> かつて、物理学者でノーベル賞受賞者の[[リチャード・ファインマン]]は、ある概念を理解しているかどうかは、入門講義ができるかどうかで決まると述べました。 口頭による発表では、根拠のない主張もたやすく通ることが多いのです。発言内容を自分でわかっていなくても、自信たっぷりのジェスチャーや、「おわかりですね」といったなにげないセリフで、主張の穴から目をそらすことができてしまいます。しかし、文章では、こうした操作はできません。書くことの最も重要なメリットは、自分で信じているほど、対象について理解していないという事実を突きつけてくれることです。 「いちばんのルールは自分自身を欺かないこと。そして、いちばん欺きやすい人間は自分です」リチャード・ファインマンは、若い科学者に向けた講演でこう強調しています(Feynman, 1985)。 読書、特に再読では、自分がテキストを理解していると思い込みがちです。 再読が危険なのは、単純接触効果があるからです。単純接触効果とは、何度もふれたものを好ましく思う傾向があるというもので、あるものを見慣れたとたん、そのものを理解しているとも思ってしまいます。(Bornstein, 1989)。  見慣れただけでは理解していないのは明らかですが、何かを理解しているか、それとも理解していると思っているだけかは、自分を何らかのかたちでテストしてみないとわかりようがありません。 ズンク・アーレンス. TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる (pp.139-140). 日経BP. Kindle 版.