# グレンジャー因果性 ## 定義 グレンジャー因果性(Granger causality、GC)とは、ある系列(原因)の過去の情報を加えると別の系列(結果)の予測が改善するかで因果を定義する枠組みである。Wiener(1956)の着想を Granger(1969)が計量経済学向けに定式化した。結果の系列を自身の過去だけで予測する単変量自己回帰モデルと、原因の過去も加えた二変量モデルを当てはめ、予測誤差の分散比の対数を因果の強さとする。(Source: [[@2016__Frontiers in Neuroinformatics__A Nonlinear Causality Estimator Based on Non-Parametric Multiplicative Regression]]) $ GC(Y\to X)=\log\frac{\sigma^2_{X/X}}{\sigma^2_{X/(X,Y)}} $ ## 線形 GC の限界と非線形の拡張 - **線形 GC の限界は、モデルの形を自己回帰に固定するパラメトリックな性質にある。** 非線形の結合は、結合が強いときだけ検出でき、弱いときは逆向きの因果を示すことがある。 - 根拠: [[@2016__Frontiers in Neuroinformatics__A Nonlinear Causality Estimator Based on Non-Parametric Multiplicative Regression]] — Hénon 写像で GC が正しい向きを示したのは結合強度 c > 0.5 のときだけだった。 - **ペアワイズの推定は、直接結合と間接結合を区別できない。** 条件付き(多変量)の推定で間接結合は消える。 - 根拠: 同上 — データセット 2 で、ペアワイズの線形 GC・K-GC・CNPMR がすべて間接結合 x1 → x3 を検出し、条件付きでは消えた。 - **非線形への拡張は、パラメータ探索(NARX)、局所線形化(拡張 GC)、RBF 型の予測、カーネル特徴空間での線形 GC(K-GC)などがあり、それぞれに固有の限界を持つ。** K-GC は特徴空間で線形回帰を行うため、振幅に上下限のある非線形性や雑音の増加で性能が落ち、バンドパスフィルタの影響も受ける。 - 根拠: 同上 — 振幅を [0, 20] に制限したデータで K-GC は逆向きの偽の因果を出した。 - **自己回帰モデルを[[局所回帰]]系のノンパラメトリック回帰に置き換えても、GC の定義(誤差分散の対数比)はそのまま使える。** ペアワイズと条件付きの式も変わらない。 - 根拠: 同上 — CNPMR は式の分母と分子の誤差分散だけを NPMR の交差検証誤差に置き換えた。 ## 未解決の問い - GC の誤差分散比の有意性は、線形では F 検定、ノンパラメトリックではサロゲートデータで評価される。両者の検出力の比較はどの条件でなされているか。 - 麻酔下の脳波では、因果指標が結合の増加を示し、他の手法が減少を示す食い違いが残る。線形 GC と非線形推定量の食い違いは、弱い非線形結合で説明できるか。 ## 未編纂の観察 - グレンジャー検定に基づく KPI 因果グラフ(辺の重みは相関確率)は、障害箇所特定の伝播グラフの土台に使われている。ペアワイズの推定であるため、直接結合と間接結合を区別できない性質(既存の限界)はそのまま伝播グラフにも入る。(Source: [[@2018__ICST__Localizing Faults in Cloud Systems]]) ## 関連 - ソース: [[@2016__Frontiers in Neuroinformatics__A Nonlinear Causality Estimator Based on Non-Parametric Multiplicative Regression]] / [[@2018__ICST__Localizing Faults in Cloud Systems]] - 概念: [[因果発見]] / [[局所回帰]] / [[カーネル法]] / [[時間遅れ埋め込み]] ## 出典 - Nicolaou N and Constandinou TG (2016) A Nonlinear Causality Estimator Based on Non-Parametric Multiplicative Regression. Front. Neuroinform. 10:19. - [[@2018__ICST__Localizing Faults in Cloud Systems]](KPI 因果グラフの構築に使用)