# トレードオフ意思決定 (Tradeoff Decisions)
## 定義
トレードオフ意思決定は、インシデント対応のような限られた時間・不完全な情報のもとで、複数の望ましい結果のうちどれを優先しどれを犠牲にするかを選ぶ判断過程を指す。単一の「正解」を探す最適化問題ではなく、対応者・管理職・上級リーダーなど、組織階層上の異なる立場が異なる評価軸(復旧速度、顧客影響、法務リスク、認知負荷など)を同時に抱えながら選択を行う点に特徴がある。Maguire と Nash は、階層の上下(skip-level)をまたいで生じるこの種のトレードオフを **skip-level tradeoff** と呼んだ([[@2024__SREcon24Americas__Hard Choices, Tight Timelines - A Closer Look at Tradeoff Decisions during Incidents]])。
## 横断的知見
現時点では単一ソース([[@2024__SREcon24Americas__Hard Choices, Tight Timelines - A Closer Look at Tradeoff Decisions during Incidents]])のみに基づく knowledge であり、複数ソース間の突き合わせによる横断的知見はまだ形成されていない。今後、他のインシデント対応系ソース([[Incident Commander]]、[[Followship]] 等)と接続が進めば、この節を充実させる。
## 未解決の問い
- The Void のような大規模インシデントレポートデータベースは「結果」の集積には強いが「推論過程」の記録には構造的に弱い。この限界は vignette 法以外の手法(例: リアルタイムでの意思決定ログ収集)で補えるか。
- skip-level tradeoff の構造は、組織の階層数・意思決定の集権度によってどう変化するか。フラットな組織とヒエラルキーの強い組織で同じ調査を行った場合、結果は収束するか分岐するか。
- [[Followship]] が扱う対応者間の水平的な協調と、本概念が扱う階層間の垂直的なトレードオフは、同一インシデント内でどう相互作用するか。
## 関連
- [[インシデント管理]] — 階層横断のトレードオフ構造という観点を追加する。
- [[人的要因]] — 役割による認知負荷・優先順位の違いという知見と接続する。
- [[Incident Commander]] — 単一の意思決定役割に権限が集中する構造と、階層をまたぐトレードオフの緊張関係。
- [[Followship]] — 対応者間の水平的協調(Adaptive Choreography)との対比。
## 出典
- [[@2024__SREcon24Americas__Hard Choices, Tight Timelines - A Closer Look at Tradeoff Decisions during Incidents]]