は 1M コンテキストウィンドウ(ループのメモリ保持に不可欠)と極低価格を両立する。
## ループエンジニアへの移行
プロンプトエンジニアとループエンジニアの最大の差異はスキルセットではなくマインドセット。前者は「より良い英語の文章を書くか」を問い、後者は「エージェントが探索・計画・自己検証し、完了を判断するロジックをどう書くか」を問う。
2026 年に最も評価される AI エンジニアは、より良いプロンプトを書く人ではなく、エージェントのフィードバックサイクルを設計できる人だとされる。
## 関連ページ
- [[sairahul1-Loop-Engineering-2026]] — この概念の一次ソース
- [[エージェント型コーディング]] — 関連コンセプト(コーディング特化)
- [[エージェントシステム運用]] — 運用観点の関連
- [[Boris Cherny]] — 提唱者(Anthropic Claude Code ヘッド)
- [[Peter Steinberger]] — 提唱者(OpenAI、OpenClaw 作成者)