# ソニー銀行におけるビジネスアジリティ向上のためのクラウドシフト戦略 — source text
## 公式アブストラクト
ソニー銀行では、ビジネスアジリティ向上を目指し、2013年からAWSを活用したクラウドシフト戦略を推進。
周辺系から移行に着手し、2019年には財務会計システム(総勘定元帳)をAWS上で稼働。
その上で、昨年クラウドネイティブな勘定系システムの構築を実現しました。
本セッションでは、こうした当社のクラウドシフト戦略について、事例を交えてご紹介します。
## 登壇者略歴
ソニー銀行株式会社 執行役員
福嶋 達也
大学院修了後、メガバンクを経て、2004年 ソニー銀行株式会社入社。 これまで一貫して、銀行システムの企画、開発、管理に従事。 2016年より現職。2025年より、ソニーフィナンシャルグループ株式会社の執行役員(情報セキュリティ)も兼務。
## 出典テキスト(話者があらかじめ整理したアジェンダ形式の文章)
### イントロダクション
ソニー銀行の福島です。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は「ソニー銀行におけるビジネスアジリティ向上のためのクラウドシフト戦略」ということで、10年以上かけて行ってまいりましたフルクラウド化の道のりについてご紹介させていただきます。
本日、エンジニアの方が多数だと思います。そして金融以外の方も多数で、スタートアップの方も多くいらっしゃると思います。そういう方からすると、あまり大したことのない話に聞こえるかもしれませんが、銀行業界の中ではまあまあ頑張っているという、ちょっと銀行業界ならではのところとしてお聞きいただければと思います。
では、内容に入ってまいります。記載の通りの順番でご説明させていただきます。私は金融機関向けに講演することが多いので、5番目のところで「AWSの特徴」といった、皆さんからすると自明なところが含まれていますが、本日はこの部分はほぼ省略する形でいきたいと思います。
### 1. ソニー銀行について
まず、弊社についてでございます。文字通りでございまして、ソニーの銀行でございます。
開業は2001年でございます。様々な年齢の方が本日いらっしゃると思いますので、ピンとくる方、こない方がいると思いますが、1990年代までは日本においては銀行は新設できないという状況でした。当時の都市銀行や地方銀行で銀行はフィックスされている、固定化されているという中での規制緩和ということで、新しく銀行が作れるような流れができ、当時、異業種参入や新規参入と呼ばれていくつかの新しい銀行が誕生した、一番古いネット銀行の一つでございます。
弊社以外ですと、今はPayPay銀行という名前になっていますが、当時はジャパンネット銀行という形で、我々より少し早く1番目として新規参入の銀行ができるという、最初のいくつかのうちの一つという位置付けでございます。
また、会社の構成でございますが、持株会社が上にありまして、ソニーフィナンシャルグループの100%子会社でございます。兄弟会社としましては、よくCMなどもやっておりますが、ソニー生命やソニー損保が兄弟会社としてあるというところでございます。
そして弊社でございますが、ご存知ない方もいるかと思いますので、少しアピールさせていただきますと、外貨預金に非常に強みを持っておりまして、ご好評いただいております。こちらは外貨預金をそのままデビットカードとして、アメリカに行った時にはドルでそのままデビットの決済に使えるという、ユニークなデビットカード、外貨預金と絡み合ったサービスなども行っている銀行でございます。
弊社の紹介はこのくらいにいたしまして、内容に入ってまいります。
### 2. 概要(本講演のダイジェスト)
概要でございます。こちらは本日お伝えすることを1枚にギュッと圧縮するとこういうことです、というスライドです。
一般の企業、金融機関以外では当たり前に感じるかもしれませんが、銀行業界においてはなかなかクラウド化がまだ進んでいないところがございます。私どもがこれからご説明する内容というのは、「クラウドオンリー、フルクラウド化を進めてビジネスアジリティを向上させました」という、一言で言うとそういうお話になっております。
