# ストレススクリーニング ## 定義 ストレススクリーニング(stress screening)、または環境応力スクリーニング(environmental stress screening, ESS)は、他の試験を通過した不良品(欠陥品)だけをストレス印加によって故障させ、良品の耐用寿命は損なわない水準で行う100%試験である。目的は市場投入後の信頼性・耐久性を改善することにある。電子部品・システムに対しては burn-in(バーンイン)と呼ばれることが多く、高温・電気的ストレス(電流・電圧)が典型的に用いられる(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 15 Reliability in Manufacture]] §15.7)。 米国海軍のNAVMAT P-9492、米国防総省のMIL-STD-2164(ESS Guidelines for Electronics Production)、米国環境科学技術研究所(IEST)の ESSEH(1990年)などのガイドラインが存在するが、これらは硬直的で、ストレス水準も厳しくない(例: 20〜60℃の温度サイクルを8時間、20〜2000Hzのランダムまたは固定周波数振動)とされる(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 15 Reliability in Manufacture]] §15.7)。 ## HASS: HALTの延長としての生産スクリーニング HASS(highly accelerated stress screening)は、第12章で説明されるHALTの原理を延長し、非常に高い複合ストレスを利用する。標準ガイドラインは存在せず、開発段階でHALTを適用して得られた製品固有の弱点強化の知見にもとづき、ストレス・サイクル数・印加時間を製品(または類似製品群)ごとに個別に決定する。HASSで印加するストレスは動作限界(operating limit)を超え、恒久故障限界(permanent failure limit)分布の裾に踏み込むため、HALTでrugged化されていない設計には安全に適用できない。試験は precipitation screen(欠陥を顕在化させる高ストレス印加段階)と detection screen(動作限界内に戻して機能試験する段階)の2段階からなる(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 15 Reliability in Manufacture]] §15.7.1)。 HASSの総試験時間は従来のESS(数時間)に対し数分程度と大幅に短く、欠陥検出効果も高いため、桁違いに費用対効果が高いとされる。HALTと同じ環境チャンバー等の設備を流用できるため、開発・生産の両段階で設備を共用でき、試験・監視機器やインタフェースのコスト削減にもつながる(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 15 Reliability in Manufacture]] §15.7.1)。 ## 運用上の注意 ESS/HASSで検出される欠陥が極端に少ない場合、ストレスが不十分か、対象製品がすでに高信頼であるかのいずれかである。後者が望ましい状態であり、スクリーニングで見つかった全故障は、QC手法で事前に防止・発見できたはずかを分析すべきとされる。スクリーニングは高コストであるため、運用条件・印加時間の最適化のために故障データを継続的に分析し、故障間隔を記録する必要がある(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 15 Reliability in Manufacture]] §15.7)。 ## 横断的知見 - **開発段階のHALTと生産段階のHASSは、同一の「ストレスを印加して欠陥を炙り出す」原理を、目的が正反対の2つの局面に適用したものである**: [[加速試験]] concept が扱う第12章のHALTは、「すべての試験品を故障させて設計の弱点を発見・改善する」ことを目的とし、破壊的・一回性の試験として実施される。対して本ページが扱う第15章のHASSは、HALTで得た製品固有のストレス耐性の知見を使い、「良品を傷めず弱い/不良品だけを故障させて是正・選別する」ことを目的とする非破壊的(良品にとっては)・100%全数の生産試験である。HASSが「標準ガイドラインを持たず、HALTの結果をもとに製品ごとに個別設計される」という第15章の記述は、第12章が述べる「HALTは複合ストレスを記録されない形で印加するため定量的な加速係数を導出できない」という限界と表裏一体である。すなわちHASSがガイドライン化できないのは、まさにHALTの結果が製品固有かつ定量化できない性質を持つことの帰結であり、両章の記述は互いを裏づけ合っている(Source: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 12 Reliability Testing]] §12.4.3, §12.4.5, [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 15 Reliability in Manufacture]] §15.7.1)。 ## 未解決の問い - HASSの「precipitation screen」と「detection screen」の2段階構成(図15.8)は、動作限界と破壊限界という4つの閾値で定義されるが、これらの閾値をHALTの結果からどう定量的に導出するかの手順は本章に記述がない。 - MIL-STD-2164等の従来型ESSガイドラインが「硬直的で厳しくない」と批判される一方、HASSは「標準ガイドラインなし」で製品ごとに個別設計されるとされる。両者の間に位置する中間的な標準化(業界共通の目安値づくり)が可能かどうかは本章では論じられていない。 - バーンインによる初期不良期(infant mortality)の短縮という理解が、第1章の[[バスタブ曲線]]の減少ハザード率区間とどう数量的に対応するかは、本章単独では確認できない。 ## 関連 - ソース: [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 15 Reliability in Manufacture]] - 概念: [[加速試験]] / [[バスタブ曲線]] / [[製造工程の信頼性管理]] - 実体: [[Patrick D. T. O'Connor]] / [[Andre Kleyner]] / [[wiki/entities/Practical Reliability Engineering|Practical Reliability Engineering]] ## 出典 - [[@2012__Wiley__Practical Reliability Engineering - Chapter 15 Reliability in Manufacture]](§15.7 Stress Screening, §15.7.1 Highly Accelerated Stress Screening)