## 定義
情報を『生命による意味の創出活動』として捉え直し、生命・社会・機械の関係性を統一的に説明しようとする学問
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基礎情報学(Fundamental Informatics)とは、東京大学名誉教授の西垣通(にしがき・とおる)氏によって提唱された、情報に関する総合的な理論体系である。
工学的な「信号処理」としての情報理論(シャノン理論など)とは異なり、「生命」と「意味」を中心に据えて情報を再定義している点が特徴である。
## 情報の定義
> 基礎情報学において「情報」とは、生物にとっての「意味作用を起こすもの」と定義される。同時にそれは「意味構造(記憶)を形成するもの」でもある。
西垣通. [[新 基礎情報学]] (Japanese Edition) (p. 88). (Function). Kindle Edition.
「情報とは、観察者(生命システム)によって生成されるパターンである」
つまり、情報はあらかじめ外部にあるものを拾ってくるのではなく、生命自身が生きる過程で作り出すもの(意味づけするもの)と考える。
## 「3つの情報」の階層モデル
- 生命情報(Life Information):
- 基盤となる層。 すべての生物(細胞レベル含む)が、生きるために体内で生成するパターン。(例:神経パルスの活動、痛み、空腹感など、まだ言葉になっていない原初的な感覚)
- 社会情報(Social Information):
- 人間などの個体が集まり、コミュニケーションを通じて共有・伝達される「意味」のある情報。生命情報が言葉や身振りによって社会的に定着したもの。(例:法律、ニュース、会話の内容、文化)
- 機械情報(Mechanical Information):
- コンピュータや通信回線で処理される「記号(信号)」。意味(Semantics)が捨象され、形式(Syntax)だけになったもの。(例:ビット列、デジタルデータ、文字コード)
## HACS(階層的自律コミュニケーション・システム)
この3層をつなぐモデルとして、HACS(Hierarchical Autonomous Communication System)という概念を用いる。 「生命システム(個人)」が集まって「社会システム」が形成され、そのコミュニケーションを「機械システム(メディア)」が媒介するという、入れ子構造のモデルである。
## Books
- [[新 基礎情報学]]