このビジネスアジリティということでございますが、こちらが目的になっております。少し抽象度の高い言葉ですので右に噛み砕いておりますが、この先もいくつか触れてまいりますが、ビジネスアジリティの向上とは、IT投資、非常に大きな投資を銀行業界はしておりますが、大半は「守りのIT」でございまして、こちらを「攻めのIT」に使っていくというところ、または新しいサービスをスピーディーに導入していく、さらには新しい技術を使って外と柔軟に繋いでいく、こういったところでビジネスアジリティを向上させる、という風にご理解いただければと思います。
そのためのビジネスアジリティの向上の手段として、クラウド化を進めてきたということで、クラウド化は目的ではなく手段として位置づけております。
こちらは金融機関としては、日本においては大分早めでございまして、2013年からAWSを中心にクラウドサービスの利用を本格的に開始しております。そして部分的な採用にとどまらず、周辺系システムというものから勘定系、いわゆる基幹系まで、全方位でのクラウド化を進めており、昨年、ご認識の方もいらっしゃるかと思いますが、クラウドネイティブな勘定系システムを稼働させ、全方位でのクラウド化が完了したというところでございます。
こちらが本日の、ギュッとコンパクトに申し上げますと、本日の内容のダイジェスト版という風にご理解ください。
### 3. ソニー銀行のシステムの特徴
では、内容に入ってまいります。
まず、銀行においては、ということで、一般企業からすると「もう普通です」ということだとは思うんですが、クラウドオンリー、フルクラウド化されているというところが、ソニー銀行のシステムの大きな特徴になっております。
後ほど個別にご説明いたしますが、昨年の5月に銀行の本丸中の本丸、ど真ん中のシステムである「勘定系システム」がございますが、こちらがAWS上でクラウドネイティブな形で稼働しておりまして、振り込みですとか預金ですとか顧客情報といったようなものを、自分たちで作らなければいけないところはマイクロサービスの概念で作っているというところでございます。
そして、様々なサブシステム、周辺系システムがございますが、これらも大半についてはAWS上で稼働しているということでございます。さらにそれ以外のクラウドサービスも活用しまして、銀行全体としての機能を組んでいるというところでございます。ちょっと抽象度を上げておりますが、CRMと書いてあるところはSalesforceを使っていたりもいたします。このような形で、勘定系を中心にクラウドオンリーの形で銀行システムを構築しているというところが、銀行業界においては先進的であるというところでございます。
### 4. 典型的な銀行システムとの対比
こちら、ピンとくる方、こない方がいらっしゃると思いますので、典型的な銀行システムがどういうものなのかというところとの対比で、ソニー銀行のシステムについて、僭越ではございますがご説明させていただきます。
まず、左側の「典型的な銀行システムの例」と書いてありますところですが、大半の地方銀行様、メガバンク様においては、銀行のど真ん中の勘定系システムというものは本当に古い技術で出来ておりまして、メインフレーム上でCOBOLで動いていて、中のシステム構造はかなりぐちゃぐちゃになっているというのが実態でございます。銀行によってはここがCOBOLですらなくPL/Iであったり、本当に一部はアセンブラまで使っているといった、多くの皆さんからすると信じられないようなシステムであったりします。そして周辺系システムにおいても、クラウド利用というのはまだまだ道半ばというのが実態でございます。
ゆえに、守りの、今あるシステムを維持するためだけのコストというものが大半になってしまいまして、なかなか攻めのITに予算や人的資源が割り当てられないというのが現状でございます。したがって、新しいサービスというものも、作りはするのですが、なかなかスピーディーには投入できないという状況になります。
皆さんもご経験されていると思いますが、伝統的な銀行においては、基本的な取引も日中では即時できても、夜になると翌営業日扱いになるというのはまだまだ多いところでございます。振り込みは即時でできるようになりましたが、定期預金を作る、解約する、といったところも夜になると翌営業日扱いになるというような、まだまだそういうレベル感というのが、銀行システムの大半の実情でございます。
