# シンプソンのパラドックス
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## 定義
シンプソンのパラドックス(Simpson's Paradox)とは、複数の小集団それぞれでは同じ傾向を示す統計データが、それらを集約すると逆の傾向を示してしまう現象をいう。1973年のある大学の大学院入学者選考をめぐる性差別訴訟が典型例として知られる。大学全体で見ると男性志願者の合格率(44%)は女性志願者の合格率(35%)より高く、これは一見、性差別の証拠に見えた。しかし学科別に分解すると、ほとんどの学科で有意な偏りはなく、偏りが見られた少数の学科ではむしろ女性に有利だった。(Source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 17 Conditional Probability]] §17.6)
この現象は条件付き確率の言葉で厳密に定式化できる。事象 A(志願者が志望学科に合格)、F_EE・F_CS(女性がEE学科/CS学科に出願)、M_EE・M_CS(男性がEE学科/CS学科に出願)を定義すると、原告側の主張は
Pr[A | M_EE ∪ M_CS] > Pr[A | F_EE ∪ F_CS]
であり、大学側の反論は各学科内での
Pr[A | M_EE] ≤ Pr[A | F_EE] かつ Pr[A | M_CS] ≤ Pr[A | F_CS]
である。この2つの主張は一見矛盾するように見えるが、数学的には両立可能であり、実際に両立する具体的な合格者数の表が示される。CS学科は全体として合格率が低い(狭き門)が女性志願者の比率が高く、EE学科は合格率が高い(広き門)が女性志願者の比率が低いという構成により、学科別には女性が有利でも全体では男性が有利という逆転が生じる。(Source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 17 Conditional Probability]] §17.6)
シンプソンのパラドックスが警告する本質は、「相関は因果を含意しない」という統計学の基本原則である。同じ数値データでも、集約の切り口として、合否に因果的に関係しそうな切り口(学科)と、合否に因果的に無関係な切り口(申請日が奇数日か偶数日か)のどちらを使うかによって、まったく違う結論(差別がある/ない)を導いてしまう。どちらの解釈が正しいかはデータそのものからは決まらず、変数間の因果関係についての事前の信念に依存する。(Source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 17 Conditional Probability]] §17.6)
## 横断的知見
(この concept は本ソースで初めて作成された。複数ソースの突き合わせによる知見は、他の source がシンプソンのパラドックスや相関と因果の混同を扱う際にここへ追記する。)
## 未解決の問い
- どの切り口(交絡変数)で層別すべきかを、因果関係の事前知識なしに数学的に決定する方法はあるか。本章では明示的な議論はなく、Judea Pearl の因果推論の文献が脚注で参照されるにとどまる。
## 関連
- 概念: [[条件付き確率]](パラドックスの定式化に使う条件付き確率)
- source: [[@2015__MIT__Mathematics for Computer Science - Chapter 17 Conditional Probability]]
## 出典
- Eric Lehman, F. Thomson Leighton, Albert R. Meyer, *Mathematics for Computer Science*, revised 2015-05-18, Chapter 17 §17.6.