# セルフクラフト
## 定義
セルフクラフト(Self Crafting)は、2040 年代の未来像として、万人が自らに最適化されたアプリケーションを AI との対話を通じて自由に製作可能になる状態を指す。[[@2022__DICOMO__AI時代に向けたクラウドにおける信頼性エンジニアリングの未来構想]] では、AI による自動化を突き詰めると、逆説的に人間は創造的になるという見方のもと、標準化指向の現代アプリケーション開発に対する個別化指向の未来として提示される。(Source: [[@2022__DICOMO__AI時代に向けたクラウドにおける信頼性エンジニアリングの未来構想]] p.29-p.31)
この未来像では、利用者と AI が機能とインターフェイスを対話的・体験的に実装し、アプリケーション要求に合わせて学習型データ構造や学習型通信プロトコルが個別最適化される。一方で、クラウドやインターネットの共有資源は有限であるため、特定アプリの信頼性目標を 100% に近づけるほど資源消費が増え、変更速度が低下する。したがって、信頼性・コスト・変更速度などの基本変量の均衡点を利用者ごとに調整する必要がある。(Source: [[@2022__DICOMO__AI時代に向けたクラウドにおける信頼性エンジニアリングの未来構想]] p.31-p.39)
## 横断的知見
- **セルフクラフトは SLO を事業者の宣言から利用者の体験的調整へ拡張する**: SRE の SLO は主にサービス事業者がユーザー体験を代表する指標を定める枠組みである。セルフクラフト構想では、利用者個人が「できるだけ落ちない」「軽い」「高すぎない」といった曖昧な希望から出発し、AI との対話と短時間の劣化体験を通じて信頼性目標を収束させる。これは [[サービスレベル目標]] の主体を事業者から利用者へ移す思考実験である。(Source: [[@2022__DICOMO__AI時代に向けたクラウドにおける信頼性エンジニアリングの未来構想]], [[サービスレベル目標]])
- **個別化は信頼性を価値中立な数値でなく資源配分の政治に戻す**: スライドは、信頼性目標を上げるほど資源消費が増え、他者の満足度を下げうると明示する。これは SLO を単一サービス内の品質目標ではなく、有限クラウド資源をめぐる配分基準として扱う視点であり、[[AIOps]] が最適化すべき目的関数にコスト・公平性・変更速度が混ざることを示唆する。(Source: [[@2022__DICOMO__AI時代に向けたクラウドにおける信頼性エンジニアリングの未来構想]])
## 未解決の問い
- 利用者ごとの信頼性・コスト・変更速度の均衡点は、個人の主観的満足と共有資源の公平性を同時に満たせるか。
- 対話的・体験的な調整で得られた信頼性目標は、サービス事業者が運用可能な SLO/SLA へどのように変換されるか。
- セルフクラフトが進むほど変更頻度が高まり、変更後の運用データが不足するという p.32 の問題は、[[Interactive AIOps]] の実験可能性で補えるか。
- AI が信頼性目標の候補を提示する場合、AI 自体の信頼性・説明責任・価値判断の偏りをどう扱うか。
## 関連
- [[SRE]]
- [[AIOps]]
- [[サービスレベル目標]]
- [[Interactive AIOps]]
- [[自動化のアイロニー]]
## 出典
- [[@2022__DICOMO__AI時代に向けたクラウドにおける信頼性エンジニアリングの未来構想]](p.27-p.39)