これに対しましてソニー銀行でございますが、僭越ではございますが、昨年、勘定系本丸中の本丸をマイクロサービスの概念で、さらにクラウドネイティブな形で作りローンチをしています。また周辺系システムにおいても、クラウド化がAWSを中心にできております。ゆえに、相対的な話にはなってまいりますが、銀行業界においてはかなり攻めのITにリソースが割けるという状況になっております。また、商品サービスを作る時に一番触らなければいけないのが勘定系システムになってまいりまして、この部分が非常に触りやすくなっておりますので、新商品、新サービスをスピーディーに投入できるというような形になっております。こちらが私どもの優位性になっております。
### 5. クラウド化がもたらす優位性(6つのキーワード)
また、優位性を6つのキーワードで表現しております。こちらは何か奇抜な優位性ではなく、一般的にクラウドを積極的に使うと得られるメリットを書いているだけでございまして、逆に言いますと、銀行システムとして全面的にクラウド化しているというところで、素直にクラウドのメリットが享受できているという風にご理解いただければと思います。
若干重複感はありますが、上の3つ、すでに出てきておりますが、間違いなくメリットとして享受できております。本当に、私もソニー銀行にかなり初期の段階からおりますが、かつてはオンプレミスですべてできておりまして、そうなると本当にシステムを維持するだけでも非常に大きなコスト、労力がかかるところでございましたが、そちらを新しい商品の導入や、事務の改善といったところに、IT投資を大きく振り分けることができるようになっております。
また、スピーディーな開発というものも、こちらはアーキテクチャ自体を組み直しておりますので、非常に高い生産性で作れるようにしており、こちらも実現しているというところでございます。
また、外と繋ぐ、連携するというところも、繋ぐと言えば旧システムでも繋ぐわけですが、大抵の連携する会社、新しい会社はAWS上に実装されておりますので、お互いAWSにいるというだけでも格段に繋ぎやすいというところもありますし、新しい技術の導入も容易なプラットフォームでございますので、繋ぐことの難易度も低く、新しい技術を用いるのも容易という風になっております。
さらに、非常に高いセキュリティも享受できておりまして、むしろ下の3つの方が大事ではないかというくらいでございます。最近、NISC(内閣サイバーセキュリティセンター)の件などが世の中を賑わしておりますが、こちらをオンプレミスで対応するというのはなかなか強烈にしんどい話でございまして、こういったところも、私たちの場合はかなりの部分をAWSに守っていただいているというところで、自前でやるよりもはるかに高いセキュリティというのが、クラウドネイティブにすること、クラウド化することによって実現できております。
また、可用性、高いアベイラビリティも実現しております。こちらも皆様ご指定の通りだと思いますが、東京リージョンをマルチAZ構成で使うことで、オンプレミスで言うと複数のデータセンターを同時に利用しながらシステムを稼働させることができます。これがオンプレミスですと、そんなことはなかなかできないというか、非常にお金がかかるところが、相対的に非常に安くそういったことができる、さらには国内に大阪リージョンがございますので、国内においても東京、大阪を使うことで、マルチリージョン構成で非常に高い可用性が実現できているというところでございます。
そしてスケーラビリティ、これもオンプレミスにない非常に特徴的なところでございます。皆さんご認識の通りだと思いますが、どうしても銀行業界、銀行システムは信頼が非常に重要でございます。安心安全、大事でございますので、ピークを想定したキャパシティプランニングというものをオンプレミスの時には当然やっておりまして、そうなりますと、かなり無駄なコンピューター資源を持ちながら運営するということでございますが、クラウドの方を使いますと、すべてではございませんが、かなりの部分、利用に応じてスケールするというような形で、より柔軟に大きなシステム、小さなシステムというのを、オンプレミスで言うと切り替えるようなイメージで使えるというところでございます。
### 6. クラウド化への具体的な道のり
以上のような内容がソニー銀行のシステムの優位性、先進性というところでございまして、ここに至るまでの道のりをご紹介させていただきます。
まず、具体的な道のりの前に、これまで既に出てきている「ビジネスアジリティ」という言葉を少し噛み砕かせていただきます。
