# トレース異常検知 ## 定義 トレース異常検知は、分散トレーシング([[分散トレーシング]])で得られるスパン集合(トレース)を対象に、レイテンシ異常(latency anomaly、スパンの実行時間が正常範囲を逸脱)と構造異常(structural anomaly、サービス呼び出しシーケンスが予期しない呼び出し・呼び出し欠落・呼び出し順序誤りのいずれかで期待パターンから逸脱)を識別するタスクである。VAE ベース(TraceAnomaly・CRISP・TraceVAE・GTrace)・GNN ベース(PUTraceAD・TraceCRL)・LSTM ベース(Multimodal LSTM)という 3 系統のアーキテクチャに大別される。(Source: [[@2025__TSC__A Comprehensive Benchmark and Empirical Study of Trace Anomaly Detection]]) ## 横断的知見 - 本 concept は初回ソースのため、複数ソース間の横断的知見はまだない。[[@2025__TSC__A Comprehensive Benchmark and Empirical Study of Trace Anomaly Detection]](TADBench)は 5 公開データセット(TrainTicket・GAIA・AIOps2020/2022/2023)・7 アルゴリズムを横断比較し、**全データセットで一貫して最良の単一アルゴリズムは存在しない**ことを実証した(GTrace は TrainTicket・AIOps2020 で優位、TraceVAE は GAIA・AIOps2022 で優位、PUTraceAD は AIOps2023 で優位)。トレース深さ・スパン数・サービス数・異常比率という 4 つのデータ特性がアルゴリズム選択を左右し、決定木ベースの推奨戦略が提案された。(Source: [[@2025__TSC__A Comprehensive Benchmark and Empirical Study of Trace Anomaly Detection]]) - [[分散トレーシング]] の横断的知見はこれまで「トレースをどう取るか(計装)」「どう減らすか(サンプリング/圧縮)」を中心に蓄積してきたが、TADBench は「取得したトレースに対しどう異常検知アルゴリズムを適用し評価するか」という下流タスクの横断ベンチマークを提供する点で対を成す。既存の [[分散トレーシング]] 概念内の eACGM(GMM ベース統計的異常検知)は非侵入計装 + 統計手法という別系統であり、TADBench の deep learning ベース(VAE/GNN/LSTM)7 手法とはアプローチが異なる。両者を並べると、トレース異常検知は「古典統計 → 深層学習」の系譜を持つことが見える。(Source: [[@2025__TSC__A Comprehensive Benchmark and Empirical Study of Trace Anomaly Detection]], [[分散トレーシング]] の eACGM 関連知見) ## 未解決の問い - 既存アルゴリズムの多くは trace レベルの判定にとどまり、根本原因分析に必要な span レベルの細粒度異常検知ができていない。span レベル検知への拡張はどのように行うべきか。([[@2025__TSC__A Comprehensive Benchmark and Empirical Study of Trace Anomaly Detection]]) - TraceVAE のエントロピーギャップ削減技術(Bernoulli & Categorical Scaling・Node Count Normalization・Gaussian Std-Limit)と GTrace の階層的グラフエンコーディング + キャッシュ最適化を統合した手法は実現可能か。統合した場合、TrainTicket 以外のデータセットでも一貫した性能向上が得られるか。 - TADBench の決定木推奨戦略は 5 データセットの実証結果に基づくが、この推奨は他の未知のマイクロサービスシステム(新規データセット)に一般化するか。統一フォーマットへの変換だけで決定木の閾値(スパン数 5/10/30、異常比率 1%/3%/10% 等)もそのまま適用可能か、データセット固有の再較正が必要か。 - [[分散トレーシング]] のサンプリング・圧縮手法(Hindsight・TraStrainer・Mint・Tracezip)がトレース異常検知の精度にどう影響するかは TADBench では評価されていない。サンプリング/圧縮後のトレースに対する異常検知精度の劣化を定量化した研究はあるか。 - OpenTracing 仕様の緩さ([[分散トレーシング]] の既存知見)がトレース異常検知の学習データ品質にどう影響するか。TADBench の統一フォーマットはこの品質問題をどこまで解消するか。 ## 関連 - ソース: [[@2025__TSC__A Comprehensive Benchmark and Empirical Study of Trace Anomaly Detection]] - エンティティ: [[Yongqian Sun]] / [[Shenglin Zhang]] / [[Xiaohui Nie]] / [[Changhua Pei]] / [[Dan Pei]] / [[Bowen Hao]] / [[Nankai University]] - 関連 concept: [[分散トレーシング]] / [[異常検知]] / [[障害注入]] ## 出典 - [[@2025__TSC__A Comprehensive Benchmark and Empirical Study of Trace Anomaly Detection]]