# 誰のためのリライアビリティ?
> [!info] Talk metadata
> - **会議:** [[SRE NEXT 2026 参加録]] キーノート2、Day 2(2026年7月11日)、Track B、10:40-11:20
> - **登壇者:** 木浦幹雄(アンカーデザイン株式会社 代表取締役)
> - **URL:** https://sre-next.dev/2026/schedule/#slot089
> - **スライド:** https://speakerdeck.com/kur/reliability-for-whom
> - **出典:** [[誰のためのリライアビリティ? - transcript|一次ソース(公式アブストラクト、登壇者略歴、逐語文字起こし)]]
> - **出典(スライド原本):** [[誰のためのリライアビリティ? - slides.pdf|スライドPDF原本(34ページ)]]
> [!note] 日付に関する注記
> `event_date`・会場・時間は公式スケジュールページ(https://sre-next.dev/2026/schedule/#slot089 )で確認済みの値であり、スライド表紙の日付「2026年7月11日」とも一致する。
> [!abstract] 概要
> 私は普段、デザインの分野でユーザーへのインタビューや観察を通して人々が抱える課題やニーズを理解し、その発見をもとに新しいサービスやプロダクトを構想し、試作しながら価値を検証している。
> いわゆるUXデザインやサービスデザイン、デザインリサーチと呼ばれる領域で、人々の目的達成を支える体験や仕組みづくりに取り組んでいる。
>
> デザインの世界では「誰のためのデザイン?」という問いが繰り返し語られてきた。
> 特にUXデザインやサービスデザインの分野では、デザインとは単に美しいものや機能的なものをつくることだけではなく、人々の目的達成を支えるための営みとして捉えられている。
>
> 本カンファレンスのテーマであるSREには「Reliability(リライアビリティ)」という言葉が含まれている。
> では、SREにおいてリライアビリティは誰のためのものなのだろうか。
> システムの可用性やレイテンシ、エラー率といった指標は、サービスを支える上で欠かせないものである。
> しかし、それらの指標は最終的に誰のために存在しているのだろうか。
>
> 近年、SREの世界ではCritical User JourneyやEnd-to-End Reliabilityといった考え方が広がりつつある。
> これはシステム単体ではなく、ユーザーが目的を達成できるかという視点からサービス全体を捉えようとする試みとも言えるだろう。
>
> 本講演では、デザインや顧客理解の視点から、リライアビリティという概念を眺めてみたい。
> ユーザーの目的達成や体験全体に目を向けながら、「私たちは何のためにリライアビリティを高めているのか」「その指標は誰の価値を表しているのか」という問いについて、参加者とともに考える。
## エンジニアからデザインリサーチの世界へ
木浦幹雄は、奈良高専で半導体や暗号を学び、奈良先端科学技術大学院大学の修士課程ではHCI、ソフトウェア工学、宇宙開発を扱い、IPA未踏プロジェクトでスーパークリエータの認定を受けた。
本人いわく、大学院までは工学部育ちで、エンジニア寄りの経歴だったという。
新卒でキヤノン株式会社に入社し、研究所でロボットやヘルスケア、イメージング、ネットワークカメラなど新規事業の開発に約10年携わった。
木浦は、研究所には香りディスプレイのような「意味のわからない技術」が多くあり、当初は自由に面白い技術を追える環境だったが、次第に「金を稼げ」という要求が強まり、そうした技術をどうにかしてマネタイズする仕事を続けたと振り返った。
エンジニアとして採用されたはずが、研究所配属後は「1行もコードを書いていない感じがする」というほど、業務の中心は新規事業開発だったという。
その過程で、技術のシーズを起点にするより、ユーザーが何を求めているかを起点にプロダクトを作るべきだと考えるようになった。
この関心をさらに深めるため、デンマークのデザインスクールCIID(Copenhagen Institute of Interaction Design)に留学し、インタラクションデザインを学んだ。
帰国後にアンカーデザイン株式会社を設立し、デザインリサーチとUXリサーチを専門に、現在に至る。
木浦は『デザインリサーチの教科書』(リサーチを起点にしたプロダクト作りのプロセスや手法を説明する一冊)と『デザインリサーチの演習』(デザインリサーチやUXリサーチに取り組むためのワークショップ手引き)の著者である。
もう一冊『要点で学ぶ、デザインリサーチの手法125』(リサーチのためのさまざまな手法を紹介する一冊)にも関わっているが、こちらは著者ではなく監修という立場になる。
## デザインの対象領域はどこまで広がってきたか
木浦は、一般的に「デザイン」という言葉から連想されるものが、ロゴやポスター、Webサイトやスマホアプリの画面、パッケージ、家具、家電、自動車、建築、洋服、文房具といった「もの」に偏りがちだと指摘した。
講演前日にリリースされたばかりのChatGPT「5.6」に尋ねた結果を紹介しながら、これは間違いではないが、デザインが扱う範囲はもっと広いと述べた。
