# サービス側バーン率でSREエージェントの書込権限を比例制御する ## 問題 SRE エージェントを本番に入れる運用者は、自律度 L0 から L4 をいつ上げ、いつ下げるかを定量で決められない。 [[SRE AI Autonomy Levels]] の昇格は「実証された信頼性」に紐づくが、必要な精度や成功実績の量はソース上未明示である (Source: [[@2026__GoogleSRE__AI in SRE - Engineering the Future of Reliable Operations]])。 保証契約 `Ck` は充足率やゲート違反率を測れる候補を与えるが、入力にする連続量はサービス側の信頼性ではない (Source: [[@2026__arXiv__Large Language Models for Agentic NetOps and AIOps - Architectures, Evaluation, and Safety]])。 接続の種は Yoshikawa の 1 件だけで、残量がある間は自動承認、枯渇したら人間承認へ戻すという二値である (Source: [[@2026__SpeakerDeck__Reliability in the Age of AI - Engineering for AI Velocity]])。 一方 [[エラーバジェット]] は、リリース全開と全停止の二値を避け、バーン率の連続監視で速度を制御せよと既に述べている (Source: [[@2016__SREcon16__Service Levels and Error Budgets]])。 この連続信号をエージェントの書込権限へ写す式は、wiki に無い。 ## 着想 対象は本番サービスに対する SRE エージェントの権限契約 `Ak=(T^read, T^write, Gk)` である。 持ち込む視点は、サービス側 SLO のバーン率を比例制御の入力とし、残量段階(33% / 66% / 100%)を人員配分ではなく `T^write` とゲート `Gk` の開閉に写すことである。 エージェント自身の判断品質バジェット(幻覚や方針違反の件数)ではなく、利用者に見えるエラーが今どれだけ予算を食っているかを入力にする。 サービスが既に燃えているとき、正しい緩和でもブラスト半径は大きく、誤ったアクチュエーションの代価は残バジェットに対して高い。 よってバーン率が高いほど propose まで、低いほど execute までを許す。 Jones の「バンバン制御からプロポーショナル制御へ」を、リリース速度から書込権限へ持ち替える。 ## 仮説 - H1: [[AIOpsLab]] または [[SREGym]] の同一障害集合で、固定 L2(判断は人間、実行は自動)に対し、開始時 1 時間バーン率が 14.4 以上(Workbook の fast-burn 相当)のエピソードでは、バーン率比例ゲートは追加のエラーバジェット消費を 20% 以上減らす。 - H2: 開始時 1 時間バーン率が 1 未満のエピソードでは、同ゲートは緩和完了時間(MTTM)を固定 L2 より 10% 以上悪化させない。 - H3: エージェント判断品質バジェットだけを入力にしたゲート(CASE 型)は、サービス側バーン率ゲートと少なくとも 1 割のエピソードで許可集合 `T^write` が食い違う。食い違うエピソードではサービス側ゲートの方が追加バジェット消費が小さい。 ## 検証の最小設計 データは [[AIOpsLab]] と [[SREGym]] の障害シナリオ。比較は (A) 固定 L2、(B) 残量ゼロで L0 へ落とす二値(Yoshikawa)、(C) Hidalgo の 33/66/100 を `T^write` の 3 段に写した階段、(D) バーン率に比例して `T^write` と `Gk` を連続に開閉、の 4 本。 指標は追加エラーバジェット消費、MTTM、人間介入率、[[Transactional No-Regression]] 違反率。 規模は各条件 48 問(AIOpsLab の公開セット)を 5 反復。安全ゲートの実装は [[Actus]] の 3 フェーズ(検証、適用、監視)に合わせ、巻き戻し不能な操作はどの条件でも `Gk` の外に置く。 ## 期待される差分 (B) は低バーンで過剰に権限を閉じ、(A) は高バーンで書き込みを閉じない。 (D) は高バーンで追加バジェットを削り、低バーンで MTTM を維持する。 (C) が (D) と統計的に区別できなければ、連続関数 `g` は不要で 3 段で足りる、と結論する。 ## 前提となる wiki の根拠 - [[エラーバジェット]]: バンバン制御を避け、バーン率の連続監視で速度を制御する (Source: [[@2016__SREcon16__Service Levels and Error Budgets]]) - [[エラーバジェット]]: 残量 33% / 66% / 100% で対応強度を段階化する例がある (Source: [[@2023__OReillyJapan__SLO サービスレベル目標 - Chapter 5 エラーバジェットの使い方]]) - [[SRE AI Autonomy Levels]]: 昇格の定量基準は未明示。L2 は判断と実行の分離、L2 から L3 は安全制御が前提 (Source: [[@2026__GoogleSRE__AI in SRE - Engineering the Future of Reliable Operations]]) - [[エージェント運用安全性]]: 段を権限契約と保証契約として測れる (Source: [[@2026__arXiv__Large Language Models for Agentic NetOps and AIOps - Architectures, Evaluation, and Safety]]) - [[Transactional No-Regression]]: 緩和は後退させずに試せるときに限り自律度を上げられる (Source: [[@2025__NeurIPS2025__STRATUS - A Multi-agent System for Autonomous Reliability Engineering of Modern Clouds]]) ## リスク 最有力の不成立理由は、サービス側バーン率の時間窓が 1 件のインシデントの権限切替に遅すぎるか、ノイズが多すぎることである。 その場合、H1 の差は出ず、Yoshikawa の二値か、エージェント判断品質バジェットの方が先行指標になる。 ## 近い仕事 | 仕事 | 年 | 判定 | 差分 | |---|---|---|---| | The CASE Framework (Telukunta ほか, arXiv:2608.10153) | 2026 | partial | 自律度 `a(t)=g(残バジェット)` を述べるが、バジェットはエージェントの判断品質(幻覚、方針違反、コスト超過)であり、サービス側 SLO のバーン率ではない。wiki に未取り込み。`wiki-ingest-paper` 候補 | | Large Language Models for Agentic NetOps and AIOps ([[@2026__arXiv__Large Language Models for Agentic NetOps and AIOps - Architectures, Evaluation, and Safety]]) | 2026 | partial | 権限契約と保証契約、ツール予算はある。サービス側バーン率から `T^write` を閉じるループは無い | | ARBITER (arXiv:2607.19182) | 2026 | partial | SLO 違反を緩和対象にする。自律度そのものを残バジェットで上下させない。承認ゲートと操作量予算が安全層。wiki に未取り込み。`wiki-ingest-paper` 候補 | 総合判定は novel。 CASE は手法(バジェットで自律度を変調)が一致し、対象のバジェット定義と問い(SRE の L0 から L4 をサービス側信号でゲートするか)が一致しない。 サーベイと ARBITER は対象か安全機構の一方だけが近い。 差分は実装の違いではなく、制御入力をサービス側バーン率に置くかどうかにあり、H3 で分離できる。 Semantic Scholar の公開枠は 429 が続き、書誌の確認は arXiv 本文に依った。引用数は未確認である。 ## 選ばなかった候補 - 権限契約の `T^write` に Hidalgo の残量 3 段だけを写し、連続関数 `g` を置かない。検証の比較条件 (C) に吸収した。 - 診断と緩和が不可分なインシデントに限り、バーン率連動の可調整自律で L2 の判断と実行の分離を緩める。wiki の根拠は L2 の未解決の問い 1 本に偏る。