最近ちょっと流行らない言葉になってきたんですが、私どもは今日を「VUCA」の時代であるという風に捉えております。スライドの下に書いております、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の時代であると。つまりは、なかなか世の中不透明で予測が難しい時代であると。そういう中で銀行というビジネスをしなければいけない。こういった時に何をしなければいけないのか、予測自体が難しいわけですので、新しいチャンスが出てくればそういったものにスピーディーに乗る、であるとか、何か不都合や改善余地があればそれに対してクイックに反応する、こういったことができることが大事なのであろうという風に理解をしております。このような理解を一言で申し上げますとビジネスアジリティ、そしてこれを向上させることが、現在、今後において重要であるという風に考えるに至ったものでございます。
このような背景で、ビジネスアジリティというものを目標として定めまして、それを実現するためにIT部門、IT組織に何ができるのかと考えた時に、本日のメインの話でございますITプラットフォーム、システム基盤の部分を、アジリティを高めるために全面的にクラウドシフトしていく、クラウド化していく必要があるという風に考えたものでございます。
また、本日直接は言及いたしませんが、システム、いわば道具だけを新しくしても十分ではないということで、ITマネジメントというところで、銀行のITの組織というものもより強くする、よりレベルの高いものにしていく、それに向けた整備をしていく必要があるという風に考えた次第でございます。
皆さんはもう俊敏性、スピードを出すためにはクラウドだというのは直感的にご理解いただけていると思いますが、この資料は金融機関の方にもわかりやすく説明するために作っているものでございまして、少し噛み砕きますと、別の言い方でビジネスアジリティを言い換えると「QCD」とも言えると思っております。金融機関として担保しなければいけない品質(Quality)は当然確保した上で、少しでも安く(Cost)、少しでも早く(Delivery)、作る。これが目的であると捉え直すことができると思います。
これを実現するための手段として、先進的な技術や方法論を活用しようという風に考えたものでございます。
さらにこの部分を少し噛み砕きますと、なんでもかんでも自分で作るからお金も時間もかかるということだと思いますので、使えるものは積極的に使う。また、一時的、局所的には密結合にした方が早く作れたりもするんですが、全体を見て一定の時間軸で見た時には、粗結合(ルースカップリング)の方がコスパが良いということになってまいりますので、極力、粗結合で使っていく、作っていくというような考え方を、手段として取る、という風に考えたものでございます。まさにこういったことがやりやすい、フィットするのがクラウドサービスであり、ゆえにクラウド化を全面的に進めていこうというところでございます。そして、商品サービスを作る上で重要となり、一番手を入れなければいけない、かつては非常に硬く、一番信頼性が必要なところではあるんですが、この部分、勘定系についても、しっかりクラウドネイティブ化していくという風に考えたものでございます。
このような考え方に基づきまして、かなりコツコツとクラウド化を進めております。
と申しますのも、ソニー銀行自体は決して大きな銀行ではございませんが、銀行においてIT投資、IT経費というのは非常に大きな金額になってまいりますので、効果的にお金を有効に使うというところで、オンプレミスのシステムの保守期限のタイミングですとか、何かしらのパッケージを業務上入れ替えなければいけないというようなイベントに連動させて、そういうタイミングを見計らってAWSにしていくというような形を取ってまいりました。最初は周辺系からコツコツと進めておりまして、2019年に、銀行のかなり重要なシステム、銀行の財産の状況をしっかり把握する「総勘定元帳」の部分、こちらを勘定系システムの本尊から切り出して新しくするというプロジェクトがございまして、このタイミングで大阪リージョンも使って非常に高い可用性で、銀行のかなり中心のシステムを移行するということをやっております。
その後も、新しいサービスなどをAWSで稼働させるなどしながら、昨年、勘定系システムそのものをAWS上でローンチさせた、というところでございます。