その根拠として、デザイン研究者ブキャナン(Buchanan)の論文をもとに木浦自身が翻案した図を示した。
スライドの図「Buchanan's Orders of Design」は、デザインの対象領域が時代とともに広がり続けてきたことを表している。
- **第1次デザイン**(19世紀〜、有形):グラフィック(サイン、シンボル、印刷)
- **第2次デザイン**(20世紀〜、有形):インダストリアル(製品)
- **第3次デザイン**(1980年〜、ここから無形):インタラクション(インターフェース、インフォメーション)
- 同じく**第3次デザイン**(2000年〜):サービス(体験)
- **第4次デザイン**(2010年〜、無形):システム(ビジネス、組織、教育、政府)
図が示すとおり、インタラクションとサービスはともに第3次デザインに位置づけられており、有形から無形への転換は1980年代のインタラクションデザインの登場あたりで起きている。
木浦はこの図をもとに、1980年代にインタラクションデザイン(UIデザインやUXデザイン)が加わり、2000年代には体験全体の設計がデザインの焦点になり、昨今はビジネスや組織、教育、政府といったシステムそのものの設計にまで対象が広がっていると説明した。
そのため、企業で働くデザイナーの多くは、ボタンの配置や画面遷移、配色やタイポグラフィといった表層のUI設計よりも、UXとしてどうあるべきかを考えていることが多いと述べた。
## 良いデザインの椅子はどちらか
木浦は、デザインリサーチとは「プロダクトをデザインするためのリサーチ」であり、新しい何かを作る、あるいは現状を良くするために人々を理解し本質的なニーズを探し出す営みだと説明した。
そのうえで、「良いデザインの椅子はどちらか」という問いを、Wassily Chairとエッグチェア(Egg Chair)の写真とともに提示した。
スライドによれば、Wassily Chairは「重厚で高価な家具ではなく、工業生産に適した素材と構造によって、軽く、合理的で、より多くの人に届けられる椅子をつくりたい」という問題設定のもとで作られた。
木浦はこれをバウハウスによる椅子として紹介し、鉄パイプを曲げて布を張るだけのシンプルな構造でありながら座り心地も評価されていると述べた。
一方、エッグチェアは「長旅を経てホテルに到着した人々が、ロビーでリラックスできるように、公共スペースの中でもプライベートな空間を提供したい」という問題設定から作られたとスライドは説明する。
木浦によれば、1個200万円ほどする高価な椅子で、座ると出っ張りが顔を覆うため左右からの視線が気にならず、公共空間でも個室感を得られるという。
どちらが良い椅子かは、単独では答えられない。
しかし、それぞれの問題設定を踏まえれば、「より多くの人に届けられる椅子」を求める文脈でエッグチェアを提示しても、目的を達成していないと判断できる。
木浦は、この「どのような問いを解決すべきかを提示すること」こそがデザインリサーチだと述べた。
## デザインリサーチとは何をする営みか
木浦は、デザインリサーチをプロダクトを作るプロセスそのものだと位置づけた。
スライドは、デザイナーの頭の中にある「?」(ブラックボックスとしての勘や思いつき)を、情報の収集、分析、アイデア創出という3段階のプロセスに置き換える図で、リサーチのない開発とデザインリサーチを伴う開発の違いを対比している。
スライドが示す一般的な製品開発の流れは、テーマ探索、商品企画、製品開発、量産(デジタル中心のプロダクトではスキップされることもある)、QA、出荷リリースの順に進む。
デザインリサーチはこの流れの左側、つまりテーマ探索や商品企画、製品開発の段階では「機会発見」として機能する。
何を作るべきか、どのような商品や機能、スペックがあるべきかを探るリサーチである。
一方、QAや出荷リリース以降では「評価や改善」として機能する。
開発中、あるいはリリース後のプロダクトやサービスが価値を提供できているか、課題は何か、何をどう改善すべきかを評価するリサーチである。
そのため、デザインリサーチは製品開発の最初の段階だけで行われるものだと思われがちだが、実際には開発の途中やリリース後にも継続して行われる。
具体的な手法として、木浦はインタビュー、オブザベーション(観察)、ワークショップ、ログ分析を挙げた。
定性調査にはインタビューやユーザビリティテスト、オブザベーション、ワークショップ、プロトタイピングなどが、定量調査にはログ分析やアンケート調査、A/Bテスト、NPS調査などが含まれるとスライドは整理している。
## デザインは「ユーザー」をどう見ているか
木浦は、デザインの世界には「誰のためのデザイン?」という有名な問いとその名を冠した書籍があり、デザイナーでこの本を知らなければ「モグリ」だと言われるほどだと述べた。
著者ドナルド・ノーマンは、別の著書『The Design of Future Things』で次のように述べている。
> "We must design our technologies for the way people actually behave, not the way we would like them to behave."
