# クリティカルデジタルインフラ
## 定義
クリティカルデジタルインフラ(critical digital infrastructure, CDI)とは、電子カルテ・軍事情報監視・911 通報システム・原子力発電所や航空管制の監視といった高ハザード(high-risk)領域と同様に、信頼性が高く即時性のあるシステム性能に社会的に依存する、ソフトウェア集約型オペレーション(software intensive operations, SIO)を指す。[[Laura Maguire]] は本論文第 3 章でこの語を導入し、CDI を運用する組織は、新しいアーキテクチャの活用度合いや実践の統合度合いにおいて組織間で異質(heterogenous)であるとする。技術の進歩は技術アーキテクチャだけでなく組織設計・作業実践そのものを変化させ、これに伴い協調(coordination)に対する新しい課題が生まれたが、それは 2020 年時点でもまだ十分に解明されていない、と位置づけられる。(Source: [[@2020__PhD__Controlling the Costs of Coordination in Large-scale Distributed Software Systems - Chapter 3 The domain of Critical Digital Infrastructure]])
## 横断的知見
- **第 1 章は CDI を「方法論上の対象領域」として導入し、実質的な定義を第 3 章へ委譲する**: 第 1 章は「本研究は認知システム工学(CSE)の他の研究と同様に、ある特定領域(CDI)の具体的状況を用いて、速度と規模で運用する大規模分散作業システムに従事する他の技術専門職にも適用可能な、協調をめぐる認知的作業のパターンを外挿する」と述べ、直後に「CDI の包括的な定義は第 3 章で与える」と明言する。第 3 章はこの予告どおり、CDI を高ハザード領域と並ぶ SIO として定義し、waterfall→Agile/DevOps・オンプレミス→クラウド・SLA/SLO・CD/CI・ChatOps・ICS 輸入の試みという具体的な実践群でその内実を肉付けする。この構成は、CDI が「研究の一般化可能性を担保するための具体的な事例領域」という方法論的役割と、「章を割いて記述される実体としての定義」という 2 つの異なる粒度で同じ論文内に登場することを示す。(Source: [[@2020__PhD__Controlling the Costs of Coordination in Large-scale Distributed Software Systems - Chapter 1 Introduction]], [[@2020__PhD__Controlling the Costs of Coordination in Large-scale Distributed Software Systems - Chapter 3 The domain of Critical Digital Infrastructure]])
## 未解決の問い
- 第 3 章は「新しい依存関係・複雑性・協調要求の全面的な含意はまだ探究されていない」と述べるが、この論文自身の第 5・6 章(事例分析・議論)は、この含意をどこまで具体的に埋めたか。事例コーパスの分析結果は CDI の定義そのものを更新・精緻化しているか。
- CDI という語は、高信頼性組織(High Reliability Organizations, HRO)論や重要インフラ保護(critical infrastructure protection)論といった隣接分野の既存概念とどう関係づけられるか。本章は電子カルテ・原子力・航空管制を並列に挙げるのみで、既存の HRO / critical infrastructure protection の学術的定義との異同を論じていない。
- ICS(incident command system)をソフトウェア工学に輸入する試みが「単純化しすぎている」という批判(Grayson, 2018; Woods, 2017)は、CDI のどの構造的特徴(規模・分散性・異質性のいずれ)に起因すると論文は特定しているか。第 6 章(Discussion)で具体的な機構として展開されるかは未確認。
- 2020 年の記述であるため、CDI を構成する実践(CD/CI・ChatOps・クラウド)は当時の一時点のスナップショットである。同じ概念を扱う後年の情報源(SRE Book 系列や 2020 年代の AIOps 研究)と突き合わせたとき、CDI の定義や境界はどう変化したか、あるいは変化していないか。
## 関連
- [[Controlling the Costs of Coordination in Large-scale Distributed Software Systems]] — 本概念の一次出典である博士論文のハブ
- [[@2020__PhD__Controlling the Costs of Coordination in Large-scale Distributed Software Systems - Chapter 3 The domain of Critical Digital Infrastructure]] — CDI の包括的定義を与える章
- [[@2020__PhD__Controlling the Costs of Coordination in Large-scale Distributed Software Systems - Chapter 1 Introduction]] — CDI を方法論上の対象領域として予告する章
- [[レジリエンスエンジニアリング]] — CDI における異常対応が前提とする理論的基盤
- [[インシデント管理]] — CDI 内で協調を管理しようとする具体的な試み(ICS 輸入等)
- [[ChatOps]] — CDI におけるインシデント対応ツールの一形態
- [[SRE - MOC]] — CD/CI・SLA/SLO 等の実務知の人間キュレーション索引(一方向参照)
## 出典
- [[@2020__PhD__Controlling the Costs of Coordination in Large-scale Distributed Software Systems - Chapter 3 The domain of Critical Digital Infrastructure]](CDI の定義・SIO・waterfall/Agile・クラウド移行・SLA/SLO・CD/CI・ChatOps・ICS 輸入の試み)
- [[@2020__PhD__Controlling the Costs of Coordination in Large-scale Distributed Software Systems - Chapter 1 Introduction]](CDI を方法論上の対象領域として導入する序章の記述)