また、ソニー銀行の場合、かなりAWSにフォーカスした講演をする機会が多くて、AWSしか使っていないようにも見えてしまうことが多々あるんですが、実際は他のクラウドも積極的に使っております。もう10年以上前からSalesforceは使っておりますし、一般的な業務においてはMicrosoft 365も使っております。一部データ分析、マーケティングというような領域ではGoogle Cloudも使うという形で、AWSが中心ではございますが、様々なクラウドサービスを活用しながら銀行システムを構築しているというところでございます。
### 7. クラウド移行におけるセキュリティ・リスクアセスメント
こういった取り組みでございますが、銀行としてしっかりとリスクをアセスメントしなければなりません。そういったことも、かなり何回も何回もやりながら、システムのクラウド化を進めてきております。
まず最初に、銀行の中で基幹系、周辺系という言葉の使い方をするんですが、周辺系に限定してAWSを使おうということで、かなり綿密にシステムリスクという形でチェック、点検をしております。こちらは、当局から色々と定められているというものもありますし、FISC(金融情報システムセンター)と呼ばれる業界団体が定めたガイドラインなどもあり、さらにはそれらに基づきソニー銀行としてこういうところをちゃんと見ていこうというものがございます。これを、元々オンプレ向けであったものをAWS向けにチェックの方を焼き直しまして、詳細はちょっとお伝えできませんが、かなり個別に確認するところも含めて点検をし、それを計画で諮り、周辺系の活用を開始したというところでございます。
またその後も、財務会計は銀行のかなり中核システムになりますので、時間の経過とともにチェックする観点というものも社会動向を踏まえて変わる部分がございますし、重要なシステムということもございますので、財務会計を移行するにあたってはさらに詳細な、最新のチェックリストでチェックをする。そして、勘定系システムそのものを入れるというところの判断の手前に起きましては、全行で使うためのさらに詳細なチェックをするということで、大きく3回の細かなアセスメントをしております。
そして、これだけではなく、実は毎年毎年チェックもしております。世の中の動き、セキュリティの動きなどは変わりますので、チェック観点が少し増えたり、肉付けされたりします。ですので、毎年毎年、これとは別にAWSなどの重要なクラウドサービスや、委託先のチェックは続けているというようなところでございます。
### 8. AWSへの「第2リージョン」開設要望
また、僭越ではございますが、働きかけも行っております。こちらAWSのところでございますが、私どもは2013年からAWSを利用しておりまして、チェック自体2013年にしておりますが、その時に、1点を除いてはもう十分銀行の勘定系システムでも使えるという、内々の判断というか印象は持っておりました。
その1点が何かというところでございますが、国内に第2リージョンがないというところが決定的に致命的であるという風に考えまして、これについては、前のページでも少し書いているんですが、2014年の、ちょっと厳密に何月何日か忘れましたが、夏頃から、複数回にわたり、国内のAWSの主要な方々ですとか、米国本社の相応のポストの方に、何度も何度もこの国内第2リージョンの必要性というものを訴えてまいりました。
結果的に私ども以外にも国内第2リージョンの必要性を唱えた利用企業というのはあるようですが、より具体的に、最も強く、私どもの方で要望いたしまして、大阪ローカルリージョン、そして大阪リージョンの開設に至っているという風に聞いております。当時としましては、まだアメリカ以外には、アメリカ以外の国ではAWSでは複数のリージョンがないというところで、当時としては日本が一番最初に、アメリカ以外の国で複数リージョンを持ったというところでございます。
かなりここは本当に、喧々諤々、日本で、ある種独特ですが、本当に高い信頼性が求められるというところですとか、先進国では唯一ですが50Hz、60Hzという電力事情も違う、また、地震の非常に多い、火山の上の国であるといったところを丁寧に説明して、電気のヘルツ数も同じじゃないところ、50Hz、60Hzで分かれているところ、そして同時に地震が起きないようなプレート上の地域で、第2リージョンが必要なんだというようなところを、かなり細かく米国本社の方にもご説明したというような経緯がございます。