> (D.A. Norman, *The Design of Future Things* より。講演内の口頭引用では"our technologies"の部分が省かれていた)
木浦は、この言葉を、頭の中で理想化した「ユーザーはこう行動してくれるはず」という思い込みでものづくりを進めてはいけないという戒めだと解説した。
デザイナーであっても理想のユーザー像を妄想でつくってしまう失敗はよくあることであり、本当のユーザーがどうであるかを常に理解しようと試みなければならないと述べた。
続くスライドでは、Bill Verplankによる「インタラクションデザインの見取り図」も示されている。
人(KNOW?というふきだし)と世界を表す球体との間を、FEEL(感じる)とDO(行動する)という2つの矢印でつなぐ手描きの図で、ユーザーとサービスの相互作用の基本構造を表している。
この図についての説明は、今回読んだ文字起こしの音声パートには含まれていない。
そのうえで、木浦はSRE関連の書籍やYouTubeを見て、「ユーザーが大事」と言いつつユーザーへの踏み込みがやや足りないのではないかと感じたと打ち明けた。
デザインの世界では、ユーザーはおおよそ**属性**、**文脈**、**目的**(あるいは活動)の組み合わせで捉えられるという。
スライドが挙げる例は次のとおりである。
- 属性:年齢、職業、役割、経験値、利用頻度、権限、ITリテラシー
- 文脈:急いでいる、初めて使う、誰かを待たせている、失敗できない、代替手段がない、屋外にいる、障害対応中である
- 目的:予約を確定したい、支払いを完了したい、移動したい、状況を確認したい、作業報告を送りたい、誰かに会いに行きたい
口頭では属性の例として「性別」も挙げられていたが、スライドの一覧には含まれていない。
属性だけでユーザー像を決めてしまうと、同じ属性でもニーズはばらばらになる。
木浦は自分自身を例に、朝の通勤中にサービスを使うときと、夜くつろぎながら使うときとでは期待値やニーズが異なると説明した。
さらに木浦は、「ユーザー」という言葉自体の難しさにも触れた。
人はサービスを使っている瞬間にしかユーザーではなく、朝起きて「自分は特定のサービスのユーザーだ」と意識する人はほとんどいないという。
だからこそ、文脈と目的を踏まえたうえで、どのような価値を提供したいのかを定義する必要があると述べた。
## ペルソナとジャーニーでユーザー像を描く
属性、文脈、目的を1枚にまとめ、チームの共通理解にする手法が**ペルソナ**である。
スライドが示す例では、ペルソナ「佐藤由香(36歳)」は、マーケティング職の会社員で、夫(38歳)と息子(6歳)がおり、神奈川県横浜市に居住し、東京都内の勤務先に週3日出社、週2日在宅で働くという設定になっている。
ペルソナには「忙しい毎日の中でも、効率よく情報を集めて、納得して選びたい」という一言のほか、ゴールや課題、利用シーン、代表的な発言などがまとめられている。
木浦は、SRE関連の書籍を数冊見た限りでは「ペルソナ」という言葉が一切出てこなかったと述べ、SREにおいては「ユーザー」という漠然とした言葉で提供価値を定義してしまっている印象を受けたと語った。
会場に「職場でペルソナを使っている」参加者がいるかを尋ねたところ、挙手する参加者がいたという。
もう一つの手法が**ジャーニー**である。
木浦は、デザインの文脈でのジャーニーの例として、ヨーロッパの鉄道会社の事例を紹介した。
スライドではこれを「Rail Europe Experience Map」として示しており、出典はAdaptive Path「The Anatomy of an Experience Map」とある。
このジャーニーは、旅行の計画段階から始まり、実際の予約や移動を経て、旅行後に口コミやSNS投稿で体験を振り返るところまでを含む。
一方、SREの文脈で使われる**Critical User Journey**は、システムを利用している最中のステップに範囲が絞られていると木浦は指摘した。
