## 定義 ベイズ最適化(Bayesian optimization, BO)は、評価コストが高い未知の目的関数 $f(x)$(例: 実験で測定する材料特性値)を、事前知識(ベイズモデル)と少数の観測から効率的に最大化する逐次的実験計画手法である([[@2026__応用物理__機械学習の原点 - 統計的機械学習の世界]]、§4.3)。 **問題設定**: 制御パラメータ $x \in \mathcal{X}$(配合比・温度・時間等)のもとで材料特性値 $f(x)$ を最大化したい。1回の実験に多大なコストがかかるため、できるだけ少ない評価回数で最適 $x^*$ を見つけることが目標。 ## コンポーネント ### 代理モデル(surrogate model) 既存の観測 $D = \{(x_i, y_i)\}$ を学習データとして $f$ の確率的推定を構築。各点 $x$ に対して期待値 $\hat{\mu}(x)$ と標準偏差 $\hat{\sigma}(x)$(不確実性)を提供する。**ガウス過程**(Gaussian Process)がよく使われる([[赤穂昭太郎]]によれば文献4: システム/制御/情報 62, p.390, 2018)。 ### 探索と活用のトレードオフ | 戦略 | 目的 | 選び方 | |---|---|---| | 探索(exploration) | パラメータ空間全体の $f$ の様子を把握 | $\hat{\sigma}(x)$ が大きい場所を選ぶ | | 活用(exploitation) | 現時点での最有望領域に集中する | $\hat{\mu}(x)$ が大きい場所を選ぶ | 探索と活用のトレードオフは強化学習でも中心的な問いであり、BO はその特殊ケースとみなせる。 ### 獲得関数(acquisition function) 探索と活用を重み $\lambda$ で統合した指標: $a(x) = \hat{\mu}(x) + \lambda \hat{\sigma}(x)$ この $a(x)$ を最大化する次の実験点 $x_{\text{next}} = \arg\max_x a(x)$ を選ぶ。 $a(x)$ の最大化は計算機内だけで行えるため、実験コストと比べて低コスト。他の獲得関数(EI: Expected Improvement、PI: Probability of Improvement 等)も提案されている(本稿では詳細省略)。 ## アルゴリズムのサイクル 1. 少数の初期実験点 $\{(x_i, y_i)\}$ を収集 2. ガウス過程で代理モデルを構築($\hat{\mu}$, $\hat{\sigma}$ を推定) 3. 獲得関数を最大化する次の実験点 $x_{\text{next}}$ を計算(コンピュータ上) 4. $x_{\text{next}}$ で実験を行い $y_{\text{next}}$ を観測 5. $D \leftarrow D \cup \{(x_{\text{next}}, y_{\text{next}})\}$ として 2 に戻る ## 限界と注意点 ([[@2026__応用物理__機械学習の原点 - 統計的機械学習の世界]]、§4.3): - **次元の呪い**: 制御パラメータ $x$ の次元が増えると精度が急速に劣化 - **非滑らか関数**: $f$ が突然変化するような関数(相転移など)の最適化には不向き - 代替手段: シミュレーションが利用可能な場合、MCMC と組み合わせた最適化も有効 ## ベイズ計測との関係 近年「ベイズ計測」キーワードで材料分野での研究が急増(文献2: 五十嵐ら, 応用統計学 45, p.75, 2016)。ベイズ最適化はベイズ計測の実験計画的側面に相当する。 ## 横断的知見 - 材料探索(新材料開発・製造プロセス最適化)はベイズ最適化の典型適用領域。実験回数削減に直結するため産業的インパクトが大きい([[@2026__応用物理__機械学習の原点 - 統計的機械学習の世界]]) - ガウス過程代理モデルの構築コストは $O(n^3)$($n$: 観測数)であるため、大量観測後はスパースガウス過程などの近似が必要(本稿未言及、今後の調査ポイント) - 深層学習と組み合わせた Neural BO や高次元向け手法(Turbo, CMA-ES との統合)は活発な研究領域 ## 未解決の問い - 高次元制御パラメータ(20次元以上)での BO: 次元削減・部分空間 BO の有効性は? - 非連続・離散パラメータ(製造工程の条件選択等)への BO の適用はどこまで汎用化されているか? - ガウス過程以外の代理モデル(ランダムフォレスト、ベイズニューラルネット)との性能比較で実用的な使い分け基準は?