### 9. オンプレミスから「フルクラウド」への変遷
このような形で、時間をかけて大分コツコツとクラウド化を進めてまいりました。
恥ずかしながら、2010年頃のソニー銀行というのは、スライドにイメージ図を書いていますが、このようなグレーのような形でございます。銀行としては非常に新しい銀行ではございましたが、短期間で様々な商品サービスを打ち出すためには、勘定系に作ってしまえばいい、密結合でやってしまった方が早いということで、本当に、ぐちゃぐちゃなシステムに、できて10年経った頃にはなっていたというところでございました。これを、サブシステムに切りだせるものは切り出し、そして2013年以降はクラウドに持っていけるものは持っていくと。そして最後に、本丸をクラウドネイティブな形で、大分難儀はしましたが、全面的に作り直す、ということで、昨年からは、かなりイメージですが、粗結合でクラウドを最大限に活用したシステムに生まれ変わったということができます。
また、必ずしも意図したものではございませんが、今日的には良い副次的な効果もございまして、消費電力を計算したところ、当たり前と言えば当たり前ですが、オンプレミスですべてのシステムを運用してきた時に比べまして、消費電力が、一部理論値で計算しているところもありますが、8割以上が削減でき、電気の省力化になっているというところも、副次的には得られております。
こちらは、冒頭申し上げました通り皆様に対しては釈迦に説法だと思いますので、基本的には省略してまいりますが、金融機関の場合ですと、やはり外部の認証をどれだけ取れているのか、準拠しているのか、また、本当にしっかりAWSが機能していることを、SOC(Service Organization Control)のレポートが本当にもらえるのかといったところが重要でございまして、こういった認証が取れているというところも大きなポイントになっております。これは当然、現在においてはAzureやGoogle Cloudでも当然対応できているところでございますが、私どもAWSを採用するに際しては、こういうところもよく見て、かなり細かく、一般的にやらないようなところも含めて確認をしてまいりました。
この辺りは、ご存知だと思いますので省略いたします。
そして、ここの部分、やはり24時間止められないという非常に信頼性が高いものが求められる。かたや、銀行本体で「ものづくり」が本当に自前でできるのかというと、大分外部委託をしているところがございますので、このようなクラウド事業者からも手厚いサポートが受けられるというのは、一つ大きなメリットであり、こういったものもソニー銀行では活用しているという風にご認識をいただければと思います。
### 10. クラウドネイティブな新勘定系システム
では、残り10分少しでございますが、新勘定系システムを中心に、ご紹介をさせていただきます。
こちら、旧のシステムが上でございまして、下の方が新しいシステムのコンセプトでございます。あまり奇抜なことは書いてありませんで、世の中のWebや本などに書いてあるような「レガシーなシステムというのはこういう課題がありますよね」と、それに対して「クラウド化、マイクロサービス化するとこういう良いことがありますよね」という、ほぼその通りに書かれているという風にご理解ください。
そして、恥ずかしながら旧システムでは、本当に古いシステムの良くない部分が顕在化していたというところでございました。モノリス、一枚岩なシステムになってしまいオンプレ上で動き、非常にぐちゃぐちゃに密結合になっているというところで、年々生産性が低下し、年々新しい技術も使いにくくなり、繋ぎにくると。こういったところをひっくり返して打破するというのが、新しい勘定系システムのコンセプトでございました。それを実現するために、右から左に流れるように説明いたしますが、粗結合にしていく、マイクロサービスを活用する、マイクロサービスの概念で作る、クラウドネイティブに最大限にしてしていくというような考えで、新しいシステムを作ったという風にご理解いただければと思います。
こちらの方は、銀行業界における勘定系システムのわかりやすいイメージでございます。まったく銀行や金融じゃない方からすると驚かれるかと思いますが、銀行の勘定系システムは、大半がまだまだメインフレーム、そして一部オープン系ではあるものの基本はオンプレミスです。そしてその上に、COBOLであることが多いですが、古い言語で書かれているというのが主流でございます。
そして一部の銀行では、何年か前から「クラウド勘定系」というものが出てきておりますが、こちらもよく見ると、IaaSレベル、もっと言うと専用型のIaaSだったりするので、まあ、そういう感じでございます。そしてその上にCOBOLでまだ動いているというのが、クラウド勘定系と呼ばれてもそういう段階でございます。
それに対しまして、ソニー銀行につきましては、本当にクラウドネイティブで作っておりまして、本当にサーバーレスでございます。そしてマイクロサービスの考え方で、コンテナに実装するという形でございます。そして既存の勘定系のプログラム、こちらソニー銀行はちょっと独特で、COBOLではなくC言語で作られていたという、ちょっと微妙な、時代的に勘定系としては珍しい形なんですが、これも一括変換とかは全くしていないです。ちょっと今生成AIの時代なのでタイミングが早かったなという気はするんですが、すべてを全部綺麗に、Javaで全面的に作り直しています。ですので、古いソースコードが1行もなく、一括変換というようなことも一切していないというところで、ゆえに難航したというのはありますが、本当にフルスクラッチで最新化しているというところでございます。
ソニー銀行の場合は、部分的なクラウド導入ではなく全方位でできているというところでご理解いただければと思います。
ここから2枚が勘定系のイメージでございます。業務チックな絵が1枚目でございまして、これまで「勘定系、勘定系」と言っておりましたが、いわゆる一般的な銀行の勘定系よりも、ソニー銀行の勘定系システムはスコープが広いです。一般的なインターネットバンキングや、オープンAPI、営業店システム、対外接続といったところも含む範囲で、一つのシステムになっております。それをちょっと一言で言うときに、一番重要なところがわかるように「勘定系」と言っていますが、範囲としては、一般の銀行でいうところのインターネットバンキングなども含まれているものでございます。
こちらは業務チックなイメージでございますので、実際にはもっと細かいんですが、雰囲気を理解していただくというところで、業務単位で部品化されているというようなところが見てとれると思います。また、インターネットバンキングの機能も兼ねておりまして、こちら、ご認識いただける方はご認識いただけると思いますが、BFF(Backend For Frontend)という形でフロント系のシステムを、Webサーバーというような昔ながらのものをもう立てずに、BFFでコントロールするというようなアーキテクチャになっております。
次が、こちらちょっとAWSチックに、雰囲気ですが、作った絵でございまして、細かくは書ききれませんので、これも大体のイメージでご理解をいただければと思います。
記載の通り、240を超えるサービスを使っておりまして、基本的に仮想サーバー(EC2など)というものもほぼ使っていません。必要性があるところだけにしております。基本的にはクラウドのサービス、AWSのサービスを最大限に活用しまして、コンテナもECS on Fargateで動かしています。先ほどのBFFもこの中にありますし、業務の振り込みや預金といったものもこの中に稼働している、という風にご理解いただければと思います。そして、実際のコンテンツや画像といったものはS3の中に入っているというような構成でございます。さらに実際の開発につきましても、ちょっと小さくて見にくいと思いますが、CI/CDと書いてありますが、Codeシリーズでやっているというようなところでございます。最大限に、AWSのサービスを活用しているというところでございます。
そして、前半でもご説明した通りですが、やはり銀行として非常に業務継続は重要でございますので、普段は東京リージョンで動かしておりますが、すべてマルチAZ構成で稼働することを確認した上で使っております。すなわち、オンプレミスで言いますと、常に南関東地方ぐらいに広がって複数のデータセンターを同時に使いながらシステムを動かすという構成でございます。さらに、常時、データベースの方につきましては大阪(大阪リージョン)の方に同期を取っておりまして、ほぼ想定し難いのですが、万、万、万が一、そういうことが起きた場合には大阪でそっくりそのままシステムが稼働するような、堅牢な構成で動かしているというところでございます。
こちら、ちょっと時間も限りがございますのでコンパクトにお伝えしますが、マイクロサービスのところ、こちらはかなり論理的なところを意識して作ってはいますが、かなり議論もしました。
当初は、一般的なマイクロサービスの概念で作るのがいいのではないかという議論もかなり私どもいたしましたが、そう成ると、逆にデータの整合性を取るために色々な仕組みを逆に作り込まなければいけない、というような問題になりまして、何のためにマイクロサービスをやるのかというところに立ち返り、それは「教科書的なマイクロサービス化をすること」が目的ではなく、生産性を向上させるためだというところに立ち返りまして、むしろ粒度を少し大きくした方が銀行業務の整合性、トランザクション保証という意味では、考え方としてフィットするというところで、一般的に言われるマイクロサービスよりは少し粒度を大きくして実装している、というところでございます。
この議論の後に、世の中的にも教科書的なマイクロサービスが必ずしも正しいわけではない、ミニサービスという考え方もある、あるいはモジュラーモノリスがあるといった議論も出てきておりますので、振り返るとそういう考え方で私どももマイクロサービスの設計をしたのかなと思っております。
はい、ちょっとこちらは時間の都合もありますので雰囲気で。かなり移行リハーサルというものを、実際に本番の業務を止め、お客様のサービスを止めて、連休を使って、本当に切り替えの移行作業をやるというのを、連休を使って4回も繰り返した上で移行した、というところでございます。
また、こちらは実際の移行でございますが、見えにくいかと思いますが、10回のチェックポイント、経営層の意思決定を10回も挟んだ上で、慎重に慎重に切り替えを行ったというようなところでご理解いただければと思います。
以上が勘定系システムの外観でございまして、今後の展望をご説明させていただきます。
ちょっとこの辺りは抽象的ではございますが、非常にスピーディーに商品サービスを作れる環境になりましたので、それをやっていきますというところで、新しい商品や、新しい外部連携、新しいテクノロジーを使って、商品サービスをスピーディーに導入していきたい、というところでございます。
### 11. 今後の展望:AIを活用したシステム開発と運用
そして、一部昨年プレスリリースもしており、まさに今、着々と手応えを持って実践しておりますが、一番信頼性が求められ、一般的な銀行では一番保守的になってしまう勘定系システムが、ソニー銀行においては一番先進的になっております。ですので、いきなり本丸中の本丸から、昨年からAIを活用したシステム開発に取り組んでおり、実際の、ちょっと個別具体的な名前までは申し上げられませんが、本当に勘定系の開発、新商品開発でもうAIを活用し始めております。
具体的には、最も成果が出しやすい設計・テストの工程に使っておりまして、お漏れなく、統合開発環境としてはQ(Amazon Q Developer)を使いまして、CodeWhisperer等を使ってやっておるということで、かなりの手応えを持ってやっております。一般企業ではもう当たり前だよということかとは思いますが、銀行の勘定系でこういうことが行われているというのは弊社のみなのかなという風に思っておりまして、こちらの方ですね、今は設計からテストを中心に実践し結果も出ておりますが、広げていきたいと思っております。
まだ具体的に開始しておりませんが、もう検討を細かく始めて、実際に使うべく準備しているのは、例えば運用のところでDevOpsエージェントを使って障害対応等をより迅速適切に行って行こう、であるとか、セキュリティ領域でセキュリティエージェントを使っていくというようなところは、もう具体的な取り組みとして検討しておりますので、何ヶ月もしないうちに実際に本番で活用していきたいなと思っております。
技術面での今後の展望としましては、多くの企業で取り組まれていることかと思いますが、銀行というなかなか新しいことのやりにくい業界ではございますが、私どもの方もAIを活用したシステム開発・運用に取り組み始めている、というところでございます。
はい、このような形で、私どもはクラウド化、フルクラウド化というものができましたので、今述べましたようなその先というものをチャレンジしていきたいと思っております。
長くなりましたが、私からは以上となります。ご清聴いただきありがとうございました。