障害対応や分析を通じて信頼性を高めるうえでその範囲に意味があることは理解できるとしながらも、前後の範囲までサービス全体として捉えることで、信頼性確保にとって本当に重要な部分が見え、局所最適に陥っていないかを検討できるのではないかと提案した。
スライドはさらに、**サービスブループリント**という手法にも触れている。
飲食店を例に、来店、メニューを見る、注文する、待つ、食べる、会計するという流れを、客の行動(カスタマーアクション)、客から見える店側の対応(フロントステージアクション)、客から見えない調理などの裏側の対応(バックステージアクション)の3層に分けて表現しており、表の体験と裏側の仕組みをつなげて見せる手法だと説明されている。
この飲食店の例は、口頭の説明では扱われていない。
## ユーザーは妄想で決めない
木浦は、ユーザー像は最初の仮説として描くこと自体は問題ないが、それを確かめる工程を欠かすことが良くないと強調した。
スライドはこの過程を3段階のループとして整理している。
1. **仮説を作る**:ペルソナ、ジャーニー、サービスブループリントなど
2. **確かめる**:インタビュー、観察、ログ、問い合わせ、プロトタイピングなど
3. **分析し、更新する**:ペルソナ、ジャーニー、サービスブループリントなど
木浦は、実際のプロジェクトの例として、お台場の日本科学未来館(スライド13枚目のオブザベーション写真にも「Miraikan」の腕章をつけたスタッフが写っている)でのプロジェクトを挙げた。
案内スタッフや経営層、バックオフィスのメンバーなど関係者を集めたワークショップを開き、実際の来館者が何に困っているか、どのようなニーズがあるかを議論してユーザー像を定義したという。
## デザインの世界からSREを見て感じた疑問
木浦は、SREの世界にも「ユーザー」という言葉が頻繁に登場するとしたうえで、次の3つの問いをスライドで示した。
- SREの世界でも「ユーザー」がたくさん出てくる。ユーザーをどう捉えているのか。
- SLOの数字って何を守るためにあるの。
- Critical User Journeyの「Critical」とは誰の何にとってのものか。
口頭では、このうち1つ目はペルソナの議論と重複するとして詳細な展開を省き、SLOの数字とCritical User Journeyの範囲についてはそれまでの説明を踏まえたうえで、SLOの数字が守るべき価値について語った。
木浦は、SLOで「99.9%」のような数値目標を管理していても、その数値が最終的に何を守るためにあるのかを考える機会は少ないのではないかと問いかけた。
これは他人事ではなく、木浦自身のデザインの現場でも起こりがちな過ちだという。
その例として、医療用画像を分析するシステムを開発する企業との議論を紹介した。
レントゲン画像から「怪しい影」を検出するシステムについて、医師は「0.1ミリ単位でここがおかしいと示してくれないと困る」と要望したという。
しかし、レントゲン撮影から実際の手術までの間に患者の体は動くため、数ミリ単位のずれが生じる。
木浦は、それにもかかわらず0.1ミリ単位の精度にこだわることに本当に意味があるのかを医師と議論したと述べ、SLOの目標値も同様に、ユーザーの行動やニーズに基づいているか、それとも「9が並ぶとかっこいいから」といった理由で決めていないかを見直す価値があると提案した。
スライドはこれに続けて、SRE側にもユーザーへ視点を広げる動きがあると紹介している。
具体例として、Google SREが紹介する実践「Product-Focused Reliability」を挙げ、SREだけで考えずプロダクトマネージャーや開発チームと何が重要なユーザー体験かを決めること、UXデザイナーやUXリサーチャーと協働してユーザーのニーズや目的、行動、ペインポイントを理解すること、システム指標だけでなくユーザーからのフィードバックやUXリサーチの結果もReliabilityの改善に活用することの3点を示している。
この「Product-Focused Reliability」への言及は、今回読んだ文字起こしの音声パートには見当たらず、スライドにのみ明記されている内容である。
## SREとデザインチームでより良いユーザーの体験を作るために
木浦は、デザイナーもSREも「ユーザーに良い体験や価値を届けたい」という目的は同じであり、協力できるはずだと述べたうえで、具体的な提案を2つ示した。
1つ目は、「ユーザー」という言葉を使うのをやめてみることである。
「システムのユーザー」と一括りにするのではなく、「在庫がなくなる前に、迷わず再注文したい店舗担当者」や「体調不安が強い状態で、検査結果の意味と次に何をすべきかを確認したい患者」のように、誰が、どんな状況で、何のためにサービスを利用するのかを具体的な活動として捉えて議論する提案である。
スライドはAI生成の写真とともに4つの例を示しており、木浦が口頭で触れたのはこのうち2つ(店舗担当者と患者の例)で、残り2つ(子育ての合間にいつもの注文を前回との違いだけ確認してすばやく完了したい人、乗り換え時間が短い中で遅延情報を確認して次の行動を決めたい出張者)はスライドのみに掲載されている。
なお、患者の例についてスライドは「検査結果」としているのに対し、文字起こしの音声は「検索結果」と記録しており、文脈上はスライドの「検査結果」が正しいと考えられる。
2つ目は、SREにもユーザーに会いに行ってほしい、という提案である。
木浦は、デザインの仕事がデザイン組織だけで完結するものではなく、PMだけでなくSREやセールス、カスタマーサクセス、サポートなど様々な職種とともにユーザーを知り、観察し、解釈していくことが大切だと述べた。
とりわけSREとデザインリサーチの仕事は親和性が高いという。
SREが持つログやメトリクス、障害履歴といった「どこで、どれくらい起きたか」「何が壊れ、どう回復したか」を示すデータと、UXリサーチが持つインタビューや観察、問い合わせといった「そのとき何をしていたか」「何に困り、何を守りたかったか」を示す定性データを突き合わせることで、「壊れた活動」まで見えてくると木浦は説明した。
SREは、この調査の設計や同席、解釈という形からも参加できるという。
木浦は同時に、デザイナー自身の悪い癖にも触れた。
デザイナーは、システムにすぐ変更が反映される、パーソナライズされる、複数チャネルでシームレスにつながる、途中から再開できる、状態が自動的に同期されるといった体験を好みがちである。
スライドによれば、こうした体験は状態管理を複雑にし、データ不整合が起きやすくなり、失敗時の分岐を増やし、監視や検証、問い合わせ対応を増やし、問い合わせ時に状況を再現しづらくし、復旧やロールバックを難しくする側面がある。
便利さを足すほど守るべき状態も増えるため、良い体験は運用可能性と一緒に設計する必要があると木浦は結論づけた。
## 壊れたときの体験も、デザインの対象として扱う
スライドは最後に、正常系だけではなく、遅いとき、止まったとき、一部だけ使えないとき、回復するときの体験までをデザインの対象として扱うべきだと提案している。
- **サービスの継続**:一部が使えなくても、ユーザーの活動を続けられるか
- **代替手段の提供**:別の手段や経路で目的に近づけるか
- **回復可能に**:失敗しても破綻せず、途中からやり直せるか
- **安心を提供する**:何が起きたか、次に何をすればよいか分かるか
この4項目は、今回読んだ文字起こしの音声パートでは具体的に語られておらず、スライドにのみ記載されている内容である。
講演の締めくくりとして、スライドは「そのReliabilityは、誰のどんな活動のため?」という問いを掲げ、「誰が、どんな状況で、何をしようとしていて失敗すると何が起きるのか」を考える視点と、SREとデザイナーが一緒にできることについてのディスカッションを歓迎する姿勢を示している。
この結びの一文もスライドに基づくもので、口頭では時間の都合もあり簡潔な謝辞で講